神戸製鋼所は9月28日、PVD(Physical Vapor Deposition=物理蒸着)成膜手法の一種であるアークイオンプレーティング(Arc Ion Plating(※1))方式の装置で、少量多品種生産に適したコンパクトかつリーズナブルなコーティング装置として「AIPocket(R)」を今年3月に上市し、このほど大手工具メーカーに初号機を納入したと発表した。PVDは主に切削工具や小物部品などを合金系皮膜で成膜して性能や寿命を向上させるもの。今後は国内・海外の顧客向けに年間20台の受注を目指す。
AIPocket(R)は、海外新市場の開拓を目的として新しく設計したCEマーキング対応(※2)の戦略機。神戸製鋼は、1998年に汎用バッチ式となる「AIP(R)-S」シリーズを発売し、研究開発用から工業生産用まで対象・用途に応じてS20、S40、S70、S90の4タイプをラインアップしている。今回、「AIP(R)-S」モデルに「AIPocket(R)」を加えることで、幅広い層の顧客に使ってもらうことを目指す。
真空成膜技術には、PVDおよびCVD成膜の2種類。神戸製鋼は、1986年にPVDの一種であるアークイオンプレーティング方式の装置をAIP(R)という商標で販売開始して以降、同じくスパッタリング成膜やガスを主原料に使ったCVDの一種であるPECVD成膜(※3)の装置を開発した。工具・金型・自動車部品・樹脂フィルム加工業界などに採用頂いており、累計600台以上の納入実績を持つ国内最大の真空成膜装置メーカー。
また適用アイテムに応じてバッチ式、インライン式、ロールコータ式と多様な成膜装置を販売しており、30年以上に亘り、真空成膜業界をリードしてきた。引き続き、日本における真空成膜装置のパイオニアとして長年の開発で培ってきた優れた技術を応用し、新メニューの投入や海外を含む新市場開拓を行い、顧客ニーズに合った高機能商品を提供し続けることで、更なる事業拡大を図っていく。
※1 Arc Ion Plating:真空アーク放電を利用して、固体蒸発源材料を瞬間的に蒸気化・イオン化させるイオンプレーティングの一種であり、これを基板上に堆積して皮膜を形成する。神戸製鋼装置によるArc Ion Platingは、TiAlN(チタンアルミナイトライド)などに代表される合金系皮膜の成膜に優れており、また高成膜レートのため、高い生産性を誇り、対象物として工具・金型・自動車部品など幅広い分野で利用されている。
※2 CEマーキング:CE(Communaute Europeenne)マークは、製品をEU加盟国へ輸出する際に、安全基準条件(使用者・消費者の健康と安全および共通利益の確保を守るための条件)を満たすことを証明するマーク。
※3 PECVD装置:Plasma-enhaunced Chemical Vapor Deposition。プラズマを援用する型式の化学気相成長(CVD)の一種。