・米国ノースカロライナ拠点におけるバイオ医薬品の生産能力増強など
富士フイルムは1月7日、バイオ医薬品(※1)の開発・製造受託事業をさらに拡大するために、2019年1月より2年間で総額約100億円の設備投資を実施すると発表した。その第1弾として、バイオ医薬品のCDMO(※2)の中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下FDB)の米国ノースカロライナ拠点(Morrisville)に、バイオ医薬品の製造設備を増強し、2020年に稼働させていく予定。また、第2弾として米国テキサス拠点(College Station )での設備増強を現在計画している。
バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占めるバイオ医薬品の割合は高まり、医薬品の売上上位10製品のうち半数以上はバイオ医薬品が占めている。バイオ医薬品の製造には、動物細胞培養・微生物培養による原薬の産生や精製などの工程があり、非常に高度な生産技術と設備が必要とされるため、製薬企業やバイオベンチャーなどが優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増している。これに伴い、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%以上(※3)の成長が見込まれている。
富士フイルムは、FDBを中核に開発・製造受託事業の拡大を進める中、FDBの米国・英国拠点に積極的に設備投資を行い、バイオ医薬品の生産プロセス開発能力や製造設備を増強している。なかでも米国テキサス拠点では、2018年1月に新生産棟を稼働させて、生産プロセス開発から、治験薬製造、さらには医薬品の商業生産までの一連のワークフローを一体的・効率的に進めることができる、抗体医薬品向けの開発・生産プラットフォーム「Saturn mAb(サターンマブ)プラットフォーム(TM)」(※4)を活用した開発・製造受託サービスの能力拡大を図っている。
今後、さらなる事業成長に向けて、総額約100億円の設備投資を決定。その第1弾として、FDBの米国ノースカロライナ拠点にある、バイオ医薬品の製造設備を増強する。現在、米国ノースカロライナ拠点では動物細胞培養・微生物培養の製造設備を保有し、顧客ごとにバイオ医薬品の生産プロセス開発から、治験薬製造、医薬品の商業生産まで対応できる開発・製造受託サービスに注力している。今後市場の拡大により、ますます高まる受託ニーズや顧客からの増産要請にこたえるために、機動性に優れるシングルユース仕様(※5)の2,000リットル動物細胞培養タンクを追加導入するとともに、動物細胞・微生物培養後の精製工程に、バイオ医薬品の原薬を高純度に精製する設備を大幅に増強する。これにより、同拠点におけるバイオ医薬品の生産能力を、現在と比べて、動物細胞培養で約25%、微生物培養で約50%拡大する。
富士フイルムは、2017年3月に新設したバイオCDMO事業の下、積極的な設備投資や高効率・高生産性の技術開発などの成長戦略を進め、2023年度にはバイオCDMO事業で1,000億円の売上を目指すとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて、医薬品産業のさらなる発展に貢献していく。
※1 低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。ワクチンのほかに、インスリン、成長ホルモン、抗体医薬品などを含む。抗体医薬品とは、生体内で病原菌やがん細胞などの異常な細胞を認識して生体を保護する免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、抗体が特定の標的(抗原)と結合することで治療効果を発揮する。
※2 Contract Development & Manufacturing Organizationの略で、生産プロセスの開発受託および製造受託を行う会社・組織を指す。薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
※3 富士フイルム調べ。
※4 抗体医薬品の高効率な生産ワークフローを実現するFDB独自の技術基盤のこと。具体的には、培養条件などの生産プロセス の開発から、本プロセスの治験薬・医薬品生産への適用、さらに商業生産までの工程を一体として設計し、高品質な抗体医薬品の高効率生産を可能とするもの。
※5 培養タンクの内側にプラスチック製のバックを用いる仕様。バックを交換することで洗浄・滅菌の工程が省かれ、異物の混入などのリスクも低減できるなどのメリットがある。