・電気炉「EAF Quantum」の年間溶鋼生産能力は200 万トンで、さまざまな組成のスクラップとホットブリケットアイアン(HBI)の混合材を処理。
・消費電力、操業コスト、CO2 排出を削減。
・ツイン式真空脱ガスプラントにより処理能力を拡大。
・2 ストランド式連続スラブ鋳造機の生産能力は年間200 万トン、最大340 万トンまで拡大可能。
・プラントは生産品質管理システム(TPQC)を備えインダストリー4.0 に対応。
プライメタルズテクノロジーズ(Primetals Technologies、以下PT社)は12月3日、トルコの鉄鋼メーカー、トスヤル(Tosyali Demir Celik Sanayi A.S.)のイスケンデルンにおける鋼板グリーンフィールドプロジェクト向けに電気炉「EAF Quantum」、酸素注入機能を備えたツイン式真空脱ガスプラントおよび2 ストランド式スラブ鋳造機を受注したと発表した。
EAF Quantum はさまざまな組成や品質の鉄スクラップ、ホットブリケットアイアン(HBI)、銑鉄などを処理する。EAF Quantum の消費電力は主にスクラップの予熱により大幅に削減されている。また、スラグレス高機能出鋼システム(FAST )、連続スラグ発泡、平坦槽運転などのEAF Quantum の他の特徴も省電力に役立っている。これにより、操業コストとCO2 排出量も削減される。EAF Quantum は生産性が高く、電源遮断時間の大幅な短縮が可能となる。ツイン式真空脱ガスプラントは、処理能力と鉄鋼品質を向上させ、トスヤルの製品群を拡充する。
トスヤルのプラントでは、酸素注入機能により、ULC 鋼から高炭素をはじめ、包晶鋼、API 鋼、二相鋼、さらに高張力低合金鋼などの鋼種の生産が可能になる。プラントは生産品質管理システム(TPQC)を備えており、インダストリー4.0 に対応する。2 ストランド式連続スラブ鋳造機により、年間200 万トン(最大340 万トンまで拡大可能)のスラブ生産が可能になり、また幅広い鋼種の処理が可能になる。この新しい設備は、2022 年末までに稼働開始予定。
Tosyali Demir Celik A.S.はトスヤルホールディングスの一員であり、トルコのオスマニエにあるTOSCELIK 鉄鋼プラントと、アルジェリアにある直接還元鉄(DRI)溶鋼プラントTosyalı IronSteel Industry Algerie をすでに操業している。同社では圧延機も操業しており、溶接管および鋼板製品の市場で地位を確立している。トスヤルホールディングスは、既存の下流設備においてスラブのような半製品の生産能力を高めるため、ハタイ県イスケンデルンに新たな施設の建設を決定した。
PT社は、この新しい溶鋼設備プロジェクトの第1 期工事として、150 トンEAF Quantum および150 トン真空酸素注入脱ガスプラントを納入し、機械設備一式と電気プロセス設備ならびに自動化技術として、自動スクラップヤード管理機能、自動装入プロセス、自動ランス酸素吹き込み装置と砂充填設備に加え、レベル2 オートメーションも納入する。
PT社が開発したEAF Quantum は、実績あるシャフト炉技術と革新的なスクラップ装入プロセス、高効率予熱システム、新傾動方式を有する下部容器、そして最適化された溶解システムを組み合わせたもので、出鋼間隔の大幅な短縮を実現する。従来の電気炉に比べ消費電力が大幅に抑えられ、電極および酸素消費量低減と相まって、約20%の処理コストの削減が可能。全体のCO2 排出量も従来の電気炉と比較すると最大で30%削減できる。最新の自動排ガス制御を備えた除塵システムは、環境要求事項のすべてに適合していている。
このスラブ鋳造機の生産量は年間200 万トン(最大340 万トンまで拡大可能)になる。鋳造機の湾曲半径は10 メートルで、厚さ225 ミリメートル、幅900~1,800 ミリメートルのスラブを生産する。最高鋳造速度は毎分1.6 メートル。このプラントでは、超低炭素鋼から高炭素鋼、包晶鋼およびHSLA 鋼、API 鋼まで鋳造する。直線カセット式システム「Smart Mold(スマートモールド)」が「Mold Expert(モールドエキスパート、湯もれ自動検知システム)、自動スラブ幅調節用の「DynaWidth(ダイナウィドゥス)、鋳型オシレーター機能「DynaFlex(ダイナフレックス)」とともに装備される。「自動開始」鋳造機能および自動バルジング変形抑制機能を備えた鋳型内湯面レベル制御システム「LevCon(レブコン)」と、Mold Expert オンライン湯もれ自動予知システムも実装される。ストランドガイドシステムには、ベンダー、「SmartSegments(スマートセグメント)」、I-Star (アイ-スター)ローラーが使用される。
「Dynacs 3D(ダイナックス3D)」二次冷却システムにより、ストランド全体の温度分布が動的に算出および制御される。「DynaGap Soft Reduction 3D(ダイナギャップソフトレダクション3D)」はスラブの内部品質を改善する。ロール間ギャップが、Dynacs の算出値に基づき、最終凝固中に動的に調整される。これにより、ストランド中心部の偏析を最小限にする。