■経営成績の概況
日本経済も、年度前半から米中貿易摩擦や、消費増税による消費減衰などの影響により景気は低下傾向であったところ、新型コロナウイルスの影響により、主要国同様株価の下落が起きた他、社会生活や消費行動にも制約が生じており、今後の推移を注視する必要がある。
このような状況のなかで、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を目指し、「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、ジェイテクトグループ一丸となって取り組みを進めてきた。
■事業の概況
駆動事業は、各製品の原価低減活動の強化、効率的なグローバル生産供給体制の構築を進めるとともに、自動車メーカーの車両企画に合わせ最適な車両運動性能を実現するドライブラインシステムサプライヤーとして、駆動システム開発力の強化に取り組んできたが、2020年1月には、デファレンシャルギヤおよびデファレンシャルアッセンブリー(以下、デフ)の開発・生産を行う豊精密工業株式会社の全株式を取得した。ジェイテクトのトルクコントロールデバイスとデフの一体化や、四輪駆動システムとしての最適化を追求したユニットの軽量化・小型化を実現することで、世界中の顧客に、新たな付加価値を提供していく。
軸受(ベアリング)事業は、事業環境の厳しさが増すなかでも競争力を維持、向上させていくために、事業体質の強化に重点を置き、生産ラインの自動化・無人化等、生産性向上の取り組みを進めてきたが、2019年度は、北米におけるテーパーローラーベアリング(以下、TRB)市場の競争激化に対応するため、北米のTRB生産拠点を3拠点から2拠点に統合・再編し、供給体制を最適化した。一方、製品開発分野では、工作機械の主軸用として回転精度の更なる高度化に対応できる超高精度軸受をグループ会社であるダイベア株式会社と共同開発し、新ブランド「PRECILENCE」として販売開始した。
工作機械・メカトロ事業は、モノづくりイノベーションカンパニーとして、工作機械、IoEソリューション、ライフサイクルサポートなどあらゆる価値を提供してきた。労働人口減少、EV化などの社会変化と5G・AI化などの進展に対し、搬送と知能化・計測システムをビルトインした自律型研削システムを提案。ギヤスカイビングセンタを工程集約できる複合ギヤ生産セルに進化。人の成長をサポートするJTEKT IoE Solutionを充実。5軸マシニングセンタFH630SX-5Aは高精度で高効率な切削能力が評価され、日刊工業新聞第62回十大新製品賞を受賞した。更に、サポートパッケージの充実で、長く使ってもらうライフサイクルでの価値提供を追求してきた。また、顧客データを活用し、災害時にいち早くサービス員を派遣するなど復旧支援の迅速化に取り組んだ。
ジェイテクトは、取り巻く環境の変化を先読みして持続的に成長するために、少子高齢化や環境・エネルギー問題といった将来の社会課題に対するニーズと、既存の事業で培った技術やノウハウといったシーズを掛け合わせることで、新規事業領域の創出に取り組んでおり、その一環として2013年から開発してきた高耐熱リチウムイオンキャパシタについて、2019年10月に量産を開始した。高耐熱リチウムイオンキャパシタは特許技術により世界Only Oneの動作温度範囲-40~85℃を実現し、冷却装置無しで車室内に搭載可能という特徴を持っている。車両電源が失陥した場合においてもEPS動作が継続するバックアップ電源として活用することができるため、ステア・バイ・ワイヤシステムの安全性向上、高い安全性が求められる高度自動運転車の実現に貢献する他、発電装置の機能安定化、電源回生、メイン電源など様々な用途で、あらゆる産業のエネルギー効率の向上、環境性の向上などに貢献できる製品として拡販を推進していく。
■セグメント業績
「機械器具部品」については米中貿易摩擦の激化や中国の景気減速に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ステアリング、駆動、軸受の各事業とも大幅に需要が減少したこと等により、売上高は1兆2,570億75百万円と前期に比べ887億46百万円(6.6%)の減収となった。営業利益については、原価低減の効果はあるものの減収の影響が大きく、217億76百万円と前期に比べ273億1百万円(55.6%)の減益となった。
「工作機械」については、日本やアジアにおいて販売が減少したこと等により、売上高は1,614億94百万円と前期に比べ135億76百万円(7.8%)の減収、営業利益は、118億27百万円と前期に比べ50億17百万円(29.8%)の減益となった。
■今後の見通し
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により各国の経済活動が大幅に制限され、世界経済は深刻な状況に直面している。急激な景気減速に加えて、原油価格の低迷に歯止めがかからない中での主要産油国間の軋轢や、新興国の通貨価値の下落など、新たなリスクも顕在化してきている。また、中国や米国・欧州の一部などで経済再開に向けて出口を探る動きは見えるものの、世界的な感染拡大を食い止める抜本的な解決手段が見出せていない現状では、経済回復のシナリオを描くことは困難であり、今後の世界経済および日本経済の先行きは極めて不透明である。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により、ジェイテクトグループを含む多くの企業はその存亡をかけた生き残り戦略を遂行していく必要がある。次期の課題としては、無駄な贅肉をそぎ落とし、筋肉質の企業体質に生まれ変わることが出来るかに企業としての命運がかかっていると言っても過言ではない。具体的には、サプライチェーン全体での収益最大化を目指すとともに、各事業において全社目線での大胆な選択と集中による構造改革を迅速に推進し、リソーセスを成長分野に重点的に配分する。また、生産現場の無人化・省人化、間接部門の業務効率化などにより生産性の向上を図り、経済環境の回復が見込めない中でも利益を確保できる、スリムで強靭な事業基盤を構築していく。
さらに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大終結後の世界、人々のライフスタイルの変化を予測し、ジェイテクトの持つ独自の技術やノウハウから、真に顧客に喜んでもらえる製品・サービスを提供できるよう、高付加価値なNo. 1&Only One商品の開発を加速していく。
このような経営環境のなか、ジェイテクトグループは、より強力なリスクマネジメント体制を整備し、想定されるリスクに備えるとともに、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」の実現に向け、引き続き「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、ジェイテクトグループ一丸となって取り組みを進めていく。
次期の通期の連結業績については、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による影響を精査中であり、現時点では合理的な算定が困難であるため、未定。今後、連結業績予想の算定が可能となった時点で速やかに開示する。