三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は6月4日、グループ会社の三菱日立パワーシステムズ環境ソリューション(MHPS-ES、本社:横浜市中区)と共同で、韓国中部発電(KOMIPO:Korea Midland Power Co., Ltd.)の保寧(Boryeong:ボリョン)火力発電所3号機を対象とする環境装置改造工事を受注したと発表した。韓国政府が進める石炭焚き火力発電所の大気汚染緩和の方針を受け、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、および煤じんの排出削減措置を講じるもので、新装置の稼働開始は2019年8月を予定している。
保寧発電所は、首都ソウルの南南西約140kmの西海岸(忠清南道)保寧市に位置し、1983年から運転中で、定格出力は480万kW。このうち工事対象となる3号機は、定格出力が55万kWで、工事全体のEPC(設計・調達・建設)は現地重工大手でMHPS排煙脱硫装置(FGD:Flue Gas Desulfurization)の技術提携先でもあるSTX重工業(STX Heavy Industries Co., Ltd.)が請け負う。MHPSおよびMHPS-ESは、STX重工業から発注を受けたもの。
MHPSグループが手掛ける範囲は、SOx除去率向上のためのFGD改造用コアパーツの供給、NOx低減効果に優れた脱硝触媒の納入、煤じんの除去率を向上する電気集じん機の改造、熱交換・排ガス再加熱を実現するNL-GGH(ノンリーク式ガス–ガスヒーター)の設計。新装置の設置により、排出量はSOxが15ppm、NOxが10ppm、煤じんが5mg/Nm³以下となり、世界最高レベルの低減効果を実現することが可能となる。
韓国では現在、政府主導で2030年までを目標に大気中粒子状物質の大幅削減を中心とする大気汚染対策が進んでいる。その中で、国内における全発電容量の3割近くを占める石炭焚き火力発電設備から排出される大気汚染物質の浄化・削減対策に重点が置かれており、稼働年数の長い石炭焚き火力発電所の閉鎖計画や比較的経年劣化が少ない石炭焚き火力発電設備の改造による大気汚染対策、天然ガス燃料や再生可能エネルギーを電源とする発電所の新設計画などが打ち出されてきている。今回の改造工事もこうした動きの一環といえる。
MHPSは今後もMHPS-ESと力を合わせ、大気汚染物質に対する排出規制強化の流れに伴い、環境装置の需要拡大が見込める欧米やアジアの先進国・地域をはじめとする世界市場で、高性能かつ高効率な脱硫・脱硝システムや集じん機、また、これらを組み合わせた総合排煙処理システム(AQCS:Air Quality Control System)を積極的に提案し、地球規模での安定的電力供給と環境負荷低減の両立に貢献していく。