移動体衛星通信サービスの大手企業である英国インマルサット社(Inmarsat plc)と三菱重工業は12月6日、日本の新たな基幹ロケットとなるH3ロケットによる衛星打上げで、インマルサット社が民間企業として初めて三菱重工に発注することを決定したと発表した。H3の初号機打上げは2020年度の計画で、インマルサット社向け打上げ実施は2022年以降となる予定。三菱重工にとって、インマルサット社への打上げ輸送サービスは2017年の契約発表に続き今回が2件目で、海外顧客への打上げ輸送サービスとしてはH-IIAロケットでの5件、H3ロケットでの1件で6件目となる。
三菱重工は、インマルサット社から同社が2020年以降の運用開始を計画する第6世代通信衛星(Inmarsat-6)シリーズ初号機の打上げ輸送サービスを現行の基幹ロケットであるH-IIAで受注した経緯がある。この一連の合意は、打上げサービス分野における両社のパートナー関係の進展を象徴するもの。
インマルサット社のルパート・パース(Rupert Pearce)CEOは、次のように述べている。「当社は、移動体通信における世界的リーダーであり、この地位はパートナー企業との協業関係の拡充・多様化に努めることで構築したものです。当社は、新たな市場に進出し、商機を創出するために、イノベーションにコミットする新しいパートナーを絶えず探し求めています」。
同CEOはさらに「このような理由により、当社は2017年に三菱重工を打上げパートナーに選定し、また、このたび民間企業として初めてH3ロケットを選択することを決定しました。このような発表ができることを嬉しく思います。私たちは、H3が世界レベルのイノベーションを象徴するものであり、将来インマルサット衛星を軌道に乗せるために効果的かつ効率的なサービスを提供すると信じています」と続けている。
一方、三菱重工 宇宙事業部長の渥美正博氏は、次のように語っている。「H3ロケットの開発は国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)を核としてキーコンポーネントメーカーと主契約企業である当社が連携しながら進めている途上にありますが、今回高い評価を頂けたことに改めて感謝します。お客様の期待に応えるべく、JAXAや政府機関のもと、この基幹ロケットをしっかりと開発していきたいと存じます」。
また、英国のグレッグ・クラーク ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣は、次のようにコメントしている。「英国のインマルサット社と日本の三菱重工の間で築かれた長期的かつ戦略的なパートナーシップが示すように、科学とイノベーションに国境はありません。また、宇宙産業は英国にとってサクセス・ストーリーであり、グローバルに成長を遂げている産業です。英国政府は、国内初のスペースポート建設や過去最大規模の科学産業への投資を通して宇宙産業へのサポートを継続していきます」。
三菱重工の打上げ輸送サービスは、97.9%という非常に高い成功率を誇り、2005年以降41回連続で成功。さらに、H-IIAおよびH-IIBともに、定刻打上げにより高い顧客満足を実現している。
インマルサットは、移動体衛星通信サービス提供における世界のリーディングカンパニー。世界最大級の衛星ネットワークを所有、運用し、Lバンド、Kaバンド、Sバンドの広範囲な周波数帯によりグローバル通信網を提供する。インマルサットのグローバルネットワークは世界各地の協業パートナーだけでなく、自社独自の強い直販能力も含むものであり、包括的なカスタマーサービスの提供を可能としている。また、世界で最も信頼のあるグローバル移動体衛星通信ネットワークを運用し、安全運行に関わるサービスを約40年間継続してきた実績がある。さらに、移動体衛星通信分野における技術革新を推進する重要な役割を果たし、継続的な投資や製造パートナーとの強固なネットワークによって市場におけるリーダーシップを維持してきた。インマルサットは、自社の財源で多様な分野で事業を展開し、世界中の顧客にとって信頼性があり、高品質のサービスを提供するパートナーとして海洋、政府、航空向け衛星通信市場を先導していく。
インマルサット社との今回の発表は、三菱重工の宇宙業界における幅広い顧客サポートを展開するというコミットメントの表れ。三菱重工は、引き続き宇宙産業の発展を支え、日本ならびに世界の衛星打上げ輸送サービス分野で一層の市場深耕をはかっていく。