・金型等8993個を無償保管させる、是正命令
公正取引委員会(公取委)は10月9日、農業機械部品メーカーのリョーノーファクトリー(島根県松江市、佐藤潔社長、資本金2000万円)に対し、下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反により勧告を行ったと発表した。同社が下請事業者57社に対し、金型や治具など8993個を無償で保管させていたもの。同社は三菱マヒンドラ農機の完全子会社。
同社は三菱マヒンドラ農機から農業機械の製造委託を受け、その構成部品の製造を個人や法人事業者に再委託している。公取委の調査によると、同社は2023年10月以降、自社所有の金型、木型、治具を貸与していた下請事業者に対し、長期間にわたり当該金型等を使用する部品の発注を行わないにもかかわらず、無償で保管させていた。
この行為は下請法第4条第2項第3号が禁止する「不当な経済上の利益の提供要請」に該当すると判断された。同社は8993個の金型等のうち、2024年3月から2025年8月までに780個を廃棄。また2024年10月から一部については保管費用の支払いを開始している。
公取委は同社に対し、無償保管させた費用相当額を速やかに支払うこと、取締役会で違反事実を確認すること、社内体制の整備などを勧告。また、親会社の三菱マヒンドラ農機に対しても申入れを行った。
下請法では、資本金1000万円超3億円以下の事業者が、資本金1000万円以下の事業者に製造委託する場合、親事業者・下請事業者の関係が成立する。今回は「みなし親事業者」規定も適用され、同社が資本金3億円超の三菱マヒンドラ農機の完全子会社であることから、資本金3億円以下の事業者への再委託についても親子関係が認定された。
農機業界では部品の金型管理が重要な課題となっており、今回の事案は業界に波紋を広げそうだ。同社は今後、発注担当者への研修実施など、コンプライアンス体制の強化が求められる。