半乾式耐火被覆の吹き付けを行う作業員・吹付工は、被覆材を遮る防護服や防塵メガネ・マスクを着用するので、夏場は過酷な環境下での苦渋作業になる。また、生産性については、被覆材の供給、吹付、補助を行う3人の作業員を要するものの、一日の出来高は2時間耐火45mm厚で100m2(33m2・人日)程度に留まることから、建設各社は耐火被覆吹付ロボットの開発に取り組んでいる。
Robo-Sprayの特徴は、6軸のロボットアームが被覆材の吹付ノズルを自在に操りながら、梁の両脇、梁下に耐火被覆を吹き付けること。このロボットは、アーム部、アーム部の高さを調整するリフター、リフターを搭載した台車から構成され、プロトタイプは台車の移動を手動にしている。
使用時には、作業員が最初にロボットを所定の位置に移動した後、タッチパネルから鉄骨梁の断面形状、梁天端の高さ、吹付範囲、吹付ノズルの作動速度、吹付角度などを設定し、スタートボタンを押す。すると、ロボットアームがノズルの角度や鉄骨梁との相対位置、作動速度を適切に保ちながら吹き付け作業を進める。吹付ピッチは4~7cmで、吹付厚はノズルの作動速度や吹付ピッチで調整、台車を一度移動すると梁幅2.5mに対応可能。なお、鉄骨梁には設備配管用の貫通孔が設けられるが、タッチパネルから径や位置情報を入力することで、貫通孔を回避した吹付が可能。
虎ノ門・麻布台再開発プロジェクトA街区では、Robo-Sprayにより43階、46階、49階の梁の一部、計434m2に被覆材を吹き付けた。施工データを分析した結果、所定の施工品質を確保したうえで、従来の3名体制で確実に2台のロボットを操作できること、これにより1日の出来高が約130m2となり生産性が約30%向上することを確認できた。
清水建設は今後、Robo-Sprayの台車に電動走行機能を付加し、生産性を一層向上させる予定。また、引続き反復・苦渋作業を代替する建設ロボットの開発に取り組むとともに、工事現場へのロボット導入を進め、省人化や現場の環境改善を図る考え。