・産業用ロボットサプライヤーの認知度は、日本企業ではファナックが最も高く、中国はABBが21.7%で最も高い
・日本の製造業は、産業用ロボット導入事業者にロボットの選定、カスタマイズ、導入までを期待するが、中国は、用途別に必要機能を満たす産業用ロボットが調達できることを重視する傾向
・中国市場における現地サプライヤーとの競争に対して、国内産業用ロボットサプライヤーはITを活用したロボット間連携などに取り組むことが重要
IT専門調査会社、IDC Japan (本社:東京都千代田区)は11月20日、日本と中国における産業用ロボット利用動向に関する調査結果を発表した。同調査は、IDCが2018年5月~6月に世界で実施した「IDC’s Worldwide Robotics Survey,2018」に基づき、日本と中国の製造業における産業用ロボット利用動向について比較分析したもの。
同調査では、産業用ロボットサプライヤーの認知度に関する調査を行った。産業用ロボットサプライヤーで最初に思い浮かぶ企業を尋ねたところ、日本ではファナックと安川電機が上位に挙がった。1970年以降、自動車や電機電子部品の製造現場を中心に同社の産業用ロボットが数多く導入されており、その結果として高い認知度を獲得していると考えられる。一方で、中国では21.7%の回答者がABBを挙げ最も認知度が高く、国内サプライヤーではパナソニックが上位に位置している。ABBは1990年以降、産業用ロボットの現地生産から販売までを行うサプライチェーンを構築している。また、2015年には双腕型協働ロボットYuMiを発売するなど、中国の製造現場の需要を適切に把握することで中国市場を牽引してきたことが背景にある。また、パナソニックは、2000年以降、溶接ロボットの現地生産および技術者の積極的な養成によって販売を加速し、市場の認知度を高めたとIDCではみている。
今回の調査では、産業用ロボットを導入する際の事業者の選定要件についても調査している。日本の製造業は、産業用ロボットの導入事業者選定で、「産業用ロボットの導入、機能調整、プログラミング、導入試験が可能」を挙げる企業が21.7%で最多となった。
日本の製造業は、自社向けに産業用ロボットの機能調整やプログラミングから導入試験までを導入事業者に期待する傾向が明らかになった。一方で、中国の製造業は「顧客の用途に応じて、必要機能をモジュラー単位で提供、またはカスタマイズの選択肢を提供できる」が25.0%で、必要な機能を実装した産業用ロボットの導入提案を導入事業者に期待する傾向が分かった。また、「顧客要件や導入予算を把握し、最適なソリューションを提案できる」を挙げる企業が日中共に多いことから、これは日本と中国に共通する導入事業者の要件であることも分かった。
中国市場では、産業用ロボットの需要拡大に伴い、新松机器人や上海新時達電気などの現地サプライヤーの存在感も高まってきている。IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである藤村成弘氏は「今後激しくなる中国の現地サプライヤーとの競争に対して、国内産業用ロボットサプライヤーはITを活用した産業用ロボットと搬送ロボットの連携など、ロボット間連携に向けた機能強化に取り組んでいくことが重要である」と述べている。
今回の発表はIDCが発行したレポート「2018年 日本と中国における産業用ロボット利用動向比較調査」(JPJ43353718)にその詳細が報告されている。同レポートでは、日本と中国の産業用ロボットの導入状況や導入事業者の選定基準などを詳細に分析しているとしている。