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●年頭所感 日本ロボット工業会 橋本康彦会長

 皆さま、明けましておめでとうございます。

 ロボット工業会の橋本でございます。(画像は賀詞交歓会で挨拶する橋本会長)

 年頭にあたり、日本ロボット工業会、製造科学技術センター、マイクロマシンセンター3団体を代表し、ご挨拶を申し上げます。

 まず、日頃よりご支援、ご厚情を賜っております経済産業省ご当局、NEDO、産総研はじめ関係省庁、諸機関並びに関係諸団体、そして会員各位に対し厚く御礼申し上げます。

 さて、我が国では昨年、2025年の大阪万博誘致の成功や京都大学・本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授のノーベル医学生理学受賞、そして2020年の東京オリンピック開催を間近に控えてのスポーツ界での様々な活躍といった明るい話題があった反面、台風や地震などの大規模な自然災害が多発した一年でした。

 一方、世界経済は緩やかに拡大するなかで、米国での金利上昇や米中貿易摩擦の先行きに対する不透明感から株式市場の不安定な動きが見られるほか、中国においても貿易摩擦の影響が実体経済に現れつつあり、さらにはユーロ圏においても景気が減速しつつあります。このように、世界経済は保護主義的な傾向による減速懸念を抱えたなかでの幕開けとなりました。

 ひるがえって我が国経済は、政府の各種政策効果もあって雇用・所得環境の改善で緩やかながら景気回復が持続しています。その中にあって、特に私どもロボット業界にとりましては、こうした景気回復下で少子高齢化による人手不足感の拡大と併せ、2015年に取り纏められた「ロボット新戦略」での政策目標と、それに伴う各種施策に支えられ、ユーザー側での需要意欲に底堅さが見られました。

 このような状況の下、我が国のロボット産業は、国内需要が引き続き堅調な伸びを示した一方で、需要の約7割を占める輸出が年後半より前年割れが見られたものの、2018年は受注額で対前年比約7%増の1兆100億円程が見込まれ、業界初の1兆円越えが、そして生産額においても、対前年比6%前後の9,300~9,500億円を見込んでいます。

 そして2019年の今年は、引き続き米中の貿易摩擦による景気減速懸念はあるものの、引き続き中国をはじめアジア及び欧米においても世界的な自動化投資意欲が期待されています。このようなことから、本年のロボット受注額は対前年比4%増の1兆500億円に、生産額は約4%増の9,800億円程を期待しております。

 さて次に3団体の今年の活動についてお話ししたいと思います。

 日本ロボット工業会では、業界活性化のさらなる推進に向け、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。

 第一は「市場拡大に向けた取組」です。

 当会ではロボット革命イニシアティブ協議会との連携のもと、2020年に向けロボット新戦略での「世界一のロボット利活用社会の実現」を目指し、マッチング活動や人材育成並びに環境整備など具体的成果に繋がるよう引き続き積極的に活動して参ります。

 また、ロボット利活用推進にとってシステムインテグレータの役割は極めて重要であるとの認識のもと、昨年7月、当工業会内に「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」を設立しました。当協会では、業界ネットワークの構築や経営基盤や事業環境の向上、さらにはシステムインテグレーションに対する専門性の高度化に向けた活動を積極的に展開致します。

 第二は「イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進」です。

 競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後のAI及びコネクテッドインダストリーズを通じた潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大、更には市場における我が国競争力の維持・向上からも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めて参ります。

 第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。

 国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでおりますが、我が国としてもリーディングカントリーとして官民挙げて国際標準化活動に対して引き続き積極的に取り組むとともに、国際ロボット連盟を通じた活動並びに国際交流を積極的に推進していく所存です。

 また、本年は6月5日~7日に例年同様「実装プロセステクノロジー展」の開催に加え、12月18日~21日には、隔年開催の「2019国際ロボット展」を開催することとしております。

 これらの展示会を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。

 次に、製造科学技術センターです。

 製造科学技術センターでは、ロボット、ファクトリー・オートメーション、「ものづくり」などにおける調査研究や、標準化に取り組んでおります。

 まず、ロボット関連では、昨年度までに「インフラ維持・管理のロボット等の性能評価手法」を開発いたしましたが、本年度からは、その普及、改定や、「福島ロボット・テスト・フィールド」を活用したロボット開発を目指した「人材育成」に関する事業を開始いたしました。

 また、「ものづくり」では、人(=「ヒト」)とロボットの革新的な協力形態の実現により、複雑な産業機械製品の新たな生産手法の確立を図る調査研究を引き続き進めております。

 一方、標準化では、製品に関するデジタル・データの流通・活用や、製造ラインにおける省エネ効率化のためのデジタル検証などについて取り組んでおり、その成果はコネクティッド・インダストリの基盤形成に着々と貢献しつつあります。

 特に、産業オートメーション・システム等に関する国際規格であるISO/TC184(=ティー・シー、イチ・ハチ・ヨン)の国内審議団体として、スマート・マニュファクチャリングの推進にも取り組んでおります。

 以上のように、当財団は、我が国の「ものづくり」の課題に応えるとともに、未来に向けた競争力と活力の創成に寄与するために、活動を充実させて参りますので、今後とも、皆様の幅広いご協力、ご支援をお願いいたします。

 最後に、マイクロマシンセンターの取組みであります。

 我が国のMEMS(メムス)産業においては、政府が推進するコネクテッド・インダストリーズによるSociety5.0の実現に不可欠であるIoTシステム構築、ロボット、AI、センサなどのキーデバイスとしてのMEMSの技術革新を目指した研究開発が益々活発になっています。このような状況のもとマイクロマシンセンターでは、以下の3点を重点的に取り組む所存です。

 第一は、MEMSのオープンイノベーションセンターであるMNOIC(エムノイック)のファンドリ事業について、関係業界からも強い期待が寄せられておりますので、運営の拡充・強化にこれまで以上に努めることとします。

 第二は、将来の研究開発プロジェクト実施に繋げる活動として、今年も業界として必要となっていく研究シーズの検討を行い、医療やバイオ、エネルギー分野などを含め、幅広く将来の研究開発プロジェクトに繋げていくこととします。

 第三は、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」を、IoTシステムの最先端技術展として、さらに発展させ、我が国のコネクテッド・インダストリーズ推進のためのプレゼンス強化に努めることとします。

 このように、2019年も引き続きマイクロマシンセンターは、我が国マイクロマシン/MEMS分野における産学官連携のセンターハブとなる活動を展開してまいります。

 最後となりましたが、本年も引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のご多幸とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

 有難うございました。

 日本ロボット工業会

 

 

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