国際協力機構(JICA)は8月5日、バグダッドでイラク共和国政府との間で、「ハルサ発電所改修事業(フェーズ2)」を対象として、215億5,600万円を限度とする円借款貸付契約(Loan Agreement: L/A)に調印した。
同事業は、イラク南部のバスラ県で最大級の定格出力を有するハルサ発電所において、同発電所の1号機(定格出力200MW)を改修することにより、イラク国内における電力需要に応え、電力供給能力の回復・安定化を図り、もってイラクの経済基礎インフラの強化に寄与するもの。
なお、同発電所に対しては、先行フェーズとして実施中のハルサ発電所改修事業(2015年2月貸付契約調印、202億2,400万円)にて同発電所の4号機(定格出力200MW)を改修している。
イラクでは、1980年代以降の3度にわたる戦争と長年の経済制裁により、発電所や送配電施設等の電力インフラの破壊と老朽化が進行している。2003年のイラク戦争終結以降、電力インフラの復旧は徐々に進められてきたものの、近年の過激派組織と戦闘の影響等もあり、引き続き不安定な状況にあります。2016年現在、国内電力需要約21,500MW に対して、約13,300MW程度の電力供給にとどまっており、長時間の停電も珍しくない。
不十分かつ不安定な電力供給は、暴動等の社会不安を引き起こす一因となっているのみならず、医療や上下水道等の社会セクター開発及び産業の発展に対する阻害要因ともなっている。
特に、中西部や北部の電力インフラは過激派組織との戦闘の直接的な影響を受けており、国内の電力供給は、治安が比較的安定している中部・南部の発電設備に依存している。
こうした中、イラク南部のバスラ県にあり、電力需要が高いイラク中部にも連携されているハルサ発電所は国内の電力供給で重要な位置を占めているため、同発電所の改修が喫緊の課題となっている。
なお、ハルサ発電所は1982年に日本の支援(円借款と輸出信用)を受けて日本企業によって建設されたもので、日本人技術者から学んだイラクの技術者によって、長年運営・維持管理されてきた。30年以上稼働してきた同発電所は、日本とイラクの象徴的な協力事業として知られている。