・医薬品の受託製造を行う「医療事業」を拡大
積水化学工業は8月28日、メディカル事業の国内外主力2工場に総額約60億円を投じ、生産設備を増強することを決定したと発表した。積水化学は、100%子会社の積水メディカルを中核として、「検査事業」と「医療事業(医薬・創薬支援・酵素)」の2事業を軸にライフサイエンス分野の拡大に注力しており、今回の増強により、各種医薬品の原料・原薬の受託製造を行う体制を整え、「医療事業」を強化する。
■背景
世界の医薬品市場は100兆円を超えており、中国や米国が中心となり毎年5%前後の市場拡大を続けている。その一方で医薬品に対するニーズの多様化により、従来の低分子医薬品に加え、ペプチド(中分子)・タンパク質医薬(高分子)・細胞医薬・再生医療と医薬品による治療手段の多様化が急速に進んでいる。
積水化学グループではこれまで、日本の積水メディカルで低分子医薬品向け原薬等、海外のSEKISUI DIAGNOSTICS (UK) LTD.社で診断薬向け酵素などの製造・販売を行ってきたが、昨今の医薬品市場の多様化・高コスト化に対応するためには、幅広い領域での原薬等供給体制を整えることによる医薬品業界への貢献が重要であると考えている。
■増強の内容と狙い
積水メディカルの医療事業部では、医薬品市場の多様化に対応すべく、広範囲での医薬品に向けた原料・原薬・中間体の開発・製造・供給体制整備を進めている。
今回の生産設備投資によって、岩手工場は低分子医薬品向け原薬・中間体の現在比25%増産が可能となる。また岩手工場は同時にペプチド(中分子)医薬品原料の生産体制増強を進めている。
英国工場では微生物タンパク質培養・精製施設の新設により、タンパク質医薬(高分子)向け原料のCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization、医薬品における研究開発・製造受託)に向けた体制が整い、両工場合わせて低分子から高分子まですべての医薬品製造領域での受託製造ができることとなる。
また、両工場共に医薬品の製造および品質管理基準であるGMP(Good Manufacturing Practice:原料を含む医薬品の製造環境に関する規制)に準拠した生産設備となり、医薬品原料・原薬の開発・製造が可能になる。
メディカル事業において、当該事業をコア戦略領域の一つと位置付けており、今後も大きな成長が見込まれている医薬品市場に向けた生産供給体制の強化ならびに研究開発・品質管理・サービス体制の強化に努め、製薬会社を中心とした顧客のニーズに応えていく。
<設備投資の概要>
(1)積水メディカル 岩手工場
所在地:岩手県八幡平市
投資額:約40億円
投資内容:中間体製造棟の新規建設
着工:2020年8月
稼働時期:2023年3月
(2)SEKISUI DIAGNOSTICS (UK) LTD. (英国工場)
所在地:英ケント州
投資額:約20億円
投資内容:微生物タンパク質培養・精製室の新設
着工:2020年7月
稼働時期:2022年9月
<参考① 積水メディカルの概要>
所在地:東京都中央区日本橋2丁目1番3号 アーバンネット日本橋二丁目ビル
代表者:代表取締役社長 久保 肇
事業内容:検査事業、医薬事業、創薬支援事業
資本金:12億75百万円
設立:2008年4月1日 (前身の第一化学薬品株式会社は1947年7月10日設立)
株主:積水化学100%
年商:約470億円(2020年3月期:単体)
<参考② SEKISUI DIAGNOSTICS (UK) LTD.の概要>
所在地:Liphook way, Allington, Maidstone, Kent, ME16 OLQ, United Kingdom
代表者:President Robert Schruender
事業内容:医薬(酵素)事業、検査事業
資本金:36百万英ポンド
設立:2011年2月1日
株主:積水化学100%
年商:約54億円(2020年3月期:単体)