2018年度における事業環境は、これまで拡大基調にあった世界経済がピークアウトするとともに、米中新冷戦構造を軸とした地政学情勢の緊迫化、テクノロジー革命に伴う産業構造の激変など、世界の政治、経済、技術情勢が構造的調整を伴う激動の中で推移した。
なお、2018年度は、前年度業績を一時的に押し上げた国内排ガス規制の駆け込み需要とアフリカ向け大口プロジェクト需要という二つの特需剥落により、前年度対比で業績落差が発生した。
■連結地域区分別売上高
国内向け売上高は、公共工事執行停滞による実需減速と排ガス規制特需の反動減により、前年同期比11.3%減の110億3千万円となった。
海外向け売上高は、新興国市場における経済減速とアフリカ向け特需剥落により、前年同期比19.5%減の137億3千万円となった。
北米向け売上高は、金利上昇に伴い民間建設投資がピークアウトしたものの、道路など政府建設投資が拡大基調に推移し、前年同期比2.0%減の46億5千万円となった。
アジア向け売上高は、金利上昇に伴う経済情勢悪化とインドネシア、タイ、マレーシアなど主要国における重要選挙の影響で需要が減速し、前年同期比14.4%減の80億円となった。
中近東・ロシアCIS向け売上高は、不安定な地域情勢が続く中、前年同期比50.8%減の1億2千万円となった。
その他市場向け売上高は、オセアニア向けが好調に推移したものの、中南米向けが停滞するとともにアフリカ向け特需が剥落し、前年同期比64.7%減の9億5千万円となった。
■所在地別セグメント業績
<日 本>
総売上高は、公共工事執行停滞と排ガス規制特需反動減による国内向け販売減少、新興国及びアフリカ特需向け販売減少により、前年同期比16.8%減の196億円、営業利益は売上高減少に伴い同87.0%減の2億4千万円となった。
<海 外>
米国では、高水準の建設投資が続く中、総売上高は前年同期比1.9%減の47億4千万円、営業利益も同1.8%減の2億5千万円と横ばいに推移致した。
インドネシアでは、国内需要の急減速とアフリカ向け特需剥落により、総売上高は前年同期比20.5%減の66億1千万円、営業利益は同25.9%減の9億4千万円となった。
中国では、米国向けサプライチェーン調整に対して国内市場開拓を強化したが、総売上高は前年同期比12.9%減の16億7千万円、営業利益は同73.1%減の5百万円となった。
■2020年3月期(2019年度)の見通し
今後国内では、総額7兆円の「防災・減災、国土強靭化の為の三ヵ年緊急対策」の執行に伴い政府建設投資が底上げされることから、排ガス規制反動減をこなして底堅い回復基調に回帰するものと予想している。
海外では、世界経済の同時減速リスクが日に日に高まる一方で、欧米や中国において金融緩和やインフラ投資による景気刺激策が動き始め、東南アジア諸国でも経済情勢の底入れが期待されることから、当面は一進一退の市場環境が続くものと予想している。
また中期的には、世界の政治、経済、技術情勢が大きな転換期を迎えていることから、事業環境についても構造的な変動が進むものと予想している。
このような見通しにおいて酒井重工業では、変化を大前提とした事業経営と、海外事業と次世代事業による中長期成長戦略を基本とし、需要変化対応力の強化、米中対立に伴う米国事業と中国事業の収益構造改革、海外事業領域の拡大、新技術活用による次世代事業の開発、組織能力のバージョンアップ投資など、変化対応と成長戦略を積極的に推進し、新たな事業環境における成長基盤を固めていく。
2020年3月期連結業績は、売上高265.6億円(前期比1.0%減)、営業利益14億円(同1.0%減)、経常利益11.8億円(同1.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8.3億円(同0.6%増)を見込んでいる。