・国産材の活用促進に向けた取り組み、2025年中の操業開始を目指す
鹿児島県志布志市と住友林業(東京都千代田区)は2月14日、志布志市臨海工業団地(5工区)の土地売買契約を締結し、2月14日に立地基本協定書を締結したと発表した。協定は住友林業が同工区で新工場建設の検討を開始することを両者が合意し、実現に向けて環境整備等、相互が協力していくもの。
住友林業は国産材を活用する木材加工工場とバイオマス発電所の建設を検討する。今後、具体的な事業計画の策定や設備の選定を進め、2025年中の操業開始を目指す。
両者は鹿児島県、志布志市、住友林業3者での立地協定締結に向け、地域が抱える様々な課題に対しても連携と協力を深め、それぞれが有する資源を有効に活用しながら、地方創生の実現を図っていく。
昨年、米国での住宅建設需要の増加や新型コロナウイルス感染症拡大を起因としたコンテナ不足等により、世界全体で木材価格が高騰するウッドショックが起こった。木材供給の約6割を輸入に依存している日本では、国産材の急な増産に対応できず、価格面・数量面で大きな影響を受けた。
森林大国である日本では、戦後植林した人工林を中心に森林蓄積量が52億m3(※1)に達し毎年1億m3程度増加し続けている。蓄積量が十分あるにも関わらず木材自給率は41.8%(※2)と、伐期を迎えた森林を活かしきれていないのが実情。国産材の活用に向けては、林業従事者から木材製造・加工業者そして建築業者すべてが、事業収益を確保できる安定的な供給体制の構築が必要。
住友林業はこれらの課題を解決するため、現在志布志港から丸太のまま輸出されている木材や間伐材等を付加価値のある製品に加工する新工場の建設を検討し、国内向けの安定供給および志布志港からアジアや北米などへの製品輸出を目指す。木材製品の製造からバイオマス発電の燃料利用まで、木を余すことなく使いきるカスケード利用を実現することで、九州地域の森林資源の競争力を高め国産材の価値向上・利活用促進に貢献する。住友林業は木材製品や木質燃料を安定的に取り扱い、「植林」→「育林」→「伐採」→「利用」→「再造林」のサイクルを回していく。この循環型森林経営を経済的に自立させたもの、すなわち「サーキュラーバイオエコノミー」を実現することで脱炭素社会を目指す。
志布志市は、志布志港の港湾整備が進み南九州の物流拠点としての機能が拡充するとともに、東九州自動車道や都城志布志道路といった広域道路網の整備によって、南九州各都市からの移動時間が短縮するなど交通の利便性が向上している。これら社会インフラや産業基盤を生かし、物と人の交流促進と地域経済の活性化を図る。林業については、施業の集約化や再造林に向けた広域的な取組を推進し、森林保全を含めた林業の発展と振興を図る。環境については、バイオマス発電等の地域の特性を生かした再生可能エネルギーの導入を促進するなど脱炭素社会の実現に向けた取組を推進するとともに、環境にやさしい地域社会の実現のため、多様化する環境問題への対応に取り組み、環境保全に配慮した資源循環型社会の構築を図る。
※1 出典:令和元年度 森林・林業白書
※2 出典:林野庁 令和2年木材需給表
<志布志市臨海工業団地の概要>
所在地 :鹿児島県志布志市志布志町安楽
面積 :約88,000平方メートル
特長:志布志市臨海工業団地は国際バルク戦略港湾※3に選定され、重要港湾である志布志港に隣接し、九州 自動車道や都城志布志道路からの交通アクセスにも優れた立地にある。志布志港は国内有数の配 合飼料の供給基地でもあり、原木丸太の輸出量が 11 年連続全国1位を誇るなど、南九州地域の第一 次産業の発展を支える成長著しい国際物流港湾。
※3 国際バルク戦略港湾 港の強化と国際競争力の増強を目的とした国の成長戦略の一環で、国内の港を選定して集中的に整備される港。