・建機用フィルタは15.9%減もアクシーやヘルスケア事業が貢献
売上高については、建機用フィルタ事業において、15.9%の減収となった一方で、エアフィルタ事業として前第2四半期連結会計期間末より取り込んでいる㈱アクシーの業績貢献及び新たな事業としてヘルスケア事業の業績貢献により、全体で12.9%の増収となった。
営業損失については、建機用フィルタ事業における売上高の減少、航空運賃の一時的な発生等の影響により全体で4億38百万円の減益となった。経常損失については、営業利益の減少により3億47百万円の減益となった。親会社株主に帰属する四半期純損失については、経常利益の減少及び2019年8月に子会社化した㈱アクシーの本社工場の移転費用の発生等により3億39百万円の減益となった。
■経営成績に関する説明
4~9月期における世界経済は、新型コロナウィルスの感染拡大により停滞していた各国の経済活動が再開に向けた動きを見せる中、再び感染拡大の第2波、第3波の兆候が見られるなど、依然として先行きの見通せない不透明な状況が続いている。
同社グループの主力事業である建機用フィルタ事業における建設機械市場は、新型コロナウィルスの影響により停滞していた主要得意先各社の生産活動は回復傾向にあるものの、日本、米国、欧州、アジア市場において足元の需要は減少した。
一方、中国では、主要得意先各社の市場占有率が大幅に縮小し、中国系建機メーカーの市場占有率拡大が継続する中、経済活動の再開が本格化し、産業補助金拡大による政府主導の投資促進策や消費刺激策の効果等もあり、油圧ショベルの新車販売台数は対前年比で大幅な増加を記録するなど、需要は大幅に増加した。中国市場は、今後も公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2021年度以降に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定され、引き続き需要の増加が見込まれる。
このような環境の中、第2四半期(4~9月)において、同社グループは、既存ビジネスである建機用フィルタ事業は、油圧ショベルの作動油回路用リターンフィルタ製品を中心に、新素材やIoT技術を活かした製品ラインナップの充実を図り、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、世界最大の建機市場である中国市場では、中国系建機メーカーへのリターンフィルタ製品を主軸とした製品の新規採用に向けた取り組みを強化しており、その採用実績は増加している。また、もう一つの大市場である北米市場においては、主要製品であるリターンフィルタ製品に加え、燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規採用活動についても大きな進展を見せている。
更には、独自開発した合成高分子系ナノファイバーを使用したロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を行っている。
このように、同社の中国系建機メーカーへのシェア拡大と日米欧を中心とした既存主要得意先への製品の採用拡大に向けた取り組みは着実な進捗を見せており、建機用フィルタビジネスに安定化と更なる成長が見込まれるとともに、高付加価値製品の普及により産業廃棄物の低減を実現し、地球環境の保全に貢献できると考えている。
また、エアフィルタ事業においては、アフターコロナの世界を見据え、エアフィルタを取り巻く市場環境は今後大きく成長するものと捉えており、ヤマシンフィルタの合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を活用した新製品の開発を継続し、新規事業領域への参入を積極的に進めている。
具体的には、低圧損で高捕集率のナノファイバー製エアフィルタを製品化し、オフィスビルや工場、鉄道車両、家電等への採用に向けた取り組みが進展している。これらの新製品の普及により、使用電力の低減によるCO2削減に加え、オフィスビルをはじめとした多くの人々が働く環境にきれいな空気を提供することにより、健康被害リスクの低減、地球環境の保全に貢献できると考えている。
更に、ヘルスケア事業においては、新型コロナウィルス感染者数の継続的な増加に伴う恒常的なマスク需要増大を背景として国内マスクの市場規模は大幅に拡大しており、外国製マスクと比較して性能面や安全性・品質で勝る国産マスクの需要は引き続き増加が見込まれる。このような市場環境の中、ヤマシンフィルタグループは、ヤマシンフィルタ独自技術である合成高分子系ナノファイバーを活用したマスク並びに取替用インナーシートを製品化し、2020年5月からヤマシンフィルタのECサイトにおいて販売開始し、同年9月からは主要ドラッグストア等を通じ販売を暫時開始した。フィルタ専門メーカーであるヤマシンフィルタのマスク製品は市場に好評をもって受け入れられ、グループの業績へ与える重要性が高まった結果、第2四半期よりヘルスケア事業としてセグメント情報を開示するに至った。
また、70年に及ぶフィルタの専門メーカーとして培ってきた技術を活かし、新たにNIOSH(米国労働安全衛生研究所)の規格の一つであるN95マスク(注1)の性能基準である、①フィルタ性能-捕集効率95%以上(注2)、②密閉性-装着中の顔とマスクの密着率90%以上(注2)、③通気性-長時間装着での呼吸のし易さ、というマスクに必要な3大性能を実現した医療用レベルの性能を実現した一般消費者向けマスク「Zexeed」を開発し、ヤマシンフィルタのフラッグシップモデルとして2020年10月より先行発売を開始し、11月より全国販売していく。
同社では今後、医療現場等で必要とされる更なる高機能マスクの認証取得(日米欧の各規格(注3))に向けた取り組みを加速させるとともに、他のマスクメーカーとは異なる高機能なマスク開発に邁進し、医療用の防塵マスクを含めた製品ラインナップの拡大やコンビニエンスストアチェーン、大手通販等への販路の拡大を図り、ヤマシンフィルタオリジナルのマスクを普及させることにより、経済活動と感染拡大の抑制を両立させ、多くの皆様の健康被害リスクの低減に大きく寄与できると確信している。
(注1) N95マスク(Particulate Respirator Type N95)とは、アメリカ合衆国労働安全衛生 研究所(NIOSH)のN95規格をクリアし、認可された微粒子用マスクのこと
(注2) ヤマシンフィルタ調べ
(注3) 日本における国家検定規格(DS)、米国におけるNIOSH規格(N95)及び欧州におけるEN規格(FFP)
これらの取り組みに加え、前期より国内大手アパレルメーカー数社に対し、秋冬物衣料の中綿材として、「YAMASHIN Nano Filter ™ 」の量産供給を継続しており、軽量かつ薄くて暖かいという素材の優位性を訴求し、ヤマシンフィルタ新素材の採用が進展している。
今後、アパレル分野へのヤマシンフィルタ製品の供給が本格化することにより、動物愛護の観点からアパレルメーカー各社がESGへの取組みとして掲げている「脱ダウン」に大きく貢献できると考えている。
2020年9月には、サステナブルファイナンスとして、第三者割当による新株予約権の発行を決議した。本新株予約権は、調達する資金使途に関して「グリーンボンド原則(Green Bond Principles)2018」、「ソーシャルボンド原則(Social Bond Principles)2018」及び「サステナビリティボンド・ガイドライン(SustainabilityBond Guideline)」の特性に従うものである旨、第三者評価機関である㈱日本総合研究所から、セカンドパーティ・オピニオンを取得しており、本オピニオンでは、「SDGs(Sustainable Development Goals)」の目標及びターゲットへの貢献についても評価されている。
このように、ヤマシンフィルタグループは、独自開発の合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を基に、建機用油圧フィルタ並びにエアフィルタの2つの事業に加えてヘルスケア及びアパレル等、新規事業の確立を図ることで、総合フィルタメーカーとしての事業ポートフォリオを構築していく。それにより中期的持続的な事業成長とESGへの積極的な取り組みを両立させ、企業価値の向上を図るとともに、持続可能な経済・社会生活の実現に向けた企業貢献を積極的に行っていく。
第2四半期決算説明資料(2020年11月20日追加)