損益面では、営業損益は、資源・エネルギー・環境で、前年同期の採算性低下が概ね収束してきたことにより黒字に転換したことに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要の急減に応じた生産体制の見直しやリソースのシフト、固定費の削減に取り組んできたが、前述の民間向け航空エンジンの減収などの影響が大きく、166億円悪化し、61億円の損失となった(前年同期105億円の黒字)。経常損益は、為替差損益の悪化などにより赤字幅が拡大し、100億円の損失となり、親会社株主に帰属する四半期純損益は、95億円の損失となった。
4~9月期における国内経済は、社会全体で新型コロナウイルス感染拡大の防止策を講じつつ、社会・経済活動を段階的に再開したことにより、生産や輸出関連を中心に持ち直しの動きがみられるが、企業の収益は大幅な減少が続いており、依然として極めて厳しい状況にある。また、世界経済については、中国のみならず、米国や欧州でも景気は持ち直しの兆しがみられるが、今後の感染症の動向や金融資本市場の変動、米国の大統領選挙の結果の影響、さらに、長期化する米中の政治、経済の対立に加えて、地政学リスクなども引き続き注視する必要がある。
このような事業環境下において、IHIグループの2021年3月期第2四半期連結累計期間(4~9月)の業績は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受ける結果となった。
■新型コロナウイルス感染拡大の影響
また、国際航空運送協会(IATA)の需要予測においては、2019年の水準への回復は2024年となっている。IHIグループにおいては、事業パートナーから得た情報等も鑑み、足下では燃費性能の高い中小型の新製エンジン販売台数やスペアパーツ販売は底を打ち、緩やかな回復基調が見られるものの、全体として完全な回復には数年の期間を要すると見込んでいる。
車両過給機においては、中国では、経済活動の再開を受けて、自動車産業の低迷脱却の動きが進み、販売台数は増加に転じている。さらに、米国や欧州でも、感染の再拡大に伴う都市封鎖などの影響が懸念されるものの、5月中旬から自動車会社の工場稼働が再開されたことにより、販売台数は徐々に回復している。熱・表面処理においては、主に欧州の自動車関連需要の回復の遅れにより、自動車部品向けの受託加工サービス等の売上の減少が続いている。
このような状況を踏まえて、IHIグループとしては、新型コロナウイルス感染拡大の影響への対策として、設備投資・研究開発費等の一時凍結・抑制や、総費用・固定費の圧縮、成長分野・ライフサイクル事業への機動的な人材リソースのシフトなどの取り組みを進めており、今後の事業環境や需要回復の状況に応じて柔軟に対応していく。
加えて、資金需要に関しては、手元の現金及び現金同等物だけでなく、主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を準備することで、十分な手元流動性を確保した上で、保有資産の売却の検討も行っている。
また、IHIグループは、2019年度を初年度とする中期経営計画「グループ経営方針2019」の下、社会と顧客の課題に真正面から取り組み、新たな価値を創造する企業への変革を進めてきた。今回の新型コロナウイルス感染拡大は、社会・経済の変貌や価値観の変化を加速させており、IHIグループを取り巻く環境も急激に変化している。この環境変化のスピードに対応すべく、「グループ経営方針2019」で定めた基本コンセプトを継承しつつ、2022年度までの期間を環境変化に即した事業変革への準備・移行期間と位置づけ、「プロジェクトChange」という取り組みを開始する。
「プロジェクトChange」では、社会課題起点で事業を定義した上で、社会や顧客への提供価値向上に資する新たな中核事業を創出し、持続可能な事業ポートフォリオへの変革を推進させていく。具体的には、以下の取り組みを確実に実行していく。
① 成長軌道への回帰
・収益基盤のさらなる強化
・ライフサイクルビジネスの拡大
② 環境に打ち勝つ事業体質への変革
・事業ポートフォリオに沿った人材の流動化と最適配置
・多様な人材が活躍できる環境づくり
・リモートとオフィスを組み合わせた新たな働き方
③ 財務戦略
・キャッシュ創出力の強化
・事業ポートフォリオの転換を加速させるための資金の最適配分
・財務健全性の確保
④ 成長事業の創出
・成長事業(航空輸送システム、カーボンソリューション、保全・防災・減災)の再定義
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
景気は持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染拡大が収束し、本格的に回復するまでには時間を要することが予想される。また、長期化する米中の政治、経済の対立などもあり、世界経済は先行き不安定な状況が見込まれ、引き続き留意が必要である。
通期の連結業績予想については、11月10日「2021年3月期通期連結業績予想の修正および配当予想の修正に関するお知らせ」において、現時点で把握できる情報に基づき、一定の前提を置いた業績予想を公表している。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、民間向け航空エンジンは大幅に減収・減益となる見通し。また、「プロジェクトChange」に基づいた事業ポートフォリオ変革への投資原資を確保するために保有資産の売却を検討しており、その効果として固定資産売却益を見通しに織り込んだ。
この結果、売上収益は1兆1,500億円、営業利益は200億円、税引前利益は100億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は10億円になる見通し。
なお、通期の連結業績予想は国際財務報告基準(IFRS)に基づいて算出している。
(参考値)日本基準ベースでの連結業績予想売上高1兆1,500億円 営業利益80億円 経常利益△50億円 親会社株主に帰属する当期純利益0億円。
業績予想の前提となる、第3四半期連結会計期間以降の為替水準については、105円/USドル、120円/ユーロとしている。
また、IHIは、安定的に配当を実施することを基本としつつ、配当金額については、企業価値の向上のための投資と自己資本の充実・強化などを総合的に勘案したうえで、連結配当性向30%程度を目安として決定することとしている。しかし、第2四半期の剰余金の配当に加えて、2021年3月期の期末の剰余金の配当予想についても、当期の業績予想の利益水準に鑑み、無配とする。