・1988年以来の提携関係を解消し、米大陸全域で独自の販売・サービス網を再構築
・製品とコンポーネントは新たに供給契約し当面継続
日立建機は8月19日、米・ディア&カンパニー社(Deere & Company、本社:米国イリノイ州モリーン、以下、ディア社)との間で1988 年以来続けてきた北中南米事業の合弁事業に関する業務提携を解消することで合意したと発表した。
今回の合意によって、日立建機は、2022 年3月以降、高性能・高品質でグローバルに認められているコンパクト・コンストラクションの油圧ショベル、超大型のマイニング機械、さらにホイールローダまで、日立建機グループとして、最新の製品・技術・サービスを北中南米市場全域で、独自の代理店ネットワークを通じて顧客に直接提供していくことが可能となる。
今後は、日立ブランドのホイールローダを製造・販売する日立建機ローダーズアメリカ社(Hitachi Construction Machinery Loaders America, Inc.、本社:米国ジョージア州)を軸に、域内のグループ会社と、新たな事業構造を構築する。
既存の日立ブランドで展開する油圧ショベル・ダンプトラック・ホイールローダの代理店ネットワークなどを活用・強化しつつ、マーケティングからサービスまで北中南米市場全域で最適なネットワークを構築していく。
なお、日立建機とディア社は新たに供給契約を締結し、ディア社向け同社ブランドのミニショベルおよび油圧ショベルの現行ラインアップの完成車のOEM供給や、米国とブラジルのディア社の油圧ショベル製造・販売拠点へのコンポーネント供給およびサービス部品供給を、当面の間継続する。
また、提携解消後の最優先事項として、これまで合弁事業を通じて製造・販売した製品を保有する顧客に対して、継続性をもってサービスを提供する。
日立建機とディア社は1988年に米国ノースカロライナ州での製造・販売の合弁会社ディア日立社(Deere-Hitachi Construction Machinery Corporation)を設立して以来、北中南米全域で重要なパートナー関係を築いてきた。
日立建機が世界トップクラスの技術を誇る油圧ショベル技術を供与することで現地生産を本格的に進め、マーケティングは農機で現地に強固な地盤を持つディア社が担当することによって、北中南米の米大陸全域で連携して事業を展開してきた。
一方、近年、土木建設やマイニングの顧客の間で、世界的なSDGs などの機運の高まりとともに、建設機械メーカーに対してますます「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」という基本的な3つの要求が強くなっている。
日立建機では、これらの課題に応えるために、2017 年度を初年度とする前中期経営計画からグループを挙げ、新車販売以外の事業(バリューチェーン事業:部品サービス、レンタル、中古車、再生部品、ファイナンスなど)の拡大と深化に本格的に取り組んでいる。2022 年3 月以降、コンパクト・コンストラクションホイールローダだけでなく、コンパクト・コンストラクションの油圧ショベルと超大型油圧ショベル、ダンプトラックでも、北中南米全域の顧客の課題に、最先端のソリューションをダイレクトに提供できるようになる。
今後、日立建機グループとして、北中南米市場に対して具体的に以下の通り取り組んでいく。
1.地域統括会社を強化し、北中南米全体の市場戦略を立案、代理店ネットワークを強化
今回の提携解消によって、これまでは日立ブランドのホイールローダの製造・販売を担当してきた日立建機ローダーズアメリカ社の組織を大幅に見直して、ホイールローダ、コンパクト・コンストラクションの油圧ショベル、超大型油圧ショベル、ダンプトラックの全てを扱う地域統括会社としてさらに強化する。
日本で製造した機械を地域統括会社で調達し、日立ブランドで販売し、サービスをするための全米販売ネットワークの構築に取り組む。現在、日立建機ローダーズアメリカ社では、北米にホイールローダの代理店ネットワークを築いており、コンパクト・コンストラクションの油圧ショベルについても、まず最新の高効率な油圧システムや作業現場の安全性を向上させるAerial Angle®、さらに世界中で高評価のサービスソリューションConSite® OIL を標準搭載するなど、高度な作業性・安全性・サービスが求められる北米の市場ニーズに応える最新機種を投入し、域内のマーケティング体制を再構築し、強化する。
また、マイニング事業については、日立建機グループのマイニング関連各社と連携して、北米をはじめ、中南米市場でも独自のネットワークの開拓に取り組む。
2.北中南米全域でマイニング事業を強化
マイニング事業は、今回の合意で、今後は、北米をはじめ中南米市場でも既存代理店*1と協力してネットワークの強化・拡大に取り組み、米大陸全域の採掘業に携わる顧客に対して主体的な事業展開が可能となる。
