三菱ふそうトラック・バス(本社:神奈川県川崎市、以下MFTBC)は11月15日、川崎工場第一敷地(神奈川県川崎市大倉町)に新たに約118億円の投資を行うと発表した。川崎地区3拠点に分かれている事業を川崎工場第一敷地に集約し、本社、研究開発および設計機能を収容する「プロダクト・センター」を新たに建設する。また同時に、工場内の既存設備の大規模リニューアルを行う。これにより、業務の効率化を図るとともに、従業員の働く環境を改善する。(開発・生産拠点一覧)
新社屋の建設を含む大規模工事は“Campus+(キャンパス プラス)”と呼ぶプロジェクトの一環。同プロジェクトは三菱ふそうが一役を担うダイムラー・トラック・アジア(以下、DTA)の成長戦略である「DTA ONE」の活動のひとつ。この戦略はProduct(製品)、Process(プロセス)、People(人材)の3つの柱から成り立ち、“Campus+”はProcess(プロセス)とPeople(人材)に焦点をあてた活動。
「プロダクト・センター」は最先端の設備を備えた5階建て社屋で、オフィス空間の床面積は10.792㎡となる。今月下旬から建設を始め、2018年末完成を予定している。その他、第一敷地内では従業員の業務効率向上のため既存設備のリニューアルが進められており、既に約5,300㎡が完了している。
「商用車メーカーとしての長年にわたる歴史と、電気トラックのフロントランナーを走る三菱ふそうは優秀で意欲的な従業員に支えられています。“Campus+”は、個人の能力を最大に引き出せる労働環境を作るための人材に対する投資です」(マーク・リストセーヤ:MFTBC代表取締役社長・CEO)
MFTBCはまた、川崎工場第一敷地の生産設備の拡張と近代化に多額の投資を続けている。
今年2月には、開発と生産機能の一部を担っていた川崎工場第二敷地(神奈川県川崎市西加瀬)の売却契約を締結し、2019年までに全施設を第一敷地に移管をすべくプロジェクトを進めている。第二敷地の生産工程は第一敷地に建設する新工場に移管予定で、2018年末の生産開始を計画している。
新工場では「Factory of the Future(未来の工場)」のイニシアティブの下で、オートメーション、ロボティックスとITシステムに対し、インダストリー4.0(*)への対応に向けて投資する。工場内の自動搬送機、次世代オートメーション、生産従事者を支援する作業ロボットの導入、および工場内外の全ての物流を管理するITシステムが含まれる。2018年までに24億円を投資し、生産効率を向上することで年間13億円のコスト削減を目指す。
「川崎工場は三菱ふそうの主力工場です。工場の自動化、ロボティクス、ITシステムへの投資を通じて、生産効率を高め、製品品質を向上し、電気トラックの量産に備えます」(スヴェン・グレーブレ:MFTBC副社長兼生産本部長)
■三菱ふそう川崎工場の歴史
MFTBC川崎工場は1941年(昭和16年)、三菱重工業㈱東京機器製作所川崎工作部(当時)として発足、日本最大級の鋳鍛工場として操業を開始した。
同工場は現在小型・中型・大型トラックを生産し、世界160カ国以上へ輸出している。最初の輸出は1955年のチリ向けのR32型バスだった。また、完成車輸出のみならず世界のKD工場のマザー工場としても発展してきた。1960年のオーストラリア向けT352型大型トラックを皮切りに、1970年にタイ向けT620型中型トラック、1972年からはインドネシア向けにT651型中型トラックの部品を出荷した。現在世界15カ国以上のKD工場へ出荷している。
2016年には、生産性と構内物流効率の向上を目指したフィッシュボーンコンセプトを軸とする、構内再配置(サイトストラテジー)が完成した。小型車両組立ラインストレート化に続き、大中型車両組立ラインのストレート化が完了し、全長約600mの組立ラインが誕生。MFTBCは、川崎工場に対し、これまで100億円以上の投資を実施、ダイムラー・トラックの他ブランド向けのコンポーネントの供給を含め、ダイムラー・トラック部門の生産拠点として、重要な役割を担っている。
*インダストリー4.0:生産工程の自動化とデジタル化により、生産コストを削減し、生産性向上を目指す取り組み。
画像:2018年末完成予定の新社屋「プロダクト・センター」完成予想図