・低膨張天然系負極材の中国における製造能力増強および欧米における製造検討開始
三菱ケミカルホールディングスグループは5月30日、中国のグループ会社である青島雅能都化成有限公司(中国・山東省青島)および関連会社である青島菱達化成有限公司(中国・山東省青島)において、リチウムイオン電池向けの新規開発製品である低膨張を特長とする天然系負極材の製造能力を、現在の 2,000 トン/年から 12,000トン/年に増強することを決定したと発表した。また、負極材の供給体制について従来の日本および中国に加えて欧米での製造販売の検討を開始したと併せて発表した。
■中国における能力増強
負極材は人造系黒鉛もしくは天然系黒鉛を原料としますが、三菱ケミカルグループは製造工程でGHG排出量が少なく、ライフサイクルアセスメントに優れた天然系黒鉛を原料とした製品に強みを持っている。加えて、三菱ケミカルグループは、独自開発の新技術(特許取得済)により電池寿命に影響する膨張を抑制し、人造系黒鉛の性能を上回るグレードを新たに開発し、展開している。今回、青島雅能都化成および青島菱達化成において同グレードの製造ラインの能力増強を行い、2023年度前半の稼働を予定している。
■ 鉱山を保有する海外企業との協業による欧米での製造検討開始
一方で、自動車メーカーおよび電池セルメーカーのサプライチェーン戦略により、車載用途電池を欧州や北米で現地製造する動きが活発化している。三菱ケミカルグループはその需要にも対応するため、黒鉛鉱山を保有する海外企業と協業することで天然黒鉛原料の安定確保と欧米での製造販売の検討を開始する。その第一歩として、三菱ケミカルグループは2022年5月、モザンビークの鉱山で鱗片黒鉛を製造し、米国で負極材製造を行うSyrah Resources Ltd(オーストラリア・ビクトリア州、以下、Syrah社)およびノルウェーに稼働中の鉱山を保有し、オーストラリアでも立ち上げ検討中の黒鉛プロジェクトを持つMineral Commodities Ltd(オーストラリア・西オーストラリア州、以下、MRC社)と協業に向けた覚書を締結しました。三菱ケミカルグループの負極材製造技術とSyrah社およびMRC社が採掘する黒鉛が適合するか技術評価を行い、今後の協業内容について検討していく。
<青島雅能都化成有限公司の概要>
所在地:中国・山東省青島平度市
設立:2010年
資本:三菱ケミカル株式会社100%
事業内容:リチウムイオン電池用負極材の製造販売
<青島菱達化成有限公司の概要>
所在地:中国・山東省青島平度市
設立:2010年
資本:三菱ケミカル株式会社 49%、中国・青島泰達天潤炭材料有限公司 37%、明和産業株式会社 14%
事業内容:負極材用球形化黒鉛の製造販売
<Syrah Resources Ltdの概要>
所在地:オーストラリア・ビクトリア州メルボルン
設立:2007年
事業内容:天然黒鉛鉱石の発掘および加工販売
http://www.syrahresources.com.au
<Mineral Commodities Ltdの概要>
所在地:オーストラリア・西オーストラリア州ベルモント
設立:2003年
事業内容:ミネラルサンドおよび天然黒鉛を中心とした工業用鉱物の鉱山開発および加工販売
https://www.mineralcommodities.com/
画像上:負極材
画像下:青島雅能都化成有限公司