プライメタルズテクノロジーズは5月30日(ロンドン)、スロベニアの製鉄メーカーであるアクロニ社(Acroni, d.o.o.:Slovenian Steel Group(SIJ)に所属)向けに容量95 トンのAOD 炉
アクロニ社は既存の生産ラインに同設備を増設することにより、生産能力を20%以上増強。新設のAOD 炉によって同社の製品ラインナップが拡充されるともに、既存の生産ラインの負荷軽減と製品の品質改善が実現されている。さらに、AOD 炉の特性により原材料の柔軟性も増して、添加する装入材として高価な金属元素以外の低価格材も使用可能となるなど、生産コストが削減された。プライメタルズテクノロジーズは2015 年中旬に同案件を受注していた。
アクロニ社はスロベニアの首都リュブリャナの北西約60㎞にあるイェセニツェに製鉄所を保有し、欧州のステンレス厚板業界をリードする存在。同社は電磁鋼および特殊鋼も生産しており、主に特殊なニッチ製品用として熱延および冷延コイル、厚板および冷間形鋼として販売している。
同製鉄所では、これまで電気炉で溶鋼を精練し、容量90 トンのVOD 炉*2 により脱炭していたが、炭素鋼に比べてステンレス鋼の脱炭処理時間が非常に長いため、ステンレス鋼の生産能力向上の阻害要因となっていた。AOD 炉の導入によりこの問題が解消され、生産能力と製鉄所の運用柔軟性が向上した。さらにAOD 炉では、クロムなどの合金元素のスラグ生成量を低減できるほか、合金元素よりも炭素含有率が高く低グレードで安価なフェロクロムを使用できるというメリットもある。
*1 および除塵設備を納入し、今年4月に各設備の運転が開始されたと発表した。
*2 VOD 炉:(真空脱ガス脱炭設備)真空状態にすることで一酸化炭素分圧を下げ、ステンレス鋼やその他の鋼材の脱炭を行う。AOD 炉に比べ脱炭能力は優れているが、ステンレス鋼の処理には時間とコストがかかる。