■経営成績の概況
2020年度の世界経済は、期初においては新型コロナウイルスの感染拡大により消費活動や経済活動が大きく停滞し、その後、徐々に持ち直す動きの中で推移した。期の後半からは、有効性が高いとみられるワクチンの接種が開始されたほか、各国政府による経済対策等により、景気回復の足取りは確かなものとなった。
米国市場では、需要は大幅な減少の後、回復傾向で進んだ。自動車関連をはじめ、建設機械、農業機械等、幅広い分野で設備計画が再開され、投資に慎重とされる航空機関連においても、生産効率化を目的に生産設備の刷新等を図る企業が見られた。更に設備投資の動きは中・小規模事業者にも広がった。
欧州市場では、中国向けの輸出増加等を背景に製造業の景況感に改善が見られ、ウイルス感染拡大の影響を強く受けた南欧諸国においてもEU復興基金の経済対策への運用決定の後押しもあり、設備投資が活発化し始めた。
国内市場では、半導体製造装置や建設機械関連からの需要は底堅く推移した。また、感染の再拡大に伴う2021年1月の緊急事態宣言の再発出により足踏みしながらも、自動車関連をはじめ幅広い業種において需要は緩やかに持ち直しに向かった。
■今後の見通し
今後の世界経済は、足下では欧州を中心に新型コロナウイルスの変異種の感染拡大が進み、国内でも新規感染者数の減少が見られない状況だが、コロナワクチンの普及によって感染を押さえ込んでいく中で、各国政府による追加経済対策等により回復の足取りが強まることが予想される。
このような経営環境の下、当企業グループは、これまで培ったスマートマシン、スマートマニュファクチャリング技術を土台に、自動化・無人化、工程集約、デジタル革新・DX、脱炭素化への取り組みで「総合ものづくりサービス」企業として成長していく。
営業面では、世界的な設備投資の回復が見込まれる中、コロナ禍を機に定着したリモートでの商談、Webセミナー、バーチャルショールーム等を展開し、リアルとバーチャルの両面から顧客体験価値を拡張すると共に、国内及び海外の販売・サービス拠点・販売網の拡充、強化を図ることにより地域に密着した顧客対応や販売促進策を展開し、販売拡大に注力していく。また、デジタル投資による需要や脱炭素社会に向けた新たな需要を取り込み、販売拡大を加速していく。
技術面では、独自のAI・知能化技術の開発、デジタル活用を更に加速させ、これらを搭載したスマートマシンの開発を進めていく。次世代ロボットシステム「ROID」シリーズ等、自動化・無人化システムの更なる充実を図り、自動化・無人化ソリューションを提案して需要を喚起していく。また、自動車の電動化、再生可能エネルギーの社会インフラ構築等、脱炭素化への社会的な要請に応える技術・ソリューションの開発、環境配慮型製品の拡充を進め、オークマの成長につなげていく。
製造面では、オークマ製品の強みを活かした生産工程の革新を展開し、超多品種少量生産の自動化等、次世代製造技術による生産効率の向上、コストダウンの拡大を図っていく。また、自社工場スマートファクトリーにおいて革新技術の実証を推し進めオークマブランドに対する信頼を一層高めていく。更に本社工場、可児工場の再開発を進め、自己完結一貫生産体制の一層の強化を図っていく。
海外では、生産子会社「大同大隈股份有限公司」(台湾)の生産力を強化し、世界的に高まる「GENOS」シリーズの需要に応え、顧客基盤の拡大を図っていく。また、生産子会社「北一大隈(北京)机床有限公司」(中国)の製品ラインアップを拡充し、製品競争力を強化すると共に生産子会社「大隈(常州)机床有限公司」(中国・江蘇省)の現地調達及びエンジニアリング力を強化し、中国・アジア市場での売上拡大を図っていく。
調達面においては、グローバル調達網の再整備、協力会社への技術支援等、BCPの観点からサプライチェーンの強化の取り組みを推進していく。
オークマグループは、長年に亘り培ってきた「機電情知(機械・電気・情報・知識創造)」融合の強みを展開し、自動化・無人化の対応力、デジタル革新・DXの提案力、トータルソリューションの提供力の強化を図っていく。
そして今期の営業、技術、製造の戦略を進めながら、脱炭素社会の実現に向けた社会的要請やデジタル革新等の経済社会の変化を捉えて成長していく。
以上により、次期の連結決算の業績予想については、下表のとおりである。
売上高1,570億円(前期比27.2%増)、営業利益110億円(同128.2%増)、経常利益115億円(同110.8%増)、親会社株主に帰属する2020年度純利益75億円(同259.1%増)。