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日立建機の平野社長が年末会見、当面は米州市場の独自展開が最優先

 日立建機は12月17日、恒例の年末メディア合同ミーティング(対面・オンライン併催)を開催し、平野耕太郎社長が2021年を振り返るととともに、2022年以降に向けた取り組みや方向性など、概ね次のように語った。以下、発言を順不同で抜粋。

・・・・・2021年を振り返り、2022年の見通しは。

 コロナウイルスもずいぶん落ち着いてきたと思っていたが、また新しいオミクロン株がでてきた。日本は比較的落ち着いているが、海外では各国で感染拡大が続いている。そういった中で、足元の建設・鉱山(マイニング)機械の需要は、非常に強い状況である。原価が高騰しているとかの問題はあるが、当社としては状況を的確に把握しながら今後も事業を拡大していきたい。

 2021年、コロナの状況がビジネスにどのように影響していくのか、危惧した年初であった。結果的に、建設・鉱山機械の需要は中国を除いて非常に強いものがあった。これは、我々にとってポジティブ(陽)な話で、生産台数が上がってきているこの状況をしっかりと把握して事業を進めていきたい。

 もう一つは、8月に米州(北中南米)市場の独自展開を決めたこと。ジョンディア(米ディア社)との合弁契約解消に向け、着々と準備を進めているが、 2022年3月1日からは日立建機独自で展開することになる。これを確実に実行していくことが非常に大きな課題である。 すでに11月からは製品本体の出荷、それからサービスパーツの出庫も始まっている。この準備を進め、2022年3月を迎える。これが当面の一番大きな課題である。

・・・・・ 2022年度の需要環境については。

 需要環境は、中国以外の市場は引き続き良く、強い状況が続くと見ている。したがって、これら強い市場に対して確実に製品・部品を供給していくことだ。 鋼材等の調達価格、コンテナの不足等の問題もあるが、今のところ堅実に対応しているので、代理店や顧客に製品を安定供給していくということが、当社にとって重要なことだと思っている。

 取り組まなければならない優先課題は、米州市場だ。北米市場の中心機種は、ミニショベルと中小型の油圧ショベル。この市場に新しい製品を出していく。それと、建設機械はどうしてもメンテナンスが重要なので、サービス部品や再生部品を顧客に提供していくことが、当社にとって一番大切なことだ。

 南米については、鉱山機械が中心になる。2022年度からすぐに大幅に増えていくことは難しい。次の年度に向け、足掛かりを付けていくことだと思っている。具体的に言うと、サービスセンター、部品倉庫をどこに設けるかなど、2022年度以降に向けた体制づくりの年だと位置づけている。

・・・・・中国市場の見通しについては。

 2021年度の中国市場は年初から厳しくなると見ていたが、その通りになった。2022年度の需要見通しは本当に難しい。2023年1月から排ガス規制が始まることだが、日米欧の生産規制と違って販売規制になること。2022年12月末までに残った機械は販売できなくなってしまうので生産を相当絞ることになる。他の会社も同じことを考えるなど、市場予測が読みづらい。

 2023年の1~3月、つまり春節シーズンに新型が出ると、買い控えが起こる。中国政府は環境対応を強めており、新しい排ガス対応車を勧める。そういう方向になった時には、旧型を買うのでなく、新型を待つこともあるので、需要を読むのは難しい。 2021年度については、前年度比45%減(外資系ベース)の38,000台という見通しをもっているが、2022年度の需要見通しは非常に難しい。

・・・・・鉱山機械(マイニング)の現状は。

 鉱山機械(マイニング)は好調だ。2022年度分も入っている。受注は強く、ユーザーの投資意欲が高い。オーストラリア、インドネシア、ロシアCIS、この地域は特に強い。石炭と鉄鉱石関連が強い。前回の需要のピークは2011年ごろ。10年周期で来ているのではないだろうか。2022年度の生産も非常に強いと見ている。

・・・・・電動ショベル等への取り組みは。

 電動ショベルの開発は、ドイツにある開発会社EAC European Application Center GmbH(EAC ヨーロピアン アプリケーション センタ―GmbH)<2018年10月1日発表>と日本の日立建機ティエラ(2019年12月9日発表)で行っている。

 ドイツの会社は8トンモデルで、これはもう既に20年度から販売しており、20年度で25台、21年度は50台の販売を計画している。顧客からは好評で、このトン数の機械はヨーロッパでも着実に販売していこうと考えている。

