・トロリー充電式により低コスト・積載量の最大化・高稼働率を実現へ
フル電動化を実現するにあたり、稼働に必要な電力を架線から取り込むと同時に、バッテリーへも充電する「トロリー充電式」を採用することで、バッテリーの搭載量を抑え、バッテリーの負荷を低減し長寿命化を図ることにより、初期費用・ライフサイクルコストを抑制する。また、バッテリー搭載量を抑えることは、車体に占めるバッテリー重量を軽くして積載量の最大化にも寄与し、充電のために停車する必要がなく高い稼働率を実現できることから、鉱山現場における生産性の向上をめざす。
両社は、鉱山機械からの温室効果ガス排出量の実質ゼロに貢献する「ネット・ゼロ・エミッション・マイニング」の実現に向けて、協力関係を構築するための覚書を2021年3月に締結した。
今回の共同開発は両社による協業の第一弾という位置づけ。今回は、ABB社が既存の製品をカスタマイズして充放電システムを開発、日立建機がトロリー受電式リジッドダンプトラック技術をベースに、フル電動ダンプトラックの全体設計、開発を担当する。両社の知見・ノウハウを活用することで、開発スピードを加速させる。
鉱山業界では、環境意識の高まりを背景に温室効果ガスの排出を削減する取り組みのひとつとして、鉱山機械の電動化に関心が高まっている。しかし、ダンプトラックの電動化は、バッテリーの価格や、航続距離*1を伸ばすためにバッテリー搭載量を増加させると、車体重量が増えて積載量が少なくなったり、充電のための停車により稼働率が低下するといった課題がある。鉱山現場では採掘コストの低減と生産性の向上が求められるため、これらの課題の解決と温室効果ガス排出量の削減を両立する技術開発が求められている。
今回、両社が共同開発するフル電動ダンプトラックは、稼働に必要な電力を架線から取り込むと同時に、バッテリーへも充電する「トロリー充電式」を採用することで、ダンプトラックの電動化の課題を解決することに挑戦する。
*1 船舶や航空機、自動車などが、搭載した1回の充電によって航行を続けることのできる距離。走行状態により同じ充電量であっても距離は変わる。
■共同開発するフル電動ダンプトラックの特長
1.初期費用・ライフサイクルコストを抑制
稼働に必要な電力を架線から取り込むことで、バッテリーの搭載量を抑え、車体の初期費用を抑制する。また、架線を走行するたびに架線から電力を取り込み走行すると同時にバッテリーへも充電し、適切な充放電を繰り返すことで、バッテリーの負荷が低減され、長寿命化にもつながり、ライフサイクルコストの低減をめざす。
2.車体重量を軽くして、積載量を最大化
バッテリーの搭載量を抑えることで、車体に占めるバッテリー重量が軽くなり、積載量を増やすことができる。フル電動ダンプトラックの中では、「トロリー充電式」が積載量を最大にすることができ、鉱山現場の生産性向上に貢献する。
3.充電のために停車する必要がなく、高稼働率を実現
架線から電力を取り込み走行すると同時に、バッテリーへも充電することで、充電のために停車する必要がない。そのため、高稼働率を実現することができ、鉱山現場の生産性向上に貢献する。
ABB社と日立建機は、鉱山設備の管理システム、送配電網などのマイニングプロセス全体に強みを持つABB社と、トロリー受電式リジッドダンプトラックの開発の知見や豊富な納入実績を持つ日立建機の強みを生かして、鉱山機械からの温室効果ガス排出量の実質ゼロに貢献していく。
■ABB社 モーション事業本部長 エドガー・ケラー氏のコメント
私たちは、日立建機が持つ豊富な知識と革新的な技術を組み合わせることで、効率を向上させ、鉱山の電動化を加速させるために協力できることを光栄に思っています。両社は、ソリューションを共創することで、鉱山経営の生産性と持続可能性の目標達成を支援します。
■日立建機 執行役専務マイニング事業本部長 石井壮之介氏のコメント
ABB社からは、当社の電動式超大型油圧ショベルやAC駆動ダンプトラック、トロリー受電式リジッドダンプトラックに関する当社の優位性を高く評価していただいております。両社の強み・知見を生かしてフル電動ダンプトラックの開発を早期に実現します。また、今回、ABB社が開発を担当する充放電システムは、将来的には充電ステーション方式や燃料電池式にも適用することができるため、今回の開発で鉱山のネット・ゼロ・エミッションに必要な基盤技術も確立することができます。将来を見据えながら、開発を進めてまいります。
画像・上：日立建機のトロリー受電式リジッドダンプトラックEH4000AC-3
画像・下：トロリー充電式を採用したフル電動ダンプトラックの使用イメージ