・ライフサイエンス領域の事業成長加速と日本のワクチン生産体制強化に向けて
・経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択
富士フイルム(東京都港区)は、10月6日、ライフサイエンス領域の事業成長を加速させるため、同社国内初のバイオCDMO※1拠点を富山県富山市に新設すると発表した。新拠点は、富士フイルム富山化学による設備投資を通じて設立するもので、2026年度の稼働を予定している。
なお、今回の新拠点設立は、経済産業省が推進する「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択されている※2。
日本政府は、今後脅威となりうる感染症のパンデミックに備えるため、平時は顧客ニーズに応じたバイオ医薬品を製造し、パンデミック時にはワクチン製造へ切り替えられるデュアルユース設備を有する拠点を整備する事業などを支援し、ワクチンの国内生産体制強化を進めている。
富士フイルムは、ライフサイエンス領域の事業横断的な全体戦略を推進する「ライフサイエンス戦略本部」の下、バイオ医薬品の受託ビジネスや、培地・細胞・試薬など医薬品の研究開発・製造支援ビジネスなどを展開。グループ内に有する、海外の製造拠点や販売網などを生かし、欧米市場を中心に事業拡大を図ってきた。
今回、富士フイルムは、今後成長が期待されるアジア市場でのビジネス拡大に向けて、日本国内にバイオCDMO拠点を新設する。同拠点には、海外で培ってきた高度なバイオ関連技術やデュアルユース設備などを導入。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬企業に提供し、事業成長を加速させていく。また、パンデミック時には、受託サービスを通じて、製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポート。日本政府が主導する、ワクチンの国内生産体制強化の一翼を担い、日本国民の健康保持に貢献していく。
■新拠点の概要
1.特長
富士フイルム富山化学の既存工場(富山市内2か所)の敷地内に設備投資を行い、同社国内初となるバイオCDMO拠点を新設。バイオ医薬品の生産プロセス開発が可能な設備の導入に加え、バイオ医薬品の治験薬製造・商業生産が可能な新棟を建設。
平時には抗体医薬品・抗体薬物複合体(ADC※3)といったバイオ医薬品の製造、パンデミック時にはmRNAワクチン・遺伝子組換えタンパクワクチンの製造が可能なデュアルユース設備を整備。原薬製造から製剤化、包装までを一貫して受託できる体制を構築。
バイオCDMOとして30年以上の実績を有し、幅広いバイオ医薬品の開発・製造受託に対応できるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(フジフイルム ダイオシンス バイオテクノロジーズ)の培養・精製技術や遺伝子組換え技術など最先端のバイオテクノロジーを導入。高効率生産を可能とし、高品質なバイオ医薬品の迅速かつ安定的な製造を実現。
富士フイルム富山化学株式会社、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies、富士フイルム和光純薬株式会社が緊密に連携してバイオCDMOサービスを提供し、顧客を強力にサポート。
2.稼働時期:2026年度
※1 Contract Development & Manufacturing Organizationの略。生産プロセス開発や安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造まで幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
※2 交付予定金額は、来年度に決定される見込み。
※3 Antibody-drug conjugate の略。抗がん剤などの薬物と抗体を組み合わせたもの。がん細胞などの細胞表面に存在する抗原とADCの抗体が結合することで薬物を直接届けられるため、少ない副作用で高い治療効果を得られると期待されている。