■経営成績の概況
2019年度における世界経済は、新型コロナウィルスの感染拡大による各国の経済活動の停滞により、景気後退の長期化が懸念されている。また、グループの主力事業である建機用フィルタ事業における建設機械市場も各国での緊急事態宣言の発令に伴うロックダウンの影響等により、主要得意先各社の生産活動やサプライチェーンに大きな影響が生じている。
一方、中国では、主要得意先各社の市場占有率が大幅に縮小する中、中国系建機メーカーの市場占有率拡大が継続し、油圧ショベルの新車販売台数は過去最高を記録するなど需要は全体で増加した。このような市場環境の中、新型コロナウィルスの感染拡大により停滞していた経済活動が2020年3月以降回復の兆しを見せており、今後、政府主導による公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2021年度中に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定されることから引き続き需要の増加が見込まれる。
既存ビジネスである建機用フィルタ事業においては、強みである油圧ショベルの作動油回路用フィルタ製品を主軸に、新素材やIoT技術を活かしたフィルタ製品のラインナップの充実を図り、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、世界最大の建機市場である中国市場においては、中国系建機メーカーへのリターンフィルタを主軸としたフィルタ製品の新規採用に向けた取り組みを強化しており、その採用実績は増加している。また、もう一つの大市場である北米市場においては、主要製品であるリターンフィルタ製品に加え、燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規採用活動についても大きな進展を見せている。更には、独自開発した合成高分子系ナノファイバーを使用したロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を実施している。このように、中国系建機メーカーへのシェア拡大と日米欧を中心とした既存主要得意先への製品の採用拡大に向けた取り組みは着実な進捗を見せており、来期以降の建機用フィルタビジネスに更なる成長が見込まれる。
また、エアフィルタ事業においては、ヤマシンフィルタの合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を活用した新製品の開発による新規事業領域への参入を積極的に進めている。具体的には、低圧損で高捕集率のナノファイバー製エアフィルタを製品化し、オフィスビルや工場、更には家電等への普及に向けた取り組みを強化している。
これらの新製品が普及することにより、使用電力の低減によるCO2削減が可能となり、地球環境の保全に貢献できると考えている。
更には、ヤマシンフィルタグループは、国内大手アパレルメーカー数社に対し、秋冬物衣料の中綿材として、「YAMASHIN NanoFilterTM」の量産供給を開始し、引き続き次期シーズンに向けた新素材の提案活動等を積極的に展開しているほか、今回の新型コロナウィルスの感染拡大に伴うマスク不足の問題を受け、ヤマシンフィルタの合成高分子系ナノファイバー技術を活用し、マスク並びに取替用インナーシートを製品化した。
ヤマシンフィルタのマスク及び取替用インナーシートは独自の量産化技術を用いた3層構造により、医療現場等で使用されるN95マスクと同等の高い捕集性能を有し、かつ、性能持続性を実現した製品であり、このマスクや取替用シートを使用することで医療従事者ほか多くの皆様の健康被害リスクの低減に大きく寄与できると確信している。今後、国内外への供給量の拡大に向け、量産並びに供給体制の整備を進めていく。
■今後の見通し
2021年3月期の世界経済は、一部地域で経済活動再開の動きがみられるものの、新型コロナウィルスの感染拡大の影響が各国の経済活動をさらに下振れさせるリスクも懸念され、その収束の見通しについても先行き不透明感が増している。
建設機械市場の需要見通しは、世界最大の市場である中国においては、今後、政府主導による公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2021年度中に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定されることから引き続き需要の増加が見込まれる。
しかし、日本、北米、欧州、アジア市場においては、いずれも先行き不透明な状況が継続しており、需要の回復にはある程度の時間を要することが想定されることから、保守的な計画を前提に見通しを作成している。
2021年3月期連結業績予想については、以上の状況を踏まえ、売上高130億円(前期比2.6%増)、営業利益5億9,000万円(同24.1%減)、経常利益5億6,000万円(同7.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3億4,000万円(同44.1%減)とした。
業績見通しにおける為替レートは、1米ドル108円、1ユーロ121円を前提としている。