明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルスの世界全体での累計感染者数は約7千万人を超え、全人口の1%まで拡大しました。日本でも昨年は4月の緊急事態宣言を受け、国民全体の協力により、移動の自粛等に努めた結果、宣言の解除後いったん収束に向かったものの、秋以降再び拡大に転じ、約20万人にまで増加しています。(※いずれも2020年12月20日時点での数字)
こうした中で、我が国の経済状況は、4~6月期の実質GDP成長率が年率換算で29.2%のマイナスと、戦後最大の落ち幅となりました。7~9月期は年率換算で22.9%の増加に転じましたが、民間設備投資や住宅投資では依然回復が見られません。
産業車両の国内生産額については、1~10月の累計で12.5%減少、主力機種のフォークリフトでは8.0%減少となっております。フォークリフトでは国内販売台数では3.9%減にとどまっていますが、輸出台数が21.4%減と大きく落ち込んだことが影響しております。
世界全体で見ても、中国市場以外でのフォークリフトの販売は落ち込んでおりましたが、ようやく回復傾向が見えてまいりました。こうした状況の中で、協会のいくつかの事業も変更を余儀なくされました。
7月3日に開催を予定しておりました「フォークリフト安全の日」、10月8日に4年ぶりの日本での開催を予定していた「日欧米中アライアンス業界首脳会議」は、新型コロナウイルス感染拡大を防止する見地から、いずれも中止することとし、開催を1年延期することといたしました。また、様々な委員会等の活動ももっぱらリモートでの開催となり、協会の役割の一つである相互交流や情報・意見の共有を円滑に行うことが難しい1年となりました。こうした難しい状況の中で、協会活動を支えていただいた会員各位にあらためて御礼申し上げる次第です。
産業車両は、工場や物流センター、倉庫、港といった物流における結節空間において荷役・搬送に活用されております。こうした現場では、ここ数年来、労働力不足に悩まされており、作業の機械化・自動化の動きが広まってきましたが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、物流業務でも“三密”を避けるための自動化ニーズも生まれてまいりました。
政府が現在検討している次期「総合物流施策大綱」に向けた論議でも、こうしたウィズ・コロナにおける物流を維持・発展させていくため、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入促進、そしてそのための標準化の必要性といったテーマが掲げられており、年度内には発表される予定です。
私どもとしても、こうした社会からの要請にお応えして、産業車両の提供にとどまらない、物流の高度化に資するソリューションをお客様に提案できるよう、技術力や構想力を高めて、問題の解決を図っていくことが必要です。
こうした取り組みは従来から行ってまいりましたが、今後はさらに強化して、日本が目指すソサエティ5.0の実現にも貢献していかなければならないと考えます。
ここで協会の活動状況について、いくつかご紹介いたします。
私どもでは平成26年度に策定した「産業車両(フォークリフト)産業戦略」で掲げた、物流の効率化、安全向上、環境負荷の低減に貢献する、信頼性の高い製品、サービスによって、産業車両における“日本ブランド”を確立し、世界ナンバー1であり続けるとの目標の下、様々な事業を進めております。
物流の効率化というテーマでは、物流分野においても、ロボットやIoTを活用した自動化への流れが強く広くなっている中で、無人搬送車システムに対する関心や期待が高まっており、納入件数の増加が続いております。
私どもは過去数年に亘って世界初となる無人搬送車システムのISO安全規格の制定審議に参加してまいりましたが、ようやく昨年2月に発行に至りました。これを受けて国内でもJISの無人搬送車システム安全規格の改正原案の作成に着手いたします。
また、先ほどご紹介した次期総合物流施策大綱に対する意見・要望を行った他、各省庁に働きかけを行って、令和3年度予算概算要求の中で、物流の自動化等に資する施策の実施を実現することができました。
次に安全向上という視点では、先ほど申し上げたように「フォークリフト安全の日」イベントは中止となりましたが、今年の7月の開催に向け、厚生労働省や関係団体のご支援ご協力もいただきながら、準備を進めております。
昨年は11月までの累計で、フォークリフトに起因する死亡事故は27件と、令和元年の年間20件を上回っており、新型コロナの影響から、多くの企業で事業活動が制約されていたことを考えると、決して見逃すことができない件数であると考えております。あらためてフォークリフトによる安全活動の徹底を強く訴えてまいる所存です。
次に環境負荷の低減に関しましては、昨年10月の菅総理大臣の所信表明演説で、2020年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すという、新たな目標が打ち出されました。
産業車両業界では、かねてより電気車、さらには水素を用いる燃料電池車の開発と普及促進に取り組んでまいりました。また低炭素社会実行計画の着実な推進を進めており、2019年度の生産工程からのCO2排出量を、基準年度である2005年度実績から約半分まで減らすことができました。これからも低炭素製品によるお客様の事業所での低炭素化、そして産業車両製造工場での低炭素化の二本立てで、日本の目標達成に貢献してまいりたいと考えます。
また、長年実施している国際交流事業につきましては、こちらも先ほど申し上げた通り、第23回アライアンス業界首脳会議の開催は一年延期となりましたが、日本を含む世界7か国・地域の協力団体と共に作成している世界産業車両統計プログラム(WITS)は滞りなく実施されており、厳しい社会・経済環境の下での世界の産業車両市場の迅速な動向把握を継続しました。また、アライアンス会議では自由貿易を支持していくことで合意しておりますが、昨年はRCEP(日本、中国等14か国により構成される地域的な包括的経済連携)合意といった動きもあった一方で、保護貿易的な動きも見られました。海外の友好団体と共に、引き続き自由で公正な貿易体制を維持していけるよう、国際的な連携・協調をしっかり進めてまいります。
以上、私ども協会の昨年の活動の一端をご紹介させていただきました。
最後になりますが、今年は3月に愛知で国際物流総合展を開催する予定です。本来であれば1月に東京で開催される予定でしたが、東京オリンピック・パラリンピックの延期により、初めて愛知での開催となります。新型コロナウイルス感染防止対策をしっかりと行って、多くの皆様に安心・安全にご来場いただけるよう、共催6団体と共にしっかり準備を進めてまいります。
また、会期中には、昨年2月に開催して大変ご好評をいただきました「AGVSセミナー」を実施いたします。
さらに、10月には国際物流総合展イノベーションエキスポを東京で開催する予定です。この展示会は、隔年に開催されている、従来からの国際物流総合展に加えて、2020年2月に“物流の労働力不足の解決”への対応をメインテーマに掲げて、初めて開催されたものですが、今年は、この3月、10月の2つの展示会において、物流を取り巻く課題解決のみならず、日本の物流をさらに発展させるための、新たな製品、サービス、ソリューションを広く紹介してまいりますので、ぜひご期待下さい。
物流の世界でも、AIやIoT、ロボット等の新技術が加速的に導入・活用され、大きな変化の時代を迎えておりますので、産業車両業界としましても、製品の単なる提供にとどまらず、ソリューションの提案による課題解決へという業界のミッションの再定義化も図りながら、物流の発展に貢献してまいりたいと考えております。会員の皆様のご協力ご支援をよろしくお願い申し上げます。
そして経済産業省、国土交通省、環境省、厚生労働省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支援を賜わりますよう、お願い申し上げます。
本年こそは、世界が一丸となっての新型コロナ対策が効果を上げ、皆様にとってより安心して事業活動に邁進いただける1年となりますよう心より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。