近年、工作機械は、人手不足などを背景として、より高度な状態監視および制御、IoTやAIを活用した無人化や省人化、そしてさらなる生産性の向上が求められている。これらを実現するため、工作機械の基幹部品である主軸や、それを支える主軸用軸受の異常を早期に検知し、突然の予期せぬ損傷や、それに伴う稼働停止、主軸の交換などの損害を防ぐことが強く望まれている。
しかし、一般的な主軸外径面での温度や振動の計測は、センサの取付けやすさにメリットがある反面、計測位置が軸受軌道面から離れているため、軸受の急激な温度上昇などの異常を早期に検知することが困難だった。
開発した工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」は、軸受に隣接する外輪間座にセンサを内蔵し、軸受軌道面の近くで軸受の温度、振動、熱流束(*1)を計測する。主軸外径面での計測に比べ、軸受の状態を高感度に計測することができるほか、熱流束を計測することにより、温度や振動よりも軸受の状態変化を早く正確に読み取り、軸受が焼き付く前に異常を検知することが可能。NTNの評価試験では、焼付き発生までの熱流束の上昇率が主軸外径面の温度の上昇率に比べ、約40倍も高いことを確認している。これにより、工作機械主軸の高度な状態監視が可能となり、軸受の焼付きによる損害を未然に防ぐことができる。熱流センサ(*2)を内蔵した工作機械主軸用軸受ユニットは業界初となる。
NTNは、この開発品を11月1日~6日に東京ビッグサイトで開催される「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」に参考出展し、工作機械メーカやスピンドルメーカーに提案していく。
*1)単位時間あたりに単位面積を通過する熱量
*2)熱流センサは、直列に配置された複数の熱電対を内蔵し、1つの熱電対で構成される温度センサに比べ、高感度な計測が可能。