キリンホールディングス(HD)は2月11日、ミャンマーのビール大手、マンダレー・ブルワリーを買収する。2015年に傘下に収めた同国最大手のミャンマー・ブルワリーと合わせると現地でのシェアは約9割となり、成長市場での事業基盤が一段と固まる。キリンはブラジル事業を売却する方針を決めており、アジア・オセアニアに海外事業を集中する姿勢が鮮明。
マンダレー・ブルワリーは国軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)の1部門。現地にキリンHDが過半を出資する合弁会社をつくり、MEHLから事業を移管する。買収金額は数億円とみられる。すでにミャンマー投資委員会(MIC)への投資許可を申請しており、近く承認が得られる見通し。
マンダレー・ブルワリーは北部のマンダレーに拠点を置く同国最古のビール醸造所で、シェアは1割弱。約8割のシェアを握るミャンマー・ブルワリーと合わせ、販売網・物流網を全土に拡大できるほか、生産拠点の相互活用も見込める。同国に進出しているオランダのハイネケンやデンマークのカールスバーグなどとの競争を有利に進めたい考え。
世界のビール消費が最大市場だった中国でも減少するなど停滞傾向が強まるなか、ミャンマーはベトナムなどと並ぶ数少ない成長市場だ。消費量は14年時点で21万キロリットル。1人当たりではタイやベトナムの10分の1程度だが、経済成長に伴い都市部を中心に消費が拡大しており、18年の市場規模は13年比で2.5倍になるとみられている。
キリンHDの海外事業では09年に子会社化したオーストラリアのライオンが現地で4割のシェアを握る。同年にはフィリピン最大手のサンミゲルビールにも48%出資した。一方で、11年に3千億円で買収したものの苦戦していたブラジル事業はハイネケンへの売却で大筋合意している。マンダレー・ブルワリーの買収により、アジア・オセアニア地域を海外事業の軸足とする姿勢が一段と強まる。
さらにベトナム政府が売却する方針を示している国営ビールメーカー、サイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)の買収も検討している。ただ、ベトナムのビール市場で45%のシェアを持つサベコに対してはアサヒグループホールディングスのほか、世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)、タイのタイ・ビバレッジなども関心を寄せているとされる。
キリンHDは地理的にも近いアジアに投資を集中して安定的に収益を稼ぐ体制づくりを急ぐが、成長市場を取り込みたいのは競合他社も同じ。アジア市場を巡る「陣取り合戦」は激しさを増しそう。