・伊ターボデン社が発電システム一式を納入、三菱パワーが現地対応で支援
・利用されずに捨てられてきた既設フラッシュ式発電所の排熱水を熱源として発電に有効活用
・29MW級のカーボンニュートラルな電力で地域の環境・経済の持続可能性に貢献
・二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業を活用したCO2削減事業を実施
三菱重工グループでイタリアに本拠を置くターボデン社(本社:ロンバルディア州、Turboden S.p.A)および三菱パワー(本社:横浜市西区)は2月3日、世界最大の地熱発電設備容量を誇るフィリピンのEnergy Development Corporation(EDC)が同国のルソン島南東部で運転するパラヤン(Palayan)地熱発電所に29MW(2万9,000kW)級の新規バイナリー発電設備を新設する工事を受注したと発表した。ターボデン社が発電システム一式を納入し、三菱パワーが現地対応により支援するもので、2022年末の完成・運転開始を予定している。
今回ターボデン社が納める発電システムは、EDC傘下のBac-Man Geothermal Inc.(BGI)が保有・運営する12万kW級の既設フラッシュ式地熱発電に、ターボデン社独自の29MW級有機ランキンサイクル(ORC:Organic Rankine Cycle)システムによる新規バイナリー地熱発電装置(注)を追加し、これまで還元井に戻されるだけで活用されていなかった排熱水(Brine)を有効活用し発電するもので、化石燃料その他に依存している送配電網(グリッド)の電力を置き換えることで火力発電由来のCO2排出を削減できる。
また、同プロジェクトは、日本の環境省とその執行団体である地球環境センターが実施する令和2年度「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」に採択されており、フィリピンのCO2削減に貢献するだけでなく、日本のCO2削減目標の達成にも寄与する。今回導入する29MW級バイナリー発電により、年間約7万2,200t(森林換算面積約2万ha、東京ドーム約4,300個分)のCO2排出削減に貢献する見込み。三菱パワーは、現地法人でこれまで地熱・火力発電プラントでの豊富な工事実績とともにソリューションを提供してきたMHI Power (Philippines)Plant Services Corporationを通じて、発電設備の据付指導員派遣および国内輸送などの現地対応を担当する。
フィリピンではGDPの成長に伴い電力需要が拡大しており、再生可能エネルギーの導入が積極的に進められている。同国は多くの火山島から成ることから、地熱資源量は米国、インドネシア、日本に次いで世界第4位、また、地熱発電設備容量は米国、インドネシアに次ぐ第3位であり、資源量に占める設備容量の割合(開発率)はフィリピンが世界で最も高く、世界の中でも地熱開発が積極的に行われている。
同プロジェクトで実施するORC技術の導入による新規バイナリー地熱発電では、追加掘削を必要とせず、既存の地熱発電からの排熱水を活用することで発電を行うことができる。このため、地熱発電がすでに多く開発されているフィリピンをはじめとする地熱発電所にORC技術を導入することで、排出されたままとなっていた排熱水を有効な熱源として利用することができ、即応性の高いカーボンニュートラル電源としての活用が可能となる。
三菱重工業は、広範囲かつ高効率な発電・エネルギーシステムの提供を追求するグローバル企業として、ターボデン社と緊密に連携し、バイナリー発電装置の普及を通じた世界規模でのサステナブル(持続可能)なエネルギーミックスに貢献していく。
(注)ターボデン社のバイナリー発電装置は、フロン系や炭化水素系など低い沸点で気化する有機系材料を沸騰媒体として稼働させるORCタービンを主機として構成されており、バイオマスや工場排熱、地熱など比較的低い温度の熱を活用することができる。最大4万kW級の発電が可能で、燃料産出地域以外もしくは水資源に恵まれない内陸部・砂漠地帯・島々でも容易に導入でき、天候などに左右されにくい安定した発電ができる。