プライメタルズテクノジーズは９月14日、ロシアのメタロインベスト社（Metalloinvest）から受注していたロシア南西部ベルゴルド州グブキン市（Gubkin）近郊のレベジンスキー（Lebedinsky）採鉱一貫製鉄所（LGOK）向け年産180 万トン型ミドレックスHBI プラント（プラント名：HBI-3）をミドレックス社（Midrex Technologies, Inc.）とのコンソーシアムにより納入、メタロインベスト社が性能保証試験の完了したことを発表した。
試験パラメータとして設定された、HBI の生産量、HBI の物理特性や化学特性、プラントに欠かせない天然ガスや電力消費量に加えて、排出物による環境への影響など全ての項目について、同プラントは保証値を100%達成した。ミドレックスHBI-3 プラントは、2017 年1 月に試運転を開始し、各種性能試験をクリアして同年3 月に事前合格通知を受領、5 月には性能保証試験を終えて6 月末に性能試験証明書を受領してした。
このミドレックスプラントは、鉄鉱石ペレットを原料とした鉱石ベースの鉄鋼生産用として、最も環境に優しい技術である天然ガスベースのミドレックス直接還元プロセス（Midrex NG） を用いて高品質HBI を生産する。この技術は天然ガスを使用してHBI を製造するため、コークスや焼結鉱の製造に関係する石炭由来の排出物が出ません。さらに、HBI 生産は従来の高炉に比べてエネルギー効率が高く、CO2 排出量を大幅に削減する。
メタロインベスト社はロシア最大の鉄鉱鉱山会社であると同時に、同地方最大の鉄鉱石並びに高品質鉄鋼製品のサプライヤーでもある。プラントはLGOK として2 基目のHBI 設備となる。同じミドレックス直接還元処理によるLGOK 向けHBI プラントの初号機もプライメタルズとミドレックス社のコンソーシアムが2005 年に納入し、2007 年に操業を開始している。その１号機の最近5 年間の操業実績は、その設計年産能力の140 万トンを毎年超過しており、2015 年4 月26 日にはHBI 生産量の累計が1,000 万トンに達した。
LGOK に今回投入したHBI-3 プラントにより、メタロインベスト社はHBI 年間生産能力を450 万トンにまで拡大させて、同社の商用HBI における指導的地位を強化すると同時に、世界マーケットのシェアを40%以上に高める計画。新設HBI プラント向けの原料は、LGOK から産出された鉄鉱石から製造したペレットからなっている。
この新設ミドレックスHBI プラントの納入契約は、メタロインベスト社がプライメタルズテクノロジーズ（当時の旧シーメンスVAI メタルズテクノロジーズ）およびコンソーシアムパートナーのミドレックス社を相手に締結していたもの。メタロインベスト社の開発戦略として、同社の保有する鉄鋼石資源を高付加価値化するHBI の生産量の大幅拡大と、HBI のグローバルマーケットにおける位置付けの強化を挙げており、その中核としてLGOK を位置づけていた。
今回のプロジェクトで、プライメタルズテクノロジーズとミドレックス社は、機械および電気設備、鋼構造物、配管、ダクト工事等のエンジニアリングと納入、ならびにオペレータ訓練と助言サービスを担当した。また今回の取り組みにおいて、メタロインベスト社は、プライメタルズテクノロジーズ（プライメタルズテクノロジーズオーストリア）とミドレックス社（ミドレックスUK 社経由）の協調によるプロジェクト資金供与（輸出信用融資）も活用した。
メタロインベスト社は、グプキンに隣接するベルゴロド州スタールイオスコル市にもオスコル電気冶金製鉄所（OEMK）を保有しているが、同製鉄所はロシアで最新の鉄鋼会社の1 つであり、その生産には高炉方式ではなくミドレックス直接還元鉄製造技術と電気炉による製鋼法を採用している。この2つの技術はともに、有害な不純物や残留成分を殆ど含まない高品質な鉄鋼を生産し、ロシア国内及び海外で高まる需要に応えている。
ミドレックス社（Midrex Technologies）は、鉄鋼メーカーに収益性の向上が商業的に実証されたソリューションを提供する国際的なプロセスエンジニアリング及びテクノロジー企業。同社は40 年以上にわたり、鉄鉱石の直接還元製鉄プロセスの先進企業として、技術を提供してきた。同社は高い生産性、優れた製品品質、価格競争力を提供する環境に優しい製鉄技術を提供している。鉄鉱石を製鋼、製鉄、鋳造で使用する高純度直接還元鉄(DRI)に転換するミドレックス（MIDREX）直接還元製鉄プロセスはミドレックス社が開発した。毎年、ミドレックスプラントで世界の直接還元鉄の約60%を生産している。