●年頭所感 日本産業機械工業会 会長 斎藤 保

   環境と成長の好循環と国土強靱化に向けて

 2020年を迎えるに当たり、新年のご挨拶を申し上げます。

 皆様には、気分も新たに新年を迎えられたことと思います。

 昨年を振り返りますと、新天皇が即位され、「令和」の時代がスタートしました。さらに、国内初開催となったラグビー・ワールドカップでは、日本代表が準々決勝で敗れたものの、強豪国を次々に打ち負かすなど、日本列島を興奮させました。なお、経済面においては、長引く輸出の低迷、消費税率の引き上げ、台風に伴う一部工場の操業停止などの影響を受け、10月の鉱工業生産指数が前月比4.5%減と大幅な落ち込みを記録した他、12月の日銀短観では大企業製造業の業況判断指数が4期連続で低下するなど、景気の停滞感が強まりました。

 一方、海外では、世界経済の最大のリスクとなっていた米中貿易摩擦がひとまず休戦を迎えることとなり、また、ブレグジットについても、問題の迷走に終止符が打たれました。しかしながら、米・中もイギリス・EUも貿易交渉には曲折が予想されますので、引き続き、注視していく必要があると思われます。

 昨年の私ども日本産業機械工業会の受注は、国内では製造業向け、官公需がそろって振るわず、海外では中国や北アメリカ等の需要が低迷したことから、2019年度上半期の受注額が2兆1,613億円、前年同期比89.6%と3年ぶりに前年同期を下回る結果となりました。

 さて、2020年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中の注目が東京、そして日本に集まることになります。この国家イベントの成功に向け、引き続き国を挙げて取り組むと共に、海外へ日本の文化や先端的な技術・産業をアピールする場として大いに生かしていく必要があります。

 他方、環境面では、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が今年より始動いたします。今や環境問題への取り組みは、経済成長や様々な産業の将来を見通す上で大きな前提条件となっております。

 なお、日本経済においては、海外情勢の変化に留意する必要がありますが、国内では企業の設備投資意欲はなお旺盛であり、人手不足を踏まえた省力化・効率化投資に加え、次世代通信規格「5G」やデジタル革新技術への対応など、成長分野への投資が続くと見られ、緩やかな回復基調へ転換していくことが期待されます。

 こうした中、我々産業機械業界は、産業界の一員としての自主行動計画「環境活動基本計画」により地球温暖化対策、廃棄物削減対策を推進しておりますが、再生可能エネルギー機器や省エネ製品・サービスの提供を通じた産業機械ユーザのCO2排出量削減への貢献の他、廃プラスチックの再資源化技術の提供など、イノベーションにより地球規模での環境と成長の好循環の実現に取り組んでいきます。

 また、台風や豪雨など多発する自然災害に対応して、社会インフラの老朽化対策に資する新技術・システムを創出するなど、防災・減災と国土強靱化に貢献していきます。

 併せて、グローバル化、デジタル化への対応を加速するなど、たゆまないイノベーションにより、他国をしのぐ高付加価値製品・サービスを追求し、世界のニーズに応えていきたいと思います。

 政府におかれましては、生産性向上に向けた設備投資の促進や技術開発、デジタル人材の育成等を下支えする各種支援の充実などに加え、日・英の経済連携協定の構築やRCEP交渉などの通商戦略に、引き続き取り組んでいただきたいと思います。

 また、低炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの安定電源化やそのための送電網の整備、安全性確保を大前提とした原子力発電の継続利用を含めた「安定供給、経済効率性、環境適合、安全性(3E+S)」を考慮した最適なエネルギーミックスの実現に向けた取り組みを加速していただきたいと思います。

 年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

 ニュースリリース

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