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DMG森精機、2020年売上は32.4%減の3,282億円、21年予想は0.5%増の3,300億円

 DMG森精機が2月12日に発表した2020年12月期(1~12月)の連結業績によると、売上収益は328,283百万円(前期比32.4%減))、営業利益は10,674百万円(同71.4%減)、税引前利益は5,106百万円(同83.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,745百万円(同90.3%減)となった。(数値表記は原文まま)

■受注は32%減の2,797億円

 受注額は2,797億円となり、前年度比では32%減となった。2018年後半からの米中貿易摩擦による影響に加え、特に2020年3月頃からのCOVID-19のグローバル感染拡大による経済活動の停滞の影響を受け、世界的に工作機械需要が大きく減少した。このような需要減少局面においてもDMG森精機は、工程集約機、自動化、デジタル化などの付加価値提案により、1台当たりの受注平均単価は前年度並みを維持した。

 地域別の機械受注金額は、日本が前年同期比39%減、米州は同18%減、中国を含むアジアは同22%減となったほか、上半期に各国で厳しい移動制限が実施された欧州では同48%減となった。産業別では、半導体製造装置関連、金型、SMEsが引き続き堅調に推移し、2年程調整していた自動車関連向けもようやく回復の動きが見られた。一方、民間航空機関連向けの需要は引き続き弱含みの展開となっている。

 四半期ごとの受注は、当第2四半期(4~6月期)を底として緩やかな回復傾向にある。中でも全社受注の25%を占める修理復旧サービス・補修部品事業は、当第4四半期にほぼ前年並みまで回復し、顧客の生産活動が着実に正常化しつつあることを示している。

 また、第3四半期(7~9月期)から前年同期比3%増とプラスに転じた中国での受注は、第4四半期(10~12月期)には同42%増と勢いを増している。その他の地域の受注も、概ね前四半期では横ばい圏の金額を確保しており、需要が回復局面にあることを裏付けている。

 短期的にはCOVID-19の感染再拡大により、引合いから受注までのリードタイムが伸長しているが、顧客は中長期の成長、収益改善や省人化対策に向けて、工程集約化、自動化、デジタル化などの投資を検討しており、潜在需要は十分に見込まれる。また、グローバルでの脱炭素化に向けた動きも急速に拡大しており、DMG森精機の活躍の場が益々広がりつつあることを確信している。DMG森精機の直販・直サービスの強みを活かし、デジタルとリアルでの顧客接点を最大限に活用し、着実に受注増に結び付けていく。

 DMG森精機2020年第4四半期データ 

■2021年の見通し

 今後の経営環境においては、受注が前期比で増加を見込んでいる。DMG森精機グループでは、開発・製造・販売・修理復旧の各分野での活動を通じ、さらなる企業価値の向上に努めていく。次期業績(連結)の見通しは、以下のとおり。

 売上収益330,000百万円(前期比0.5%増)、営業利益11,000百万円(同3.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,000百万円(129.1%増)。

 為替レートは、1米ドル105円、1ユーロは125円を前提としている。

 DMG森精機の2020年12月期決算短信

 決算説明資料

■2020年の取り組み

 DMG森精機は、機械加工のトータル・ソリューション・プロバイダとして、5軸・複合加工機などの工程集約機やアディティブマニュファクチャリング(積層造形技術)機・超音波加工機などの最先端機械を基盤とした自動化・デジタル化を推進している。2020年9月には、デジタル化により製造現場の生産性向上を支援するアプリケーション作成ツール「TULIP」の国内販売強化を目的とし、「株式会社T Project」を設立した。「TULIP」ではプログラミングの専門知識なしに作業手順書のデジタル化や機器のモニタリングなどを行うことができ、現場主体の工程改善に貢献する。

 また、コロナ禍においても最適なサポートを実現できるようポータルサイト「my DMG MORI」の提供を推進しており、このサイトを通じて顧客は保有機の情報を一元管理し、遠隔での修理復旧サポートを依頼することができる。AI(人工知能)のチャットボットによるサポート実験も開始しており、今後も機能の拡充を図っていく。そのほかのサービスとして、オンライン会議システムを活用した「工作機械のデジタル立ち会い」やいつでも学習可能なeラーニング形式の「デジタルアカデミー」、社内外の専門家によるオンラインセミナーや記事の提供なども行っており、様々な面から製造現場における自動化・デジタル化を促進している。

 技術面については、工作機械での加工中に発生する切りくずをAIを用いて自動で効率的に除去することができる「AIチップリムーバル」の提供及び、IoTによるデータの蓄積や分析により生産の効率化を可能とする「IoT connector」の標準搭載を開始している。また、2019年11月より包括的な業務提携を行っている㈱ニコンのレーザスキャナを使用した非接触機上計測システムを販売開始した。ニコンが持つ計測技術のノウハウとDMG森精機の最新技術を融合させることで、従来以上に高速・高精度な計測が可能となっている。DMG森精機は、今後もより多くの顧客に最適な最先端技術を提案できるよう、様々な新製品を開発していく。

 こうした最先端技術をわかりやすく伝えるため、DMG森精機はデジタルとリアル双方でのマーケティング活動を強化している。デジタル面では、2020年7月に公開した「デジタルツインショールーム」の機能を拡充し、機械の内外や周辺機器をより詳細に確認できるようになったほか、新たなエリアとして「デジタルシステムソリューションセンタ」を増設し、16種類の自動化システムを閲覧することが可能となった。また、11月にはオンライン展示会「JIMTOF2020 Online」に出展し、その開催に合わせて初のオンライン自社展示会「DMG MORIオンラインテクノロジーデイズ」を開催した。リアルの面では、6月より少人数制での自社展示会「テクノロジーフライデー」を伊賀・東京で実施しており、今後は同イベントを全世界14か所の工場へも展開していく。

 DMG森精機では、「よく遊び、よく学び、よく働く」を経営理念に掲げ、従業員が自律的に自身の時間をマネジメントし、心身ともに充実した生活を送りながらスキルアップする企業文化を熟成している。感染症予防の観点から在宅勤務を励行しているほか、有給休暇の完全取得や在社時間制限内での効率的な働き方を推進している。2021年1月には、従業員の心身の健康がDMG森精機の持続的発展において重要であるとの認識を「DMG森精機 健康経営宣言」として明文化した。管理管掌取締役を委員長とする「健康経営推進委員会」主導のもと、健康増進活動に取り組む従業員への支援と、組織的な健康増進施策を推進していく。また、地球環境保護の観点から、2020年5月に欧州を拠点とするDMG MORI AGでカーボンニュートラルを達成している。2021年には、欧州のみならず日本を含む全世界において、自組織の事業活動に加えて部品の調達におけるCO₂排出量に対しても達成を目指す。

 そのほか、DMG森精機の外洋セーリングチームDMG MORI SAILING TEAMによる海洋中のマイクロプラスチック調査への協力、人材育成助成事業への寄付など様々な活動を通して地域・社会へ貢献している。今後も、グローバル企業としての社会的責任を果たし、継続的に企業価値を高めていく。

 

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