2020年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大によりマイナス成長となったが、全体としては既に底入りしており、回復局面にある。いち早く落ち込みから回復した中国は、20年度においても前年比プラスのGDP成長率を記録した。また米国は巣ごもり需要やEC拡大などの新たな需要がけん引役となり、2020年の7月期以降に急回復し、その後も回復基調は継続している。
このような状況下において、ヤンマーグループではアフターコロナを見据えた成長戦略を描くと同時に、新型コロナウイルス感染拡大によるマイナス影響を受け、短期的な構造改革に重点的に取り組んだ。
■セグメント別概況
<産業用機械事業>
農業機械の国内市場においては、補助金の発出に支えられたものの、農家戸数が引き続き減少傾向にあり、需要は前期を下回った。海外市場においては、中国や東南アジアで政府補助金が発出されたほか、北米では巣ごもり消費により小型トラクター需要が拡大し、市場は堅調に推移した。結果として、売上高は前期を上回った。
建設機械の国内市場においては、需要が比較的堅調に推移する中で、シェアは前期をやや下回った。また海外市場においては、上半期に冷え込んだ需要が下半期に入り急速に回復したものの、供給量が追い付かず、北米や中国でシェアを落とした。一方で、前期に買収したASV社が寄与し、結果として、売上高は前期を上回った。
ガスヒートポンプ及び発電機の国内市場においては、前期の補助金採択による特需の反動と新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の制限を受け、ガスヒートポンプの需要は大きく減少した。一方で非常用発電機においては、引き続き防災意識の高まり等により需要は高止まりとなった。また、海外市場においては、需要は前期を下回った。結果として、売上高は前期を下回った。
<内燃機関及び関連機器事業>
同セグメントは、産業用エンジン、舶用エンジン、コンポーネントにより構成されている。
小形産業用エンジンにおいては、北米の多用途作業車両市場や中国の建機市場が、特に下半期堅調に推移したが、その他市場での回復が遅れ、全体では売上高は前期を下回った。
舶用エンジンにおいては、製品売上台数の落ち込みにより、売上高は前期を下回った。
トランスミッション、ギア、工作機械を中心としたコンポーネントにおいては、国内及び北米市場での需要は回復傾向にはあるが、売上高は前期を下回った。
■今後の見通し
国内事業においては、建機事業の下期以降の回復基調が継続し、最終商品だけでなく部品・サービス拡販による増収を見込む。海外事業においては、小形産業用エンジンの中国市場および北米市場のトラクター向けエンジン等の好調により増収を見込む。グループ全体では、引き続き構造改革による収益改善を進める。
また、現地法人への権限委譲による事業活動の迅速化やデジタル執行部門の新設など組織力の強化にも取り組む。さらには、脱炭素の実現に向けた舶用水素燃料電池システムの開発を加速させるなど将来の脱炭素の実現に向けた取り組みを強化していく。
こうした取り組みにより、2021年度(2022年3月期)の連結業績見通しについては、売上高8,100億円(前期比3.5%増)、営業利益240億円(同10.9%増)、経常利益270億円(同15.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益165億円(同10.0%減)を予想している。
なお、業績の見通しの前提となる為替レートについては、1米ドル=108円、1ユーロ=130円を想定している。