・スウェーデン・H2グリーンスチール社向けMIDREX H2 直接還元鉄プラントの受注と同社への出資について発表
㈱神戸製鋼所は10月12日、同社の米国100%子会社であるMidrex Technologies, Inc.(以下 ミドレックス社)と、ライセンス供与先であるルクセンブルグのエンジニアリング会社Paul Wurth S.A.のコンソーシアムが、スウェーデンの製鉄会社H2グリーンスチール社(正式社名H2GS AB)向けに、MIDREX H2(TM) 直接還元鉄プラント(※1)を受注したと発表した。今回受注したプラントは世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機となり、年産能力は210万トンで2025年の稼働開始を目指している。あわせて、神戸製鋼はH2グリーンスチール社への出資を決定するとともに、将来的なグリーンHBI(※2)購入に向けた協議を開始した。
H2グリーンスチール社は、グリーン水素の活用によって鉄鋼業界の脱炭素化を加速することを目標に、2020年に設立された。現在、同社は、スウェーデン北部のボーデン市において、化石燃料を使用しない製鉄所の建設を計画している。このプロジェクトでは、再生可能エネルギーを用いた水電気分解により製造した水素のみを還元剤として用いてHot DRI(※3)およびHBIを製造、Hot DRIは電気炉工程を経て自動車用鋼板等のグリーン鋼材の製造に使用される。H2グリーンスチール社は、従来の製鉄・製鋼工程と比較して約95%のCO2排出量削減を目指している。
神戸製鋼ならびにミドレックス社は、H2グリーンスチール社のパートナーとして、同社のカーボンニュートラルへの取組みを支援していく。KOBELCOグループはMIDREX(R)プロセスをはじめとして、世界の鉄鋼業におけるカーボンニュートラル達成に向けた、CO2低減ソリューションを提供していく。
※1:100%水素を還元剤として用いるMIDREX(R)直接還元鉄プラントであり、ほぼCO2排出量ゼロでの稼働が可能である。
なお、従来の天然ガスベースMIDREX(R)直接還元鉄プラント(MIDREX NG(TM) 直接還元鉄プラント)は、世界で90基以上が稼働しており、天然ガスを改質した水素リッチガスを還元剤として用いることにより、高炉法に比べ製鉄工程でのCO2排出量を最大40%削減できる。
また、MIDREX NG(TM) 直接還元鉄プラントにおいて、還元剤を0%から100%まで柔軟に水素に置き換えるMIDREX Flex (TM) 直接還元鉄プラントは、MIDREX NG(TM) 直接還元鉄プラントよりも更にCO2排出量削減が可能である。
※2:Hot Briquetted Iron(熱間成形還元鉄)の略。還元鉄はそのままでは長距離輸送に適さないため、還元炉より排出された高温の還元鉄をある程度の大きさの塊(Briquette)に押し固めたもの。
※3:Direct Reduced Iron(還元鉄)の略。
鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。炉内で還元したDRIを、冷却せずに炉から排出したものを、Hot DRI(HDRI)、冷却したものをCold DRI(CDRI)という。不純物の少ない清浄鉄源であり、高級スクラップや銑鉄の代替品として、電気炉で(近年は高炉や転炉でも)鉄源として使用される。
<Midrex Technologies, Inc.概要>
設立 : 1983年(買収)
所在地 : 米国 ノースカロライナ州 シャーロット市
代表者 : 社長・CEO Stephen Montague
<Paul Wurth S.A.概要>
設立 : 1870年
所在地 : ルクセンブルク ルクセンブルク市
代表者 : CEO Georges Rassel
H2GS AB(H2 Green Steel)概要
設立 : 2020 年
所在地 : スウェーデン ストックホルム
代表者 : CEO Henrik Henriksson