4~9月期における主要市場である油圧ショベルを中心とした建設機械市場においては、日本では公共投資や設備投資は増加基調が継続し、需要は前年並み。北米及び欧州は、米中貿易摩擦の懸念やEU離脱問題の先行きに不透明さが残るなか、需要は堅調に推移した。
中国では、米中貿易摩擦の長期化による景気減速が伝えられるなか、中国政府主導による公共事業への投資底入れにより建機需要は下支えされており、年間で最も需要の高まる春節期や2020年12月実施予定の第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が見込まれるなか、中華系建機メーカーの市場占有率は顕著に拡大し、その結果、主要得意先各社の市場占有率は減少傾向にある。
一方、東南アジアでは、インフラ整備に伴う潜在的な需要は堅調さが見られるものの、インドネシア、タイ、フィリピンでの国政選挙の影響による公共投資の抑制が継続し、需要は一時的に減少した。
4~9月期において、同社は強みである油圧ショベルの作動油回路用フィルタ製品を主軸に、新素材やIoT技術を活かしたフィルタ製品のラインナップの充実を図り、補給部品の純正率向上に建設機械メーカーと共同で取り組み、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、世界の建機の新車販売の約半数を占め、環境規制による新車需要が見込まれる世界最大の市場である中国において、製品の中華系建機メーカーの採用率の向上に向けた取り組みを強化しており、来期以降の建機用フィルタビジネスに大きく貢献することが期待される。
また、新たな事業ポートフォリオの拡大に向けた取り組みとして、M&Aによる新規事業分野への進出を課題としているが、2019年8月23日付で㈱アクシーの株式を100%取得し、完全子会社化した。
㈱アクシーは空調用のエアフィルタの製造販売を事業とする国内有数のフィルタメーカーであり、中でも粗塵フィルタ、中高性能フィルタ市場においては、その生産体制や技術力が高く評価され、確固たる地位を築いている。ヤマシンフィルタが量産化技術を確立した合成高分子系ナノファイバー「YAMASHIN Nano FilterTM」と㈱アクシーの生産技術力及び販売チャネルとの掛け合わせにより、より付加価値の高いエアフィルタ製品のグローバル供給が可能となる。グループに㈱アクシーが合流することで、グループの事業ポートフォリオにエアフィルタ分野が加わり、第二の事業の柱が創出されることとなる。
更には、事業ポートフォリオの拡大に向けたもう一つの取り組みとして、国内大手アパレルメーカーに対し、秋冬物衣料の中綿材として、保温性、調湿性、薄さという3つの特性を活かした「YAMASHIN Nano FilterTM」の量産供給を開始した。
■2020年3月期の見通し
前回公表(5月15日)と比較し、日米欧の市場環境は堅調に推移し、最大の建機市場である中国市場は年間で最も需要の高まる春節期や、2020年12月実施予定の第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が見込まれている。
しかし、品質の改善や価格競争力で勝る中華系建機メーカーの中国・東南アジア市場での占有率の急激な上昇により、主要得意先である日系建機メーカーを中心に、中国市場を中心としたアジア市場でのプレゼンスは大きく後退を余儀なくされている。
このような市場環境を踏まえ、ヤマシンフィルタ主要得意先各社の下期以降の新車生産計画は中国市場向けを中心に大幅な減産計画が行われる見通しとなった。
以上のように、最大の建機市場である中国市場でのヤマシンフィルタ主要得意先各社の市場占有率の大幅な減少に伴うフィルタ売上の減収速度が、その減収を十分に補完するための新規中華系建機メーカーへの純正フィルタ売上の増収の速度に半期間ほどの乖離が生じている結果、建機用フィルタ事業の通期事業見通しの修正が必要となった。
一方、8月23日に完全子会社化した㈱アクシーの業績貢献が2019年10月から見込まれること等により5月15日に公表した通期連結業績を以下の通り修正した。
売上高は134億円(前回予想:130億円)、営業利益12億5,000万円(同:16億5,000万円)、経常利益11億3,500万円(同:16億円)、親会社株主に帰属する当期純利益8億円(同:11億円)となる見通し。
2020年3月期の想定為替レートについては、同日の公表値である米ドル108円を据え置いている。