・厨芥類やリサイクルに適さない紙類からバイオエタノールを製造
日立造船は10月18日、独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)中華人民共和国事務所と中華人民共和国科学技術部(以下、中国科学技術部)が実施する「2021 年度中華人民共和国科学技術部 日中連携事業(第2期)」において、「食品・繊維系廃棄物からのエタノール発酵の技術および実証プロジェクト」をテーマに採択されていたが、このほど日立造船と中国側パートナーおよび協力機関の間で共同実証に関する契約が成立し、北京市で廃棄物の適正処理・資源化システムの実証事業を行うことが決定したと発表した。
同事業は、中国における「環境(省エネルギー含む)」「医療」「防災・減災」の課題解決に貢献することおよびこれらの課題解決に貢献できる技術を有する日系企業と中国側パートナー(研究機関や大学など)が協力し、中国での実証試験などを通じて産業化を目指し、中国の課題解決に貢献するとともに、日系企業の中国ビジネス展開の促進を目的とするもの。
日立造船は契約により、日立造船が有する一般廃棄物からのバイオエタノール製造技術を活用した廃棄 物の適正処理・資源化システムの実証事業を2022 年 6 月から 2024 年 12 月(予定)まで行う。
日立造船は、2008 年から廃棄物の資源循環の促進およびエネルギー回収率向上を目的に、一般廃棄物に含まれる厨芥類、紙類からバイオエタノールを製造する研究開発に着手し、2011 年度には環境省の実証事業において、京都市で1回あたり1トンの一般廃棄物を受け入れ、機械分別からエタノール製造までの一貫システムを開発した。さらに 2013 年度には同じく環境省の実証事業で、 1回あたり5トンの一般廃棄物を用いてシステムの大型化、技術の高度化を実現した。
日立造船のバイオエタノール製造技術およびシステムは、混合収集された廃棄物を独自開発した機械選別技術によりバイオマス原料を高精度に選別し、廃棄物系バイオマスを高効率にエネルギーや資源に変換する統合型な廃棄物処理であることを特長としている。
実証事業では、中国の分別強化により増加する厨芥類の適正処理および資源化、ならびにバイオエタノール製造能力の増強を同時に実現する新規の廃棄物処理および資源化の導入を目的としており、処理量約 5t/日の実証設備を建設し、中国で発生する廃棄物に対してバイオエタノール製造システムを検証するもので、バイオエタノールの製造効率向上、残渣の有効利用、廃棄物焼却 施設とのエネルギー融通なども含めた一貫したシステムとしての確立を証明し、将来的な事業化および普及に資する成果を獲得する。
日立造船は実証事業後、廃棄物の分別強化により厨芥類の適正処理が大きな課題となっている中国都市圏へのシステム提案、導入を図りつつ、将来の潜在的な課題を抱える地方への事業展開を目指す。さらに同様の潜在的な問題を抱える東南アジアなどへの事業展開も目指していく。
日立造船は、2008 年に中国成都市向けにごみ焼却発電プラントの主要機器である火格子などを納めて以来、同国で約 110 件の納入実績(ライセンシーの実績を含む)を有している。また、この日中連携事業の第 1 期において、食品廃棄物からリンを回収する実証事業にも採択されている他、中国でのメタネーション実証に関する事業化可能性調査を行うなど、同国において様々な取り組みを実施している。
現在、中国はごみ焼却発電プラントにおける世界最大の市場となっているが、日立造船は中国市場の黎明期から参入し、同国のごみ処理やエネルギー回収に貢献してきた。中国は世界最大の CO2 排出国でもあるが、日立造船はごみ焼却発電以外にも様々な環境技術により、今後とも同国の 環境問題や温室効果ガスの削減に貢献していく。
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