新工場は、エプソンの最先端のインクジェットプリントヘッド「PrecisionCore(プレシジョンコア)プリントヘッド」のコアとなる構成部品「PrecisionCoreプリントチップ」の生産を行う。新工場は2018年度内の稼動を予定しており、将来的には、エプソンにおける「PrecisionCoreプリントチップ」の生産能力を現在の約3倍に拡大させる計画。
エプソンは長期ビジョン「Epson 25」において、オフィスおよび商業・産業印刷を注力する事業領域と位置付けている。2017年度には、将来成長の核となるオフィス向けの高速ラインインクジェット複合機/プリンターを発売した。また、現在の成長ドライバーである大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、エマージング地域に加えて先進国でも販売を拡大し、2018年度には前期比170万台増の950万台の販売を計画している。
さらに、サイネージなどの商業分野、捺染やラベル印刷などの産業分野では、アナログ印刷からデジタル印刷への転換が進みつつあり、大きな市場成長が見込まれる。エプソンは商業・産業向けインクジェットプリンターの完成品ラインアップを強化するとともに、研究開発や生産体制の整備を進めている。
新工場の稼動によって、これらの事業領域の拡大に伴って中長期的に増加するプリントヘッドの需要を支える生産体制を確立することができる。さらに、この生産能力を生かして、大判プリンター向けの「PrecisionCoreプリントヘッド」の外販をグローバルで展開し、パートナーとともに、商業・産業領域におけるデジタル印刷へのシフトを加速させていく。
なお「PrecisionCoreプリントチップ」は現在、長野県の諏訪南事業所で製造しているが、新工場の稼動により2拠点体制となる。また新工場は、災害対策に優れた建物構造および設備を採用し、事業の継続性も強化している。そして、新工場は既存工場と比較してスペース生産性20%増を計画し、工場内には研究開発機能も備えているため、生産技術などの開発を推進することで、プリントヘッドの品質や生産性向上においても重要な役割を果たす。
<新工場の概要>
名称:広丘事業所9号館
所在地:〒399-0785 長野県塩尻市広丘原新田80
機能:PrecisionCoreプリントヘッドの生産(前工程)および研究開発
竣工:2018年6月30日
建築面積:10,653m²
延床面積:46,915m²
建築構造:鉄骨造 地下1階・地上5階建て
投資金額:約255億円
■広丘事業所について
広丘事業所はプリンターの企画設計拠点、コアデバイスの研究開発拠点、生産拠点として、国内および海外の生産拠点と密接に連携している。またコアデバイスの開発・生産を通じて得られる先端の生産技術・ノウハウをエプソンの海外生産拠点へも展開することで、グループの総合的なものづくり力の向上に貢献している。広丘事業所には、竣工した9号館のほか、商業・産業用大型印刷機の試作・量産およびデジタル捺染のテストラボ機能を備えた新棟(イノベーションセンターB棟)の新設を予定しており、研究開発・生産基盤をさらに強化していく。
■最先端PrecisionCoreプリントヘッドについて
マイクロピエゾ技術を活用したプリントヘッドは、電圧を加えることで収縮するピエゾ素子の機械的な動きによってインク滴を吐出する。熱を使わないこと、インクの量を正確にコントロールできることに大きな特徴がある。非加熱のため、ヘッドの耐久性が高く、かつ低消費電力を実現、環境負荷を低減することが可能。
PrecisionCoreプリントヘッドは、ノズルのひとつひとつが異なる制御で、10億分の7グラム程度の非常に微細なインク滴を、1秒間に5万発噴射することができる技術。インクジェットプリンターの画質と速度を決定する非常に重要なコアデバイス。そのため、生産においても非常に高度な技術が必要で、エプソンは20年以上にわたり培ってきたインクジェット技術と1/1000mm単位での超微細加工が可能なMEMS技術を融合させ、さらに自社の持つ産業用ロボットも駆使することで、高い品質と生産性を両立する完全自動生産ラインを実現している。
エプソンは日本国内でPrecisionCoreマイクロTFPプリントヘッドの開発から生産※までを一貫して行うことで、次世代プリントヘッドに関する技術的ノウハウの蓄積を図るとともに、生産技術を磐石なものとし、コアデバイス生産の役割を担う国内生産拠点の競争優位性を向上させている。