・バイオ医薬品の開発・製造受託事業を拡大
・延床面積約6,000㎡の新棟建設など実施
今回、遺伝子治療薬の開発・製造受託を手掛けているFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下 FDB)の米国テキサス拠点に、遺伝子治療薬のプロセス開発棟の新設と生産設備の増設を行う。プロセス開発棟の開設は2021年秋、生産設備の稼働は2021年春以降を予定している。
今後、富士フイルムは、最先端医療の遺伝子治療分野で、生産プロセス開発から製造まで一貫して受託できる強みを活かして、さらなるビジネス拡大を図っていく。
遺伝子治療薬は、疾患の原因となる欠陥遺伝子を持った患者に、ウイルス(※2)を利用して外部から正常な遺伝子を導入することで疾患を治療するバイオ医薬品。現在、世界で製造販売承認を取得している遺伝子治療薬は10種類で、その市場規模は約700億円だが、疾患を根本的に治療できる可能性が高いことから研究開発が活発化しており、2025年には4兆円まで急速に拡大すると予測されている(※3)。
遺伝子治療薬の製造には、ウイルスを産生させる細胞や疾患治療のための遺伝子、細胞培養に必要な培地が用いられることから、抗体医薬品製造などで必要な培養・精製技術・設備はもちろんのこと、複数の遺伝子を一度に導入する高度なバイオテクノロジーやウイルスの封じ込め技術・設備などが求められる。また製造に最適な生産プロセスの開発も必要であるため、優れた技術・設備を持つ開発・製造受託会社(CDMO(※4))に遺伝子治療薬の生産プロセス開発と製造を一括して委託したいというニーズが非常に高く、受託ビジネスの需要はますます増加する見込み。
今回、富士フイルムは、世界トップレベルの高度な封じ込め技術・設備(モバイルクリーンルーム(※5))などを有し遺伝子治療薬の開発・製造受託ニーズに応えてきた、FDBの米国テキサス拠点に総額約130億円の設備投資を行い、生産プロセス開発から製造まで一貫して受託できる体制を構築する。まず、生産プロセス開発のために、同拠点に延床面積約6,000㎡の新棟を建設し、培養・精製・分析装置を導入。FDBが保有する細胞や遺伝子、オリジナル培地などを用いて、最適な生産プロセスを迅速に開発・提供する。さらに、生産能力増強に向けて、既存製造棟にクリーンルームを増設し、機動性に優れるシングルユース仕様(※6)の500/2,000リットルの細胞培養タンク計8基を設置。治験薬製造から商業生産に対応できる製造ラインを整備し、顧客の幅広い受託ニーズに応えていく。
富士フイルムは、バイオCDMO事業(※7)で2021年度1,000億円の売上を目指し、積極的な設備投資や高効率・高生産性の技術開発などの成長戦略を進めている。2019年8月には、バイオ医薬品大手Biogen Inc.の製造子会社Biogen (Denmark) Manufacturing ApSを買収し、生産能力の大幅増強や大量生産ニーズへの対応を実現した。今後、抗体医薬品やホルモン製剤、ワクチン、遺伝子治療薬などあらゆる種類のバイオ医薬品の生産プロセスを開発し、少量生産から大量生産、原薬製造から製剤化まで受託できる強みを活かしてさらなる事業成長を図るとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて顧客の新薬創出をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応など社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業の発展に貢献していく。
詳細は→ ニュースリリース
*1 低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。インスリンや成長ホルモンの他に、ワクチン、抗体医薬品、遺伝子治療薬などを含む。
*2 遺伝子を体内の細胞へ導入する際に、正常な遺伝子を内包したウイルスを運び屋として用いる。運び屋としてのウイルスは、ウイルスベクターと呼ばれ、アデノ随伴ウィルス(AAV)やレンチウイルスなどが用いられる。
*3 富士フイルム調べ。
*4 Contract Development & Manufacturing Organizationの略。薬剤開発初期の細胞株開発から生産プロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
*5 商用生産設備としては世界トップレベルのバイオセーフティーレベル3まで対応可能。ウイルスを製造工程内にとどめることができ、遺伝子治療薬やワクチンの製造にも応用が可能。可動式であるため、移設・増設が容易。洗浄工程を切り離して高効率な生産ができる。
*6 培養タンクの内側にプラスチック製のバックを用いる仕様。バックを交換することで洗浄・滅菌の工程が省かれ、異物の混入などのリスクも低減できるなどのメリットがある。
*7 バイオ医薬品のみならず、低分子医薬品の開発・製造受託も含む。