今年1月には、中期経営計画より新たにESGの経営目標の1つに掲げている外部評価として、温室効果ガス排出量の削減や水資源や森林を保護することを推進する国際的な非営利団体「CDP」の評価において、引き続き「気候変動」Aリスト企業と認定された。
コマツは、2021年の創立100周年とその先の成長を目指し、2022年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – FORWARD Together for Sustainable Growth」において、①イノベーションによる価値創造、②事業改革による成長戦略、③成長のための構造改革を成長戦略3本柱として掲げ、収益向上とESGの課題解決の好循環による持続的成長を目指し、活動を進めている。
■部門別の概況
[建設機械・車両]
中期経営計画における成長戦略3本柱の重点活動を推進し、安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場の実現に向けて取り組んだ。今年1月よりバッテリー駆動式ミニショベル「PC30E-5」をレンタル車として国内市場へ導入した。また、人との衝突事故発生の抑制に寄与する「KomVision人検知衝突軽減システム」を油圧ショベルに業界で初めて標準装備し、国内市場に導入開始するなど、幅広い顧客の建設現場の安全性向上の実現に向けて取り組んだ。
新型コロナウイルス感染拡大などの影響に対して、生産・調達部門においては、車体や部品のグローバルクロスソーシング、グローバル調達をより強化する代替調達や在庫再配置に取り組み、営業・サービス部門においては、供給ルートやシフト体制の見直しなどの対策を行うことにより、顧客への製品・部品・サービスの継続的な供給に努めた。
■地域別の概況
<日本> 日本では、2017年9月に施行された新排出ガス規制に伴う駆け込み需要の反動減からの回復やインフラ関連需要が堅調に推移したことなどにより、売上げは前期並みとなった。
<米州> 北米では、レンタル向け一般建機を中心に需要が堅調であったものの、代理店在庫の調整を進めたことや、新型コロナウイルス感染拡大の影響などもあり、売上げは前期を下回った。中南米では、チリにおける一般建機及び鉱山機械の需要が堅調であったものの、経済情勢悪化が続くアルゼンチンやメキシコにおいて需要が減少したことから、売上げは前期を下回った。
<欧州・CIS> 欧州では、主要市場である英国での需要が減少したことや第4四半期より新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、第3四半期までのフランス、ドイツなどでの需要が堅調であったことから、売上げは前期を上回った。
CISでは、石炭向けの鉱山機械需要が減少したことなどにより、売上げは前期を下回った。
<中国> 中国では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今年2月の春節(旧正月)後の需要が大幅に減少したことに加え、国産メーカーの販売比率の上昇により、売上げは前期を下回った。
<アジア・オセアニア> アジアでは、燃料炭価格の低迷に伴い、最大市場であるインドネシアでの鉱山機械の需要が減少したことに加え、各国の一般建機の需要が低調に推移したことや新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたことにより、売上げは前期を大幅に下回った。
オセアニアでは、鉱山機械の部品・サービス売上げを着実に取り込んだものの、一般建機の売上げが減少したことなどにより、売上げは前期を下回った。
<中近東・アフリカ> 中近東では、UAEなどにおける一般建機の需要が堅調に推移したことにより、売上げは前期を上回った。
アフリカでは、南部アフリカ地域での一般建機の売上げは前期並みであったものの、その他地域での需要が低調に推移したことなどにより、売上げは前期を下回った。
[リテールファイナンス]
リテールファイナンス部門では、北米、欧州などでの資産増加効果に伴い、売上高は709億円(前期比11.5%増)となった。セグメント利益は、中国での債権回収に関する引当金戻し益がなくなったことなどもあり、126億円(前期比27.6%減)となった。
[産業機械他]
産業機械他部門では、自動車業界向けの鍛圧機械及び工作機械は新型コロナウイルスの影響も含め需要が減少したことに加え、半導体市場向けエキシマレーザー関連製品の需要減少もあり、売上高は1,775億円(前期比12.6%減)、セグメント利益は137億円(前期比26.5%減)となった。
コマツ産機㈱は、板金機械「プレスブレーキ」の省力化を実現するベンディングサポートの販売を開始した。ギガフォトン㈱では、半導体リソグラフィ以外の新分野向け「GIGANEXシリーズ」の新商品として「微細アブレーションビア加工用KrFレーザー G300K」の販売を今年3月より開始し、本格参入に向けて取り組んだ。
■次期見通し
世界各国に拡大した新型コロナウイルス感染の終息が見通せない中、2021年3月期の通期連結業績予想については、適正かつ合理的な算定が困難であることから、現時点では未定とし、今後算定が可能となった時点で速やかに開示する。
足元では、建設・鉱山機械の本体需要は、2019年度第4四半期より引き続いて新型コロナウイルスの影響により低調に推移している。部品・サービスの販売については、建設・鉱山、農林業、物流などが、社会インフラを支える事業(Essential Business)として継続して稼働していることや一部の国では感染拡大防止の規制が緩和され稼働を再開した現場があり、部品・サービスの提供を継続している。引き続き、機械稼働管理システム「KOMTRAX」から得られる車両の稼働データなどを注意深く見ていく。
短期・中期的にも、世界経済の先行き不透明感が強まり市場環境は見通しにくい状況となっている。建設機械・車両部門においては、各国の経済情勢や資源価格、為替変動などによる顧客の投資動向、各国のインフラ・住宅投資等が与える需要への影響を良く見極めていく。産業機械他部門においては、自動車業界向けの鍛圧機械・工作機械は足元の受注状況が悪化傾向にあり、今後の設備投資動向を注視していく。
中期経営計画「DANTOTSU Value – FORWARD Together for Sustainable Growth」の2カ年目となる2021年3月期においても、外部環境の大きな変化にも機動的に対応し、費用対効果と戦略的価値を見極めながら優先順位をつけ、成長戦略3本柱に基づく重点活動を推進することで、持続的成長を目指していく。
コマツは、「お客さま、お取引先さま、地域社会の皆さま、社員とその家族の安全と健康を第一として、各国政府の方針に基づき、新型コロナウイルス感染拡大防止に努めています。社会インフラを支える事業(Essential Business)に従事する顧客への責任を果たすため、今後も感染防止策を徹底したうえで、顧客への製品・部品・サービスの継続的な供給を行っていきます」としている。