具体的には先に締結したABB グループとのマイニングのネット・ゼロ・エミッションへの取り組みをはじめ、世界市場で豊富な納入実績を持つトロリーダンプトラック、鉱山の自動運転に向けた鉱山用のダンプトラック自律走行システム(Autonomous Haulage System:AHS)および超大型油圧ショベルの自律運転技術なども含めて、日立建機グループの動向は世界の鉱山市場の顧客から大いに注目されている。
鉱山市場の顧客にとって、CO2 削減だけでなく、高度化し、複雑化する鉱山全体の経営の効率化も、大きな課題となっている。このため日立建機では、鉱山全体のオペレーションを支援する「ConSite® Mine」の提供を開始する予定。また複雑化するダンプトラックの運行管理で、世界有数のエンジニアリング会社であるカナダの子会社Wenco International Mining Systems Ltd.(本社:カナダ ブリティッシュコロンビア州 リッチモンド/ウェンコ社)と連携して、新しいサービスの拡大も進める。
さらに、鉱山機械向け部品を製造するBRADKEN PTY LTD(本社:オーストラリア連邦・ニューサウスウェールズ州/ブラッドケン社)や、鉱山の採掘・砕石・建設機械および設備向けサービス事業や鉱山設備の部品開発・加工・販売を担当するH-E Parts International LLC(本社:アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ/H-E パーツ社)は米州市場全域に実績があり、これらのグループ会社と連携し、ABBグループと協業しつつ市場の開拓・深耕に取り組む。
3.最先端のIoT を活用した高度な部品サービス事業への本格参入
日立建機は2000 年より油圧ショベルにオプションで通信端末の搭載を始め、2006 年からは全機種で 標準搭載を始めるなど、I oT を活用し、建設機械の稼働・位置情報などのビッグデータをGlobal e-Service®(グローバル イーサービス)に蓄積・分析を続けている。
2013 年より、Global e-Service®に蓄積してきたデータに基づいて、遠隔監視で故障リスクを把握し、 建設機械の状態に応じ、データレポートを配信するサービスソリューション「ConSite®」を提供し、顧客の課題の中でもとりわけライフサイクルコストの低減に貢献してきた。
現在、ConSite®のデータレポートサービスの契約台数は113 カ国・地域で15.8 万台*2 に達しており、全体の販売台数に占める契約率は約75%*3 と、顧客から短期間で高い支持を得てきた。また、AIや分析・解析技術を積極的に取り入れることにより、センシングによる遠隔での故障予兆検知率を75%*4 まで 高めており、今後、の目標として、故障予兆検知率を約90%に高めることをめざしている。
すでに、日立ブランドで展開中のホイールローダのConSite®契約率は85%*5 と、北米市場から高い評価を得ており、今後、新油圧システムや、現場の安全性を向上させるAerial Angle®、さらに、このConSite®、ConSite® OIL を搭載した最新の油圧ショベルを北米市場に投入し、 顧客の期待に応えていく。
このConSite®は日立グループが重点的に取り組んでいるLumada®事業ではユースケースとして位置付けられている。これらの日立建機の最先端のサービスについても、北中南米全域の顧客に提供が可能になり、顧客の課題の解決に貢献していく。
4.レンタル・中古車事業の拡大
日立建機は2018 年に米国のレンタル機器会社のACME Lift Company (本社:米国アリゾナ州/以下ACME 社(アクミ社))に資本参加して、米国でのレンタル事業に参入し、順調に業績を拡大してきた。資本参加後、ACME 社では既存の製品構成に加えて、土木レンタル向けにも日立ブランドの油圧ショベル、ホイールローダの卸レンタル事業に参入した。
今後は、ACME 社による広域レンタル事業者向け取引拡大に加えて、日立建機の代理店ネットワークを通じて独自のレンタル事業を拡大していく。また同時に、日本をはじめ欧州や中国、東南アジア、 オセアニアでも日立建機として実績のあるメーカー保証中古車事業についても、最先端の北米市場を中心に拡大を検討していく。
5.OEM供給の継続
今回、ディア社とのOEM 供給契約を、当面継続することで合意した。OEM 供給の継続によって、 両社ともにスムーズな事業移管が実現できる見込み。
これらによって、注力してきたマイニング、コンストラクション、コンパクトの主要事業分野で、他社を凌駕するグローバルトップの技術・サービスを、常に直接顧客に提供する企業グループへと事業構造の転換を図る。
日立建機グループは、これまでも身近で頼りになるパートナーとして、顧客の課題を解決するソリューション「Reliable solutions」を提供してきた。今後も「豊かな大地、豊かな街を未来へ」をグループのミッションとして、全世界の発展のために貢献し、サステナブルな社会へ向けた課題解決に取り組んでいく。
*1:現在ディア社の代理店で日立ブランドの機械を取り扱っている代理店
*2、*3:2021年3月末時点。
*4:2020年度実績。
*5:2021年3月末時点。
ニュースリリース(ディア社との業務提携解消について)
ニュースリリース(ディア社)