東レは8月23日、米国子会社でラージトウ炭素繊維の世界最大の供給メーカーであるZoltek Companies, Inc.(略称Zoltek)のハンガリー工場内にPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂コンパウンド生産設備を新設する事を決定したと発表した。東レグループが欧州に樹脂コンパウンド拠点を設置するのは今回が初めて。同工場での生産能力は年産3,000トンで、2018年3月からの稼働を目指す。
PPS樹脂は、耐熱性や耐薬品性、機械強度、難燃性等において優れた特性を持つ高機能素材で、その特性を活かし自動車の電装部品やエンジン部品などに使用されている。特に欧州においては、自動車の燃費やCO2排出量の規制、安全規制が世界で最も厳しく、部材の樹脂化による軽量化やセンサー部材の開発といった新技術で世界をリードする欧州系自動車部品メーカーは、近年、PPS樹脂の使用量を増やしている。また、自動車部品だけでなく、電気・電子機器、OA機器、住宅関連部品などの産業用途においても採用が拡がるなど、PPS樹脂の市場が急拡大している。
東レグループは、2016年より生産を開始した韓国の拠点と東海工場とあわせてPPSベースポリマーとして年産27,600トンの生産能力を有し、ポリマー・コンパウンドから繊維、フィルムまで手掛ける世界最大の総合PPSメーカー。2015年には、欧州での樹脂マーケティング・技術サービス機能を有する販売会社として、Toray Resins Europe GmbH(略称TREU)をドイツに設立し、日系自動車部品メーカーや欧州自動車部品メーカー等との連携を深め、現地でテクニカルサービスを提供する体制を構築してきた。Zoltekハンガリー工場へのコンパウンド設備設置後も、欧州内の営業・マーケティング活動はTREUが引き続き行う。
今回、Zoltekハンガリー工場のインフラ・人員を活用した、PPS樹脂の試作・生産拠点の設置により、東レグループは、日本、中国(深セン、蘇州、成都)、韓国、タイ、アメリカ、ハンガリーの6ヶ国、8拠点にPPS樹脂コンパウンド拠点を保有することになる。今回の欧州での拠点設置により、製品評価、試作対応のスピードアップを図り、欧州市場への供給体制の強化と新規需要の開拓を目指す。さらに、各国・地域に設置した各拠点が緊密に連携することで、製品開発・評価機能と現地生産によるタイムリーな供給体制を備え、顧客のニーズに対応したきめ細かいサービスの提供を一層強化し、顧客満足度向上を図る。
東レは、中期経営課題” プロジェクト AP-G 2019”の基本戦略の一つとして、「グローバルな事業の拡大と高度化」を推進している。今回の欧州でのPPS樹脂コンパウンド拠点設立はこのプロジェクトの一環であり、欧州での樹脂事業拡大の中核として位置づけ、世界ナンバーワンPPS樹脂メーカーとしての地位をさらに確固たるものとしていくとしている。
<Zoltek Companies, Inc.(略称Zoltek) 概要>
設立:1975年(2014年2月に東レの子会社化)
所在地:(1)本社:アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス
(2)ハンガリー工場:ハンガリー、ニュアルゲッシューアファロウ
事業内容:ラージトウ炭素繊維複合材料および耐炎糸の製造・販売
<Toray Resins Europe GmbH(略称TREU)概要>
設立:2015年4月
所在地:ドイツ連邦共和国Hessen州Offenbach郡Neu-Isenburg市
事業内容:樹脂コンパウンドのマーケティング及び販売