・従来品比で30%トルクを低減し、自動車の低燃費化に貢献
■開発の背景
近年、自動車の電動化および低燃費化において、エンジンやインバータ、バッテリ、モータなど車両コンポーネントの熱管理(サーマルマネジメント)は重要な課題となっている。電動車では冷却水を循環させる電動ウォータポンプが自動車1台あたり複数個搭載されており、電動ウォータポンプ内で冷却水を押し出す役割を担うインペラ(羽根車)に軸受が使用されている。
電動ウォータポンプ用軸受には、PPS樹脂*1などを使った樹脂軸受やカーボン軸受など小型・軽量かつ耐薬品性を有するすべり軸受が使用されており、いずれの軸受も燃費向上を目的にさらなる低トルク化が求められている。
*1) Poly Phenylene Sulfide(ポリフェニレンサルファイド)の略。射出成形が可能で、連続使用温度240°Cの熱可塑性樹脂。耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性に優れる。
■開発品の特長
今回開発した「低トルク樹脂軸受」は、固体潤滑剤などの独自配合により、水中使用時に優れた低摩擦・低摩耗特性を発揮するNTN製PPS樹脂材料を使用するとともに、スラスト面に特殊潤滑溝を形成している。従来は、潤滑溝に矩形溝を形成していましたが、開発品の特殊潤滑溝は、軸受の反回転方向に徐々に溝が浅くなる勾配を設けることで、軸受回転時に冷却水を反回転方向に押し込み、動圧効果による圧力を発生させる設計としている。これにより、軸受のスラスト面の接触部に冷却水が入り込みやすくなり、従来品と同等以上の耐久性を維持しながらトルクを30%低減することに成功した。
開発品は、カーボン軸受に発生しやすいクラック(割れや欠け)の心配がなく、水中における優れた耐摩耗性を有しており、カーボン軸受からの置き換えも可能なことから、電動ウォータポンプ用途でのさらなる販売拡大を見込んでいる。
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