■海外事業展開を加速、生産拠点を複数化
三洋化成工業(本社:京都市東山区)は6月7日、主力事業の一つである潤滑油添加剤「アクルーブ」シリーズの世界的な需要増に対応し、韓国に新たな合弁会社「韓国三洋化成製造株式会社」を設立、生産能力1.1万トン/年規模の生産設備の新設を決定したと発表した。
自動車業界では、二酸化炭素排出量の削減を目的に省燃費ニーズが高まっている。三洋化成工業の潤滑油添加剤「アクルーブ」は、自動変速機用潤滑油(ATF)向けや無段変速機用潤滑油(CVTF)向けの需要増に加え、燃費向上効果が注目されて消費量がより多いエンジンオイル向けでも需要が拡大している。三洋化成工業グループでは、この需要増に対応するとともに、BCPの観点からも、グローバルな生産体制の強化と生産拠点の複数化を進めている。
今回の投資決定により、2018年7月に新会社を設立、2019年12月の操業開始を予定しており、日本(京都工場・鹿島工場、計5万トン/年)、米国関係会社(サンヨーケミカル・アンド・レジンズLLC、0.4万トン/年)、中国関係会社(三洋化成精細化学品(南通)有限公司、0.5万トン/年)に加え、4カ国目の生産拠点となり、総生産能力は7万トン/年となる予定。
なお、三洋化成工業グループである韓国サンノプコ株式会社の敷地内で設備を新設し、投資金額は約20億円を予定している。
<設立する新会社の概要>
名称:韓国三洋化成製造株式会社
英語表記:Sanyo Chemical Manufacturing Korea, Ltd.
所在地:韓国・忠清北道陰城郡(韓国サンノプコ㈱敷地内)
事業内容:潤滑油添加剤の製造
資本金:10億ウォン
設立年月日:2018年7月(予定)
■自動車用潤滑油と粘度指数向上剤について
三洋化成工業は1963年に日本で初めて潤滑油添加剤の一つである粘度指数向上剤を開発した国内における粘度指数向上剤のトップメーカー。50年にわたって好評を得てきるとしており、その技術と経験を生かして、市場動向に合わせた開発を重ねている。
鉱物油をベースとする自動車用潤滑油は、高温では粘度が低く、低温では粘度が高くなる。粘度が低すぎると金属上での潤滑油の油膜が薄くなり、潤滑性が著しく低下するために磨耗や焼き付きといった問題を引き起こす。その一方で、粘度が高過ぎると粘性抵抗によるエネルギーロスが大きくなり、自動車の燃費が悪化する。
燃費向上の観点から、自動車用潤滑油には温度変化に対して粘度変化が少ない特性が求められる。潤滑油の粘度変化の大きさを示すのが粘度指数で、粘度指数が高いほど温度による粘度変化は少なくなる。
三洋化成工業の「アクルーブ」シリーズを潤滑油に5~10%添加すると、「アクルーブ」シリーズの主成分であるポリメチルメタクリレート系ポリマーの分子鎖が、温度変化によって大きく広がったり小さく丸まったりし、潤滑油の粘度変化を抑える。これにより、自動車の省燃費化に貢献している。
自動車用潤滑油のなかでも最も大量に使用されるエンジンオイルには、これまでは主にオレフィン系粘度指数向上剤が使われてきたが、ポリメタクリレート系の「アクルーブ」シリーズの燃費向上効果が注目されたことを受け、エンジンオイル用途でも開発を進めた結果、省燃費化を目的とした採用が拡大している。