・2018年生産は7.3%増の1,234億元(約1兆9,400億円)
(生産と内需のデータ入り図表2点、約6,800字) また、2018年生産額実績は、前年比7.3%増の1,234億元(約1兆9,400億円)。うち、油圧は同7.7%増の621億元(約9,750億円)、空気圧は同8.3%増の248億元で(約3,890億円)だった。
これらの数値は、2019年10月に上海で開催されたPTC ASIA 2019のCHPSA雑誌の増刊号に、「2018年中国の油圧・空気圧・シール部品業界の発展と改報告」(特集)が掲載された。
以下、CHPSA(中国液圧気動密封件工業協会)特集号より抜粋
Seals Industry (2019)In Hydraulics Pneumatics and Seals China Market Development Report (2019 年10月15日:PTC ASIA 2019増刊号<P106-113>より)
油圧・空気圧・シール部品業界は、党の第十九回大会の精神を着実に実行しており、百年に一度あるかないかの大きな流動的情勢の中に身を置き、国内外の複雑で緊迫した情勢に直面している。習近平同志を核心とする党中央の強力な指導の下、党中央の決定した配置によって、新しい発展理念を堅持し、サプライサイドの構造的改革を堅持し、高品質への発展を進めるために、力を集中して、難関に挑み、油圧・空気圧・シール部品業界の安定した発展を促し、経済活動では安定成⾧の下で前進し、ブランド建設を絶えず強化し、自主イノベーション能力を次第に向上させ、科学技術成果を尽きることなく生ませ、主な予期目標を達成させるべく、全業界は“十三五”計画目標達成の自信に満ちている。
1.業界の経済活動状況
業界の一定規模以上企業の2018 年工業総生産額達成状況及び2019 の年予測。
- 2018 年、業界一定規模以上企業の工業総生産額達成状況
母機業界の発展のおかげで、2018 年の油圧・空気圧・シール部品業界は安定成⾧の下で前進しており、機械工業の成⾧率よりも高い成⾧を保っている。
概算統計によると、2018 年の油圧・空気圧・シール部品業界の達成した工業総生産額(以下、生産額)は1,234 億元で、前年同期比(以下、同比)7.3%の増加である。その内、油圧(液体動力を含む)業界の生産額は621 億元で、同比7.7%の増加。空気圧業界の生産額は248 億元で、同比8.3%の増加。シール業界の生産額は365 億元で、同比5.8%の増加である。
- 2019 年、業界一定規模以上企業の工業総生産額予測
油圧・空気圧・シール部品業界の生産額予測は1,320 億元で、同比7.0%の増加である。その内、油圧(液体動力を含む)業界の生産額予測は688 億元で、同比7.5%の増加。空気圧業界の生産額予測は268 億元で、同比8.1%の増加。シール業界の生産額予測は384 億元で、同比5.3%の増加である。
2.油圧・空気圧・シール部品業界製品の国内市場容量
概算統計によると、2018 年の油圧・空気圧・シール部品業界製品の国内市場容量は1,381 億元で、同比8.7%の増加である、サブ業界は次の通り:
油圧(液体動力を含む)業界の国内市場容量は734 億元で、同比9.8%の増加。空気圧業界の国内市場容量は273 億元で、同比9.6%の増加。シール業界の国内市場容量は374 億元で、同比5.9%の増加である。
3.業界発展の特徴
2018 年、油圧・空気圧・シール部品業界は、イノベーションの推進を重点とし、中国製造2025 発展戦略の導きの下、工業の基盤強化プロジェクトを推進力として、企業の技術改造を速めている。「油圧・空気圧・シール部品業界の“十三五”発展計画」の既定した発展構想と重点課題基づいて、国務院の「構造を調整し、転換を促して効果と利益を向上させる為の指導意見」を着実に実行し、転換方式と構造調整をより重要な位置に置いている。
業界の構造転換とグレードアップを速めたことで、産業構造の改善が得られ、一群のハイエンド油圧、液体動力、空気圧、シール製品が開発され、新しい生産技術の応用が広められ、ブランド建設にブレークスルー的進展が得られ、産業化が実現され、業界の国際化の役割がより向上され、業界の発展基盤を更に突き固めることができた。
