三菱重工業は12月25日、ロシアの化学会社大手であるメタフラックス社(PJSC Metafrax)向けに、排ガスCO2回収装置の技術ライセンス供与契約を締結したと発表した。メタノール製造施設の副生物からアンモニアと尿素およびメラミンを製造するためのもので、回収能力は1,200トン/日。ウラル山脈の西側に位置するペルミ(Perm)市で、2021年の完成を予定している。
三菱重工は排ガスCO2回収技術を、メタフラックス社からアンモニア・CO2回収装置・尿素・メラミン製造施設全体のEPCm(設計・調達・建設管理)契約を受注したスイスのエンジニアリング会社であるカサレ社(Casale SA)を通じて受注。排ガスCO2回収技術のライセンスを三菱重工からカサレ社に供与し、サブライセンスをカサレ社からメタフラックス社に供与するという枠組みを採用する。
カサレ社が建設を請け負う設備は、既存のメタノール製造プラントから得られる余剰水素と、新設の空気分離装置から得られる窒素を化合させてアンモニアを合成し、さらにメタノール製造プラントの排ガスから回収したCO2により、尿素およびメラミンを製造するもの。製造能力は、アンモニアが894トン/日、尿素が1,725トン/日、メラミンが4万トン/年となっている。
メタフラックス社は、1955年の創業で、西ウラル地域の有力工業都市でペルミ地方の都であるペルミ市に拠点を構えている。メタノール製造ではロシア最大手で、現在の製造能力は20年前に比べ約35%増の3,375トン/日。
三菱重工の排ガスCO2回収技術は、関西電力と共同開発した高性能な吸収液(KS-1™)を用いた「KM CDR Process®」と呼ばれる化学吸収法で、エネルギー消費量が従来法に比べ大幅に少ないのが特長。1999年から、天然ガス焚きや石炭焚きのプラントなどで発生する排ガスからのCO2回収商用装置を、世界各地で13基稼働させており、CO2回収装置の商用実績では圧倒的な世界トップシェアを誇っている。
三菱重工の排ガスCO2回収技術は、尿素製造用に加え、メタノール、ジメチルエーテル(DME)の製造など化学用途、さらには、火力発電所などから発生するCO2の回収・貯留(CCS)や、生産性が低下した油層にCO2を圧入して生産増加をはかる原油増進回収(EOR)などでの幅広い利用が可能。