日立造船は10月30日、岩手県より大船渡漁港の海岸高潮対策事業により、海底設置型フラップゲート式水門を23億4,400万円(税抜き)で受注したと発表した。海底設置型としては初の受注。日立造船はこれまで陸上設置型「neo RiSe®」の納入実績を積み重ねてきたが、海底設置型が新たに実用化されることで、今後、より広範囲にわたり津波対策が可能となる。
日立造船は、2003年に海底設置型フラップゲート、2009年に陸上設置型、2011年以降に建屋壁面設置型、空調ダクト設置型の開発に着手し、これまで、陸上設置型、建屋壁面設置型、空調ダクト設置型においては納入実績を積み重ねてきた。
今回初受注した海底設置型は、東洋建設、五洋建設と共同で開発したもので、新焼津漁港(静岡県焼津市)で実海域試験による性能検証を実施している。2011年度から2013年度にわたる3年間の実海域試験の結果、基本機能および信頼性について期待どおりの成果を得ることができた。
今回の案件は、東日本大震災で甚大なる被害を受けた同漁港の復興事業の一環として、岩手県より受注したもの。日立造船は海底設置型フラップゲート式水門の設計、製作、輸送、据付までを請け負う。また、完工後、津波の波力によって自立して起き上がることで堤内への浸水を防ぐ水門として、国内初の施工となる。
<概 要>
発注者:岩手県
工事名:大船渡漁港海岸高潮対策(細浦地区水門その2)工事
納入機種:海底設置型フラップゲート式水門
寸法:純径間32m×有効高12m
建設地:岩手県大船渡市末崎町地先(水深約5mの海底)
受注金額:23億4,400万円(税抜き)
工期:2017年10月~2020年3月
製作工場:堺工場
■海底設置型フラップゲート:海底に一列に配置した扉体を、浮力を利用して旋回起立させることで連続した水門・防波設備等を形成する可動式の構造物であり、その設置目的により”背後域の水位変動の抑制を目的とする水門”と”背後域の静穏度向上を目的とする波除堤”の2種類に分類されまる。
これら装置の特長は、その場にある自然の力、即ち津波や高潮の力を最大限に利用することで、最も安価な防御施設を追求することであり、以下の特長を有する。
1.平常時は海底倒伏しているため、船舶航行・海水交換を阻害せず、周辺景観への影響が僅少
2.自然の力を有効利用した構造・機構の採用により、安価な防御施設を実現
3.扉体浮力等の常時監視により施設状態を見える化し、安心な防御施設を実現