■経営成績に関する説明
世界経済は、全体として緩やかな成長が継続しているものの、今後の米中貿易交渉及び英国・EU間の新たな貿易協定の交渉の行方や、新型肺炎の感染拡大が景気に及ぼす影響、中東情勢の動向など、依然として先行きは見通しにくく、世界景気の下振れリスクには十分な注視が必要である。国内経済は、設備投資の漸増などの影響を受けて緩やかに回復しているが、米中貿易摩擦の影響による企業業績の悪化や、消費増税による個人消費の落ち込みが顕在化しており、今後も注視が必要である。
利益面に関しては、エネルギー・環境プラント事業の増益はあったものの、精密機械・ロボット事業、モーターサイクル&エンジン事業などが減益となったことにより、営業利益、経常利益は減益となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は、経常利益の減益に加え、特別損失として事業撤退損を計上したことなどにより、減益となった。
■セグメント別業績概況
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては、厳しい防衛予算の中で一定程度の需要が存在している。民間航空機については旅客数の増加に伴って機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品が高水準を維持したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ354億円減少の2,451億円となった。
連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が増加したことなどにより、前年同期に比べ433億円増収の3,714億円となった。
営業利益は、増収があったものの、民間航空エンジン分担製造品の新規プログラム開発費償却負担増加などにより、前年同期並みの205億円となった。
<エネルギー・環境プラント事業>
エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、海外では資源開発や天然ガス関連投資が回復基調にあることに加え、アジアではエネルギーインフラ整備需要が継続している。また環境・省エネルギー投資意欲の向上などにより、分散型電源の需要が増加している。国内ではごみ焼却プラントや産業機械において老朽化設備等の更新需要が継続している。一方で分散型電源は、潜在的需要は大きいものの、電力自由化を睨んで投資計画が若干遅れ気味になっている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設の大規模改修工事などの受注があったものの、国内向けLNGタンクや、国内向けコンバインドサイクル発電プラントをはじめとするエネルギー製品の大型案件を受注した前年同期に比べ172億円減少の1,843億円となった。
連結売上高は、海外向け化学プラントの工事量増加はあったものの、エネルギー事業の減収などにより、前年同期に比べ65億円減収の1,623億円となった。
営業利益は、減収があったものの、海外向け化学プラントやエネルギー事業での採算改善などにより、前年同期に比べ84億円増益の130億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
ロボット市場向けでは、米中貿易摩擦の影響による中国市場での設備投資延期等により市況は厳しい状況が継続しているが、半導体向けロボットについては、台湾、韓国の大手半導体メーカーの投資再開により回復に転じており、中長期的には需要は着実に拡大していくと見ている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、建設機械市場向け油圧機器や各種ロボットの減少により、前年同期に比べ148億円減少の1,571億円となった。
連結売上高は、建設機械市場向け油圧機器や各種ロボットの減少により、前年同期に比べ72億円減収の1,470億円となった。
営業利益は、減収に加え、油圧機器の資材費、研究開発費の増加や、中国でのロボット生産台数の減少などにより、前年同期に比べ97億円減益の52億円となった。
<船舶海洋事業>
船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要の顕在化並びにLNG開発プロジェクトの具体化が進む一方で、海運マーケットの長期低迷、韓国政府による造船業支援政策の継続などにより、依然として厳しい状況にある。
このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG運搬船の受注はあったものの、防衛省向け潜水艦を受注した前年同期に比べ336億円減少の316億円となった。
連結売上高は、LNG運搬船及びLPG運搬船の工事量減少により、前年同期に比べ100億円減収の530億円となった。
営業損益は、新造船の減収及び操業差損の発生などにより、前年同期に比べ35億円悪化して7億円の営業損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、国内については老朽化車両の更新需要が安定的に存在している。海外については、米国では注力市場であるニューヨーク地区をはじめ新造・更新需要が見込まれており、またアジアでは日本政府によるインフラ輸出促進に伴って新興国向け案件の形成が計画されている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向け地下鉄車両の受注があったことにより、前年同期に比べ115億円増加の912億円となった。
連結売上高は、海外向け部品の減少はあったものの、国内向けや米国向け車両が増加したことにより、前年同期に比べ113億円増収の974億円となった。
営業損益は、一部案件におけるコスト変動はあったものの、増収に加え、前年同期に発生した米国向け案件での一時的費用の減少などにより、前年同期に比べ33億円改善して31億円の営業損失となった。
<モーターサイクル&エンジン事業>
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、二輪車では主に欧州において市場の緩やかな成長が持続している一方、一部新興国は市場が軟調である。四輪車、パーソナルウォータークラフトでは主に北米において市場が安定した成長を続けている。汎用エンジン市場では天候不順や米中貿易摩擦の影響を受け一時的に成長が鈍化傾向にある。
このような経営環境の中で、連結売上高は、米国向け四輪車の増加により、前年同期に比べ38億円増収の2,301億円となった。
営業損益は、増収があったものの、前年同期に比べ対ユーロや対米ドルを中心に為替レートが円高で推移したこと、およびタイバーツ高により製造コストが増加したことなどにより、前年同期に比べ44億円悪化して45億円の営業損失となった。
<その他事業>
連結売上高は、前年同期に比べ60億円増収の739億円となった。
営業利益は、前年同期並みの20億円となった。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2020年3月期の連結業績については、連結売上高は前回(10月31日)公表値を据え置いた。連結営業利益は、モーターサイクル&エンジン事業における四輪車リコールの影響、車両事業における米国向け案件の採算悪化が見込まれるものの、エネルギー・環境プラント事業における海外向け化学プラントの採算性向上、航空宇宙システム事業におけるコストダウンの進捗や民間航空エンジン分担製造品に関する売上情報入手の早期化の影響で好転が見込まれることから、営業利益は600億円となる見通しである。
連結経常利益ならびに親会社株主に帰属する当期純利益は前回公表値を据え置いた。連結受注高は、エネルギー・環境プラント事業、船舶海洋事業等で減少が見込まれることから、前回公表値から1,000億円減少の1兆5,500億円、ROICは4.8%、ROEは5.2%となる見通しである。