 日立建機ティエラで開発中の5トン機は、車体後部が引っ込んだ小旋回タイプ。こういうタイプでのバッテリー化は難しい。後部が狭いだけにバッテリーを設置するスペースが限られている。それから、バッテリーは熱を持つので、それをどうコントロールしていくかだ。狭いスペースなので非常に難しい。この機械は顧客のもとで試験中であり、2022年度には何とか販売にこぎつけたい。 この2製品が、日立建機の電動ショベルの基本ができることになり、今後はラインナップを増やしていくことや、日本で開発した製品をヨーロッパで、ヨーロッパで開発した製品を日本で販売するという展開になる。

 もともと日立建機では、中国工場からロシアなど中国以外の国へ輸出、インドから中近東へも出している。それぞれ地域ごとの仕様で機械を各地へ出している。地域ごとの需要変動に合わせた生産対応でもある。

 電動化でキー(鍵)となってくるのは、やはり価格だと思う。いまは現行機に対し2倍以上、3倍近くの価格になっている。価格を下げていくためには、普及台数を増やしていくことや、バッテリーの価格を下げる必要がある。 自動車は、圧倒的にバッテリー使用量が多い。自動車用が増えてくると、価格が低下してくる。ミニショベルに低価格のバッテリーが使えるようになれば、電動ミニショベルも増えてくるのではないだろうか。

 顧客の声を聞くと、CO2削減ということもあるが、それだけでなく、エンジンを搭載していないので、機械の音が静かであるという。夜間工事に適しているとか、学校、病院の近くで仕事をするとき、音が静かであることの利点は大きい。したがって、価格が下がれば数年後には増えてくるのではないかと思っており、この部分の開発を急いでいる。また中国を含む世界の自動車メーカーの動きにも注目していきたい。

 電動化は、ヨーロッパが進んでいる。何故、電動化に取り組んでいるのかというと、都市部の工事には条件として記載されている点。建機メーカーが、価格を抑えていくと同時に、活用する側もしっかりと対応してもらうことも大切である。

 ヨーロッパは、国も民間も住民の意識も高く、電動ショベルを導入する意欲が顧客も発注する側も非常に強い。すべてで環境意識が高いものだから、電動化のスピードは速い。これに対し、日本はなかなかそこまでには至っていない。

 電動というのは、基本はエンジンレスの機械。実をいうと、日本でも昔からあって、廃棄物処理で使う油圧ショベルであったり、コンセントにつなぐロープ式というもので、排ガスを出したくない顧客は以前からあった。今もこのタイプで充分でバッテリーに充電する必要もないという。また都市部で使うとなると、まだ限られている。日立建機も何年も前からバッテリーショベル(2006年と10年に発売)を出しているが、顧客はまだ使わなかった。いまの段階でも、価格が高いということで敬遠される。ただ、後方小旋回型がバッテリー化されると、CO2削減と夜間工事に使えることで、日本は増えていくのではないだろうか。

 アメリカは、まだ分からないが、CO2削減意欲の強いニューヨークであったりカリフォルニアであったり。そういう地域には期待が持てるのではないかと思っている。つまり一言でいうと、地域に応じた対応機種(現行機か電動機か)となる。

 建設機械は重たいのでバッテリーは、10トンぐらいまでではないだろうか。20トンや30トンのバッテリー化は難しく、燃料電池や水素になってくる。当社も開発を進めているが、どいう方向に向かうのか、それぞれに課題がある。補給にタンクローリーなど使えばコストが相当高くなる。

 そうはいっても、世の中は進歩していく前提で、日立としては、燃料電池、水素などの研究も具体的に始めている。 また、もっと大きな機械。鉱山機械(マイニング)になると、外部電力を取りながらバッテリーを動かす。それからショベルなどは、ロープで外部電力を取り込む。また、日立建機ではABBとエンジンレス・フル電動リジッドダンプトラックの共同開発を開始共同開発している。<2021年6月23日発表

 建設機械の電動化については、ミニショベルのバッテリー化と、マイニングのケーブルとバッテリー化。残されるのは、真ん中のメインの20トン、30トンの建設機械(油圧ショベル)が、どっちの方向に向かうのか、まだ技術的に確立されていない。そこに燃料をどう補給していくかも、社会インフラ部分も考えたうえで、開発を進めている段階だ。 また日米欧は電動化で対応しても、アフリカやロシア、インドネシアなどとなると、現行のエンジン車が残る。我々としては、排ガス規制を厳しくした対応車となる。いずれにしても開発のリソースをどう振り分けていくのか考えながら進めていく。

 2021年12月17日会見より抜粋。

 

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