- ブランド建設に進展が見られた。
企業の自主申告により、地方工業と情報化管轄部門及び工業経済聯合会、中央の企業推薦、業界協会の限定条件での論証、専門家の論証とネット上の公表などのプロセスを経て、第三回製造業種目別優勝企業と種目別優勝製品のリストを確定した。
第三回種目別優勝企業は68 社、種目別優勝製品は66 社、種目別優勝育成企業は26 社選ばれ、油圧業界では、江蘇恒立液圧股分有限公司(車両、建機シリーズ油圧シリンダ)が種目別優勝モデル企業に、メカニカル及びパッキンシール業界(中:機械与填料密封行業)の寧波天生密封件有限公司の原子力発電所原子炉圧力容器用C 型シールリングが種目別優勝製品に選ばれている。
- 科学技術イノベーションの歩みを速めた
「国家中⾧期科学と技術発展計画綱要 2006-2020」、「国家イノベーション推進発展戦略綱要」及び「中国製造2025」等の計画を確実に実施するため、国家重点研究開発計画は、「製造基礎技術及び中核コンポーネント」の重点プロジェクト実施を始動させた。
国家科学技術部は、特定プロジェクト実施方案に基づいて、2018 年度プロジェクト指南を公布した。この特定プロジェクトの全体目標は、高速精密重荷重インテリジェント軸受、ハイエンド油圧及びシール部品、高性能ギアートランスミッション及びシステム、先進的センサー、ハイエンド器具計器及び先進的鋳造、クリーン熱処理、表面プロセス、クリーン切削等の基礎生産技術を重点とし、基礎となる最先端技術の研究を推し進めることに力を入れ、業界共通の一群の中核技術をブレークスルーさせて、基盤保証能力を向上させることにある。
中核コンポーネントと基礎生産技術レベルを向上させて、強固な基礎を定めるために、基礎データーベース、工業的検証プラットフォーム、中核技術規格の研究を強化している。
この重点特定プロジェクトは、産業チェーンの配置したイノベーションチェーンの要求により、基礎となる最先端技術、共通中核技術、実証アプリケーションの三つの側面から、中核要素部品(中:基礎件)、基礎製造プロセス、先進的センサー、ハイエンド器具計器と基礎技術の保障を中心とする五つの目標に配置して実施されている。特定プロジェクトの実施周期は5年(2018-2022 年)である。
中核要素部品で、油圧・空気圧・シール部品業界と関連のあるのは次の通り:
・油圧機器とシステムの軽量化設計製造の新方式(基礎最先端技術カテゴリー)
・メカニカルシールのサービス性能進化メカニズムと信頼性の評価方法(基礎最先端技術カテゴリー)
・油圧機器の信頼性評価方法と寿命テスト技術(共通中核技術カテゴリー)
・ゴム・プラスチックシールのデジタル化設計及び製造中核技術(共通中核技術カテゴリー)
・大型圧力成型機用アキシャルピストン式油圧ポンプ(実証アプリケーションカテゴリー)
・建設機械用高圧マルチプルウェイコントロールバルブ((実証アプリケーションカテゴリー)
- 自主イノベーション能力の持続的強化
1) 科学技術の多大な成果
(1)油圧・空気圧・シール部品業界の二つのプロジェクト成果が国の科学技術賞を獲得した。油圧・空気圧・シール部品業界の航空機用電気・油圧式エネルギー自動供給ブレーキ装置(中:电液自馈能刹车装置)とアンチスキッド制御新技術、空気圧機器の共通テスト技術及び規格体系等の二つのプロジェクトが、国の科学技術発明賞二等賞を獲得、北京航空航天大学の焦宗夏教授、博士課程研究指導官、蔡茂林教授、博士課程研究指導官がそれぞれ、プロジェクトの代表として、北京で行われた国家科学技術奨励大会に参加し、賞を受け取った。
(2)油圧・空気圧・シール部品業界の14 プロジェクトの科学技術成果が国の2018年度中国機械工業科学技術賞を獲得した。中国機械工業科学技術賞奨励弁公室が発表した評価結果によると、油圧・空気圧・シール部品業界は、14 プロジェクトが、2018 年度中国機械工業科学技術賞を獲得した。
・建設機械用液体動力トランスミッションシステムの高効率省エネ機能の統合技術(中:集成技術、integrated technology)とその応用/ハイエンドセラミックシールリングのフルセットの技術開発及びその応用等の2 プロジェクトは、一等賞を獲得。
・小型ショベル用斜盤式アキシャルピストン可変ポンプの中核技術及びその応用/高効率省エネ自動車クレーン用のフルセットの油圧機器研究開発及びその産業化/工業用ロボットの端末空気圧システム/自動車用ATM 変速機のインテリジェント化におけるオンライン検出テスト設備等4 プロジェクトは、二等賞を獲得。
・主要な装備の需要に合わせた、高性能メカニカルシール及びそのテスト技術の研究開発と応用/大型建設機械用トルクコンバーターの研究開発と応用/比例制御2 ウェイダイナミックバルブ/高精度デジタル油圧シリンダ同調制御システムの水力タービン用シリンダバルブにおける応用/原子力発電所用大型油圧ダンパーの研究開発と製造/インテリジェント化重荷重建設機械用マルチチャンネル回転装置製造のコアー技術及びその応用/106 電気制御シリーズの全油圧ステアーリングギャー/クレーン用ロードセンシング型マルチプルルウェイコントロールバルブの開発及びその車上油圧システムとのマッチング応用等の8プロジェクトは、三等賞を獲得。
2) 自主イノベーション能力に新しい向上
2018 年、油圧・空気圧・シール部品業界は、中国製造2025 発展戦略を実施する過程において、生産能力は著しく向上し、新しい技術成果が絶え間なく出現し、インターネット+油圧にある程度のブレークスルーが見られ、油圧・空気圧・シール部品業界の自主イノベーションに重要な進捗が見られ、業界発展の新しい光景が現れている。
(1) 中鼎(控股)集団が、世界非タイヤゴム製品トップ50 の13 位に入る。
2018 年7 月、アメリカの「Rubber and Plastics News」週刊誌によると、中鼎(控股)集団は、2011 年に初めてランキングリスト入りしたときは45 位で、続いて2009 年には20 位に並んだ後、引き続き上位に進み、2017 年の18 位から世界13 位に躍進している。
中鼎は、2009 年にはすでにトップ50 に突入する実力を備えており、2011 年にトップ50 に入って以来、毎年何れも大幅な飛躍をしている。世界非タイヤゴム製品トップ50 のランキングは世界公認の評価基準である。
中国ゴム工業(中:中国橡膠工業)の非タイヤゴム製品は、数十年をかけた努力を経て、中国企業がやっと入ったトップ50 ランキングであり、中国装備製造業の改革開放40 年で取得した大きな成果である。
(2) 徐工液圧件公司は、国内の油圧業界で初のデータ「ブラックボックス」を構築。
徐工研究所、徐工重型などの部門及び関係大学と連合して開発した、国内初の油圧機器のデータ収集、研究、開発、応用を一体に集めたインタネットプラットフォームを正式発表し、油圧機器の研究開発、製造から“返品、交換、修理を保証する”(以下、“三包”)フイードバック及び再製造(リマニュファクチャリング)に至る、完全なライフサイクルデータ管理とメンテナンスを実現し、「インターネット+油圧」が、油圧業界における役割と応用の見通しをよりはっきりと見えるようにしている。
現在、「インターネット+」のうねりは、装備製造全体を席巻しており、その核心的競争力はまさに「顧客、プラットフォーム、入口、ビックデータ」である。知るところによると、徐工液圧は、早くも2014 年には油圧シリンダの三包故障のデータ表現の規範性と統一性の問題に対して、油圧シリンダの故障データコードを初めて作り、2015 年には、同社の「油圧シリンダフォールドモードラブラリ」(中:液圧缸失効模式庫)を完成させている。
今回、製品の完全なライフサイクルデータ管理プラットフォームの投入使用は、データのある双方向連絡と分析機能を兼ねた、プロセスデータ(SPC)、信頼性テストの検証、三包データ及び再製造データ等の多くを集めることを実現し、製品の加工、テスト及び出荷検査に対して遡及的チェックが可能になっている。
同時に、同プラットフォームは、企業と端末顧客のために共に享受するきずなを形成し、油圧機器が国内のどこの片隅に居ようが、そのリアルタイムの位置、出荷期日、故障コード等のデータ情報が躍如としてプラットフォームの載っており、顧客にためにワンストップ総合サービスとソリューションを確保している。
今後、プラットフォームのビックデータの集まりに伴い、企業を支援して製品に対して遠隔診断を行うと同時に、製品の稼働状況に対しても効果的な分析を行い、突出した問題に対しては、設計と生産の部分に改善を加えることになる。
ビックデータの下でのインテリジェント化製造、テストと測定は、「技術領先、用不毀」(技術で先導すれば、用いて尽きることはない の意)の地に足のついたゴールドスタンダードであり、強力なサーチエンジンを提供している。
- 業界の民営企業は党と国の重視を得る
2018 年11 月、中共中央総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の習近平は、北京で主催して開かれた民営企業座談会において重要講話を発表した。この会議では計43社の民営企業家が招かれており、寧波天生密封件有限公司董事⾧の励行根が、油圧・空気圧・シール部品業界の唯一の代表として参加している。
寧波天生密封件有限公司は民営の小さな企業である。わずか100 余名の従業員の「小企業」で、技術のイノベーションを頼りに、船舶、原子力発電及び軍需工業等の各分野において、特に大型原子力発電所において突出した成績を上げている。
シール部品は、核の安全では主要なコンポーネントであり、放射性物質の漏洩を防止する需要な保障である。このような極小さなシール部品は、アメリカの会社に半世紀の⾧きに渡り独占されていた。まさに励行根が率いた100 余名の民営企業は、苦心の研究開発によって、中国を世界で二番目のC 形シールリングを生産できる国となり、外国の同類製品の中国における価格を70%下げ、外国の半世紀の⾧きに渡る独占を打ち破った。
- 業界国際化の影響はさらに向上した
中国工程院士、浙江大学機械工工程学院院⾧の楊華勇は、光栄にも2017 年度 Joseph Bramah Medal を獲得し、世界のフルードパワー分野の頂点に立った。楊華10勇は、イギリスのBath/ASME Symposium on Fluid Power and Motion Control 2018 国際Fluid power 会議において同メダルを授与され、初めてこの格別な栄光を受けた中国の科学者となった。
Joseph Bramah Medal は、世界初の油圧プレス発明者であるJoseph Bramah(1748-1814)を記念して、1968 年に創設された。世界のフルードパワー及び機電分野において、特殊な貢献をした科学者或いはエンジニアーの表彰に用いられ、国際フルードパワー分野の最高の栄誉である。Joseph Bramah Medal は、毎年多くとも一人に授与されている(1969、1977、1983、2000、2012 年は該当者なし)
2019 年を展望すると、中国経済は「安定成⾧の下に前進」する総基調に変わりはなく、国の関連支援政策を深く押し進め、「基盤強化プロセス」、「インテリジェント製造」等の特定プロジェクトの実施、構造調整、構造転換とグレードアップを絶えず進めることになる。企業の自己開発と内在的動機付けは、業界発展のために良好な政策環境を提供している。
しかし、国際環境の不安定性、不確実性は依然として存在しており、貿易の保護主義は依然としてはびこっており、グローバル経済は下落リスクに直面している。国内の構造的矛盾は相変わらず突出している。
母機メーカの組込み購入部品需要の変動が大きく、予測が難しい。ハイエンドの油圧・空気圧・シール製品は供給が不足し、ローエンド製品は供給が需要を上回っており、需給関係の過度な競争に大きな変化はない。人件費の上昇、環境保護制約のエスカレートの趨勢に変化はない。業界経営の直面する情勢は厳しく複雑である、業界が安定経営を実現し、高速から高品質への発展課題を実現することは極めて困難である。
以上