2021年8月期における事業環境は、国内の公共投資は底堅く推移しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外で一部の工事に遅延が発生するなど、依然として事業活動は一定の制約を受けた。また、気候変動に起因する洪水被害や土砂災害などが世界各地で増加している。激甚化する自然災害や人為災害への対策、社会インフラの老朽化対策は、各国で重要な施策として位置付けられており、建設構造物の刷新や強化が急務となっている。こうした中、2021年8月期は「中期経営計画(2019年8月期-2021年8月期)」の最終年度に当たったが、昨今の事業環境が大きく変化をしたことを踏まえて2020年10月9日に数値目標を売上高27, 100百万円、営業利益3,150百万円、海外売上高5,200百万円に修正した。当年度(2021年8月期)はこの目標の達成と、経営方針「インプラント工法で世界の建設を変える」にもとづくグローバル・エンジニアリング企業への転換に向け、グループ一丸となって取り組んだ。
海外展開では、圧入原理の優位性を最大限に発揮し、建設の五大原則を高次元に遵守する工法提案活動に注力している。この活動による工事件数は着実に増加しており、インプラント工法の認知度を向上させている。大型プロジェクトについては、オランダ・アムステルダム市の運河護岸改修に係る新技術開発プロジェクトにおいて、海外子会社Giken Europe B.V.が、協働する現地建設会社と合弁会社「G-Kracht B.V.(ジークラフト ビー・ブィ)」を設立した。2022年1月開始予定のパイロット施工に向け、現地では詳細設計や各種モニタリング計画を、国内では新たに開発した電動GRBシステムの実証試験を進めている。また、ブラジルでは鉱滓ダムの防災対策工事に向け、現地企業への技術指導などが順調に進んでおり、オーストラリアでも大型案件の本格的な工事に向けた準備作業が進んでいる。
■セグメント業績
<建設機械事業>
国内では、オリンピック・パラリンピック関連や再開発などの建設投資が一段落したことにより、一時的に顧客の設備投資は慎重な状況となっていたが、新たな民間開発などの動きもあり、顧客の設備投資意欲の回復基調は強まっており、400mm幅U形鋼矢板用のサイレントパイラーF 101、F111などの一般機は、入れ替え需要による販売が順調に増加した。また、国内の公共土木工事では、本設工事に用いる杭材が、600mm幅U形鋼矢板から900mm幅ハット形鋼矢板への移行が進み、案件数も増加しており、その杭材に適合したサイレントパイラーF301-900の販売は堅調に推移した。
その結果、売上高は19,134百万円(前期比22.7%増)、セグメント利益は4,775百万円(同38.8%増)となった。
<圧入工事事業>
インプラント工法は、その優位性から緊急度や難易度の高い災害復旧、重要性の高い防災・減災対策や老朽化対策、高速道路をはじめとする交通ネットワークの機能強化などの目的において、海岸堤防や河川護岸などの治水施設の2021/10/11 15:54整備、港湾施設の岸壁改良、道路復旧や地すべり対策、道路の延伸・改良などに採用されている。インプラント工法の中でも現在主力を担うのは、回転切削圧入により既存構造物にも杭を貫入することのできるジャイロプレス工法となっており、国内子会社の株式会社技研施工に加えて、圧入技術フランチャイズ「GTOSSメンバーシップ」のGMメンバー17社が工事を実施して、同工法の普及拡大を進めている。
㈱技研施工では、新技術・新工法開発の一環として工事を実践しており、工事の自動化・省力化や各種工法の完成度向上などに取り組める先進性の高い案件を手掛け、圧入技術を高めている。今年で東日本大震災から10年を迎え、復興事業や南海トラフ地震対策の工事が一段落したこともあり、前期と比べて大型工事が減少した。
その結果、売上高は8,484百万円(前期比6.2%減)、セグメント利益は1,243百万円(同0.4%減)となった。
■2022年8月期の見通し
2022年8月期の業績については、連結で売上高30,000百万円(前期比8.6%増)、営業利益4,500百万円(同12.6%増)、経常利益4,550百万円 (同9.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,200百万円 (同4.1%増)を見込んでいる。
中期経営計画(2022年8月期~2024年8月期)