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IHI、石炭火力発電所向け 燃焼試験設備で世界最高水準のアンモニア混焼を実証

■CO2排出量低減に寄与 アンモニアの燃料利用を可能にする燃焼技術を開発

 ㈱IHIは3月28日、低炭素社会を実現する新たな燃料として期待されるアンモニアと、石炭火力発電の燃料である微粉炭を混合燃焼する実証試験を、相生工場(兵庫県相生市)内の大容量燃焼試験設備(投入熱量10MW)で2017年12月に実施し、世界最高水準となる熱量比率20%のアンモニア混焼に成功したと発表した。これにより、石炭火力発電所の燃料としてアンモニアを利用する燃焼技術の実用化にめどを付けた。

 実証試験は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア(*1)」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構/理事長:濱口道成)の委託研究課題「アンモニア直接燃焼」において実施したもの。

 現在、エネルギー・気候変動・雇用などの社会課題の解決を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の取組みが世界各国で推進されており、エネルギー分野では、発電時にCO2を発生させない水素の利用拡大が期待されている。一方で、その普及に向けては、運搬・貯蔵のコストが課題であり、SIP「エネルギーキャリア」では様々な研究開発が行われている。その中でも、アンモニア(NH3)は、水素含有量の高さ、液化・運搬・貯蔵の容易さ、また、肥料や化学原料として流通しており、輸送インフラが既に整っていることなどから、低炭素社会の早期実現を可能にする新たなエネルギー源として注目されている。

 IHIは、アンモニアの製造から利用までをつなぐバリューチェーンの構築を目指し、SIPの支援のもと、アンモニアを燃料として利用する、ガスタービンや石炭火力ボイラの燃焼技術や、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のシステム化などに取り組んでいる。

 中でも、同技術は、国内の電源構成の約3割を占める石炭火力に適用されることで、CO2排出量の削減に大きく寄与すると期待できる一方で、アンモニアと微粉炭が混焼する際には大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の排出濃度が上昇する懸念がある。IHIは、国内外で高い発電効率および優れた環境性能を誇るボイラを数多く供給してきた。今回の実証試験では、これまでの実績を通じて培った技術力を活かし、既存の発電所に対する小規模な改造で、NOx排出濃度を従来の石炭火力発電所からの排出濃度と同程度に抑制することに成功した。

 今後は、ボイラ性能へ与える影響の評価や運転条件の選定により、NOxをさらに低下させる可能性を検討していく。IHIはアンモニアを利用した低炭素社会の実現に向けた技術開発に、今後も邁進していくとともに、事業を通じてSDGsの達成に貢献していく。

(*1) エネルギーキャリア:液化水素やメチルシクロヘキサン、アンモニアなど水素を多く含む物質のことで、エネルギー生産地で合成して、化学的に安定な液体として保存、運搬し、エネルギー消費地で水素を取り出すか、直接エネルギーに変換して使用する。

 ニュースリリース

 

 

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