㈱荏原製作所は2月12日、グループの荏原環境プラント(本社:東京都大田区)が、熟練運転員の眼を代替するごみ識別AIを搭載した自動クレーンシステムの開発・実証実験に成功し、運用を開始したと発表した。
ごみ焼却施設では、排ガス性状やごみ発電の安定化において燃焼の安定化は重要。ごみピット(以下,ピット)内のごみ性状を均一化する撹拌や、特殊ごみの退避等のクレーン操作が必要になる。そのため、現在は運転員が視覚的にごみ性状を認識し、適時クレーンを操作し燃焼の安定化を図っている。燃焼安定化を進めるために、運転員の技量の差、将来に向けた人に依存する作業の低減が必要と考え、クレーン作業において人に依存しない自動化の開発を進めてきた。
運用を開始したシステムは、カメラで捉えたピット内のごみ状況を、AIでごみの撹拌状況などを識別し、高度制御装置でピット内のクレーン操作判断を行い、クレーンを自動運転するもの。
自動化開発にあたっては、この「運転員の眼」を代替することが重要課題だった。そこで、画像解析技術に定評のあるRidge-i社と共同で、ディープラーニング(深層学習)を用いたごみ識別AIの開発を行ってきた。AIでごみ状況を識別可能にしたことで、従来の自動クレーンでは困難だった「燃焼に適したごみを識別した上で炉に投入する」ことや、「特殊ごみ(大量に炉に投入すると機器や燃焼に悪影響の出るごみ)を識別し適切に対処する」ことが可能となった。
今後、本AI搭載自動クレーンシステムを既設炉・新設炉に限らず展開していくとともに、焼却炉の燃焼制御へのAI活用を進めていく。そして、投入ごみの識別結果と焼却炉の燃焼制御とを組み合わせた操炉全般にAI活用することで、焼却炉の自動運転を実現し、安定かつ、人に依存しない次世代型のごみ焼却施設を目指す。
荏原グループは、中期経営計画とESG重要課題に取り組むことで、経営方針に基づいて企業価値のさらなる向上を図り、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指す。