・質高インフラ環境成長ファシリティの一環として、英国洋上風力発電市場における日本企業の参画を支援
国際協力銀行(JBIC)は11月29日、28日に「質高インフラ環境成長ファシリティ」(以下「QI-ESG」*1 )の一環として、三菱商事、関西電力及び三菱UFJリース等が出資する英国法人Moray Offshore Windfarm (East) Limited(以下、MOWEL)との間で、同国Moray East洋上風力発電事業を対象として、融資金額約743百万ポンド(約1,077億円、JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンス*2による貸付契約を締結した。この融資は、民間金融機関との協調融資によるものであり、協調融資総額は約1,517百万ポンド(約2,200億円)。民間金融機関の融資の一部分に対し、デンマーク輸出信用基金が保証を供与する。(1ポンドは約145円)
このプロジェクトは、MOWELが英国北部スコットランドMoray沖合22kmにおいて、総発電容量950MWの洋上風力発電所を建設・所有・運営するもの。英国の再生可能エネルギー助成制度であるContracts for Difference(以下、CfD)制度*3適用の下、商業運転開始後15年にわたり、電力小売事業者に売電する。
英国をはじめとする欧州諸国において大型洋上風力発電事業の開発が進められ、諸外国の企業間での事業権獲得競争が激化しているなか、JBICが長期融資を行うことで、日本企業の長期にわたる海外事業を支援することは、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献するもの。
また、日本政府は、2018年6月に改訂した「インフラシステム輸出戦略」において、インフラの設計・建設・運営・管理を含むシステムの受注や現地での事業投資の拡大の推進を表明している。また、パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギー等を含めた「低炭素型インフラ輸出」を積極的に推進する方針を掲げている。加えて、2018年7月に日本政府が発表した「エネルギー基本計画」において、政策金融を活用した事業における日本のユーティリティ企業等の参入促進を通じたエネルギー産業の国際競争力強化及び国際展開の推進が掲げられている。今回の融資は、これらの日本政府の施策にも合致するもの。
英国政府は、2008年に気候変動法(Climate Change Act 2008)を制定し、温室効果ガス排出量を2050年までに1990年度対比80%削減することを目標としている。また、2013年に制定したエネルギー法(Energy Act 2013)の下、CfD制度を導入することで、閉鎖する既存発電所の代替として低炭素エネルギー電源の拡大に努めている。この案件は、同国の温室効果ガス排出量の削減にも貢献するものであり、これら英国政府の政策にも適うもの。
JBICは今後も、日本の公的金融機関として、様々な金融手法を活用した案件形成やリスクテイク機能等を通じ、日本企業による海外インフラ事業展開を金融面から支援していく。
注釈
*1:JBICは2018年7月1日にQI-ESGを創設した。このファシリティは、再生可能エネルギー分野を含め、地球環境保全目的に資するインフラ整備を幅広く支援することを目的としている。詳細は、2018年6月28日付お知らせを参照。
*2 :プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定する融資スキームのこと。
*3 :英国政府が100%出資するLow Carbon Contracts Companyと発電事業者の間で締結するCfD契約に基づき,英国政府が決定した基準価格と電力市場指標価格との差額調整を実施することにより、発電事業者の収入を長期間にわたり保証する